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書評 216 「ルールはそもそもなんのためにあるのか」

法哲学者の著者が、具体的な事象に当てはめて法哲学の視点の持ち方や考え方を示す。同様な狙いの新書(あぶない法哲学)を既に著しているが、今回はコロナ禍に起こった自粛警察などを題材にしている。

国や地域、あるいは学校や会社など、集団の中だけで常識とされているルールがある。法律の手前にあるこういったルールはなぜ生まれるのか。人々はなぜそれを守るのか。外部から見ると守る理由がわからないようなものを。

集団を維持する、ひいては集団の多数が生き残るためにルールはできてくるのだが、公平を求める(裏には嫉妬もある)本能、そして矛盾する様だが利己的な本能がその根源にあるらしい。事例に即して説明されていて、その意味するところは読んでいくうちにわかる。

そして、自主性や多様性を評価する現在、その「ルールのルール」を考え直す必要がある。これが著者の提言と理解した。

繰り返される様々な対立。その理由を考える材料をくれる一冊。


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