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書評 70 「ラン」

タイトル通り、走ることをつなぎにした、主人公の成長と人との出会いを語る楽しい小説。主人公の設定やその境遇を悲観し続ける心情はなんとも暗いのだけれど、進むに連れて文中に増えていく暖かい人の情がそれを和らげ、最後には主人公の気持ちが昇華する様がじんわりきます。

フルマラソン(正確には40km)走破を目指す主人公、そのきっかけがまさにフィクションならでは。そして、走力アップを支えてくれる仲間達。その個性的な仲間達にも平凡では無い背景があリマス。この辺のキャラクター作りはやりすぎない程度に面白く、上手い。

著者は児童文学から世に出て、その後「死」を題材とした小説が広く知られているが、この小説でも死が何度か出てきます。死にも様々な形があり、他者の死をどう受け止められるかで人の生き方は変わる。そして、一度悲観的な流れに入った人生も、きっかけ一つで変わる。そんな言い古されたことを思い出させてくれる一冊。

https://www.kadokawa.co.jp/product/201103000877/

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