見出し画像

書評81 「新装版 真鍋博の鳥の眼」

1950〜70年代にSF小説の挿絵などで活躍された真鍋博さんの作品集。1962〜63年に週刊誌に連載された、日本各地の都市や景勝地のイラストを集めたものだが、イラストというには極めて精緻。

塔の様な高い場所から、その地を眺めた鳥瞰図。それ故に「鳥の目」。デフォルメは無くて、建物一つ一つを丁寧に描く。それなら写真と変わらない様に思えるかもしれないが、写実の絵画にも味がある様に、ここに収められたイラストにも不思議な味がある。描き込む細かな手間であったり、正確な鳥瞰視点を表すための角度の作り方などがそれを生んでいる。

正確な描き込みだからできるのだが、建物やランドマーク的な場所から線を引き出して、その名称を外側にびっしりと書き込んでいる。その引出し線で絵が潰れてしまいそうなほどなのだが、全体は綺麗なイラストを保持しているのが不思議。

当時の日本の姿をイラストで映しだす一冊。当時を知る人には懐かしさも。

https://mainichibooks.com/books/hobby/-60s.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?