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書評 198 「逆ソクラテス」

伊坂幸太郎の短編集。5編はどれも子どもが主人公。伊坂幸太郎と言えば、犯罪者や悪人が主人公で、違法行為をしている中でも人間味が表れたり、途轍もない極悪人に嵌められた人が起死回生の一手を打つ様な話が多い。本書は小学生が主人公という点が新しく、後書きで著者もそこに難しさがあったと言う。

それでも著者一流の転がる様な展開や仕込まれた小さな伏線を楽しみながら読み進める。登場人物の個性を子どもなりに際立たせているのも、勧善懲悪的な要素も著者のファンであれば安心して楽しめる。

5編のタイトルにはいずれも偉人の名前など既知の単語に「逆」などの否定を語を加えているが、物語の中に綺麗に織り込まれていて、それにも「なるほどね」と思わずニヤついてします。

そして、学校の先生の理想的な姿ももしかしたら示したかったのかもしれない。著者が教わった教師がモデルになっているそうだ。

いつもの伊坂流エンタメ小説が楽しめる一冊。


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