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書評 192 「下山の哲学」

日本人唯一の14サミッター、竹内洋岳さんによる14峰完登挑戦の記録。

登山は山頂到達が目的。それを著者は否定する。ベースキャンプから登頂し、また戻ってくるまでがひと繋ぎ。登頂はその過程だと。

無事に戻って初めて登頂者となれるのだと言われれば確かにそうだし、他人の評価と別に、本人にとってもひと繋ぎにしておかねば精神力が持たないとの主張が本書を読むとよくわかる。高山を登るには尋常では無い体力を使い、降りてくる時には疲れた身体を奮い起こして脚を進めなくてはならない。8000m超の世界では1分1秒でも早く降りることが酸素に繋がり、命を守ることになる。しかし、疲れた身体はその場で休みたいと主張する。そのせめぎ合いとの戦いなのだと。

実際に山で著者は仮死状態になり、パートナーの尽力で文字通り九死に一生を得た経験があるそうだ。それでも登山を止めずにいる。それがプロ登山家というものか。

命懸けの意味がわかる一冊。


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