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書評 123 「手の倫理」

五感の間に格差があるとは思わなかったが、西洋哲学では視覚や聴覚に比べて触覚は下とされているらしい。

人対人で視覚と聴覚は間隔がある。触覚は間隔が無く、接している。また、人でも物でも間隔ゼロで、触覚の発動には接触が必須。触覚でのコミュニケーションは表面的ではなく、接することで相手の内部に入り込むと著者は言う。当初はピンと来なかったが、読み進めるうちにそれが理解できてくる。

触覚の行使を表現する日本語には「さわる」と「触れる」がある。この2つの違いには相手側に意思があり、なおかつ相手がこちらを許容しているかどうか。それ故に触れることには深いコミュニケーションが生まれる。解りづらいのだが、事例を挙げてくれるので、理解の助けになる。そして、理解できると非常に納得感がある。

そして、深いコミュニケーションだから、そこに倫理観が重なってくる。なるほど。

人と人の関係を考えるのに、新しい切り口が得られる一冊


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