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書評 226 「奇跡の論文図鑑」

まともな科学的テーマとは思えない研究を取り上げたNHKの番組を基に、書籍に仕立てた。学術に関わる人以外はなかなか読まない「論文」。その中に多くの人が興味を惹かれる面白さがある、との視点から始まったそうだ。実際、本書に収められている研究はどれもユニークに見える。

しかし、副題の「ありえないネタをクリエイティブに」はズレている。どの研究も、なにも注目を得たくて、一風変わったテーマに取り組んだ訳ではない。研究者自身の専門、もしくはそこから派生する極めて学問的な仮説や疑問を検証。その検証行為自体だけを狭く囲うと「なんでこんなことを」ということだ。決して読者を笑わせる様な本ではなく、大きなテーマを解き明かすには一見関係無い様な努力の積み重ねだったり、研究の中で柔軟な思考を持つ。それが見逃しそうな事実を発見させる。そんなことが分かる。

科学は決して格好良いものでなく、地道な道だと思わせる一冊。


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