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書評 59 「沢村忠に真空を飛ばせた男」

500ページ超えのノンフィクション。スポーツではなくショービジネスの世界を生きた男の伝記。

昭和40年代の日本を席巻したキックボクシングブーム。それを作り上げた野口修。「キックの鬼」というアニメもあって、その時代の日本人で沢村忠の名を聞いたことが無い人はいないだろう。

沢村忠が「飛んだ」ではなく、沢村忠に「飛ばせた」。このタイトルが見事に物語っている。試合ではあるが、その前に興行である有料観戦の格闘技の大会。それを企画して、ギャンブル的な決断で実行し、当たれば儲かる。外れれば大損する。それが昭和のプロモーターだったのだ、と。

綿密な資料読み込みと多様な関係者たちへのインタビューの積み重ね。ノンフィクションの正道を行く作り込みで書き上げられているが、爽快感や感動を得られる人はいないだろう。プロスポーツの歴史の中にある、一つの側面を赤裸々に描き抜き出した一冊。

https://www.shinchosha.co.jp/book/353671/

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