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書評 146 「アスリートの哲学」

陸上短距離で日本を代表する選手、末續慎吾の2冊目の著書。オリンピックと世界陸上でメダルを取ったトップアスリート。しかし、その達成の後に目標喪失にな苦しんだ日々。そこから自身でたどり着いた「目標とは何か」という思想。思考の柔軟性を説いている。

また、近代が生んだスポーツと単なる争いの違いは何か。その原点に帰れば、なぜドーピングが駄目なのかがわかると言う。機会平等の下で自身の限界に挑むトップアスリート。この機会平等があってこそのスポーツという視点は古いけれども、意図的に見えないふりをする者もいる現代にもう一度見返す必要を強調する。

それは自身の限界にたどり着くために文字通り精神を削るトレーニングを重ねると、野生の闘争心が生まれてくる。だからこそルールの縛りがいるという考えは、トップアスリートだからこそなのだろう。

感覚派の著者が長い思考を通して文章で表した自己の哲学。その表現も味わいたい一冊。


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