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書評 29 「八甲田山 死の彷徨」

「天は我々を見放した!」 昭和52年公開の映画「八甲田山」、北大路欣也のこのセリフを思い出す人は少なく無い。

その映画の原作。日露戦争開戦が現実味を帯びる日本、青森駐屯の陸軍が雪中行軍訓練を行い、その行程で起きた悲劇。豪雪の八甲田に向かう行軍の指揮を執る二人の尉官。一人の部隊は「生きて帰る」ことに拘って練り上げた行程に沿って進み、大きな被害を出すことなく帰隊。もう一人の部隊は随行した上官が自身を過信したことで無謀な行程を取ることなり、多数の死者を出す。

小説でありながら、リーダー論としても読まれるのがよくわかる。難関にあたって事前の調査をし、その結果を客観的に評価して準備にあたる。想定外のことが生じた際にはリスクを見極めて、選択する。安易な楽観論に与しない。こんな、言われてみれば当たり前のことをやることの難しさを知ることができます。

それにしても驚くのは、これが実戦ではなく、訓練であることです。

https://www.shinchosha.co.jp/book/112214/


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