良い議事録とはなにか

こんにちは。普段は経営・業務・ITコンサルタントをしているKotaです。
なぜ、noteを始めたのかはさておき、
本日は、コンサルタントならば皆一度は必ず作成する「議事録」について記載したい思います。

1.サマリ

長文になってしまったので、まずはサマリをお読みいただき、全体像を把握ください(最後のまとめは当サマリほぼ同じ内容です。ご了承ください)。

なぜ議事録について書くのか:
  議事録には一定の価値があるのだが、軽視している人が多い。
  議事録がないと合意形成が難しいし、PDCAもうまく回せない。
  しかし、そもそも議事録を作成することは初心者にとって難しい。
  そのため、まず議事録作成において、前提となる「よい議事録」に
  ついてまとめてみた。

議事録の目的:
  1.関係者との合意形成
  2.PDCAを回すためのインプットとなる情報
  3.法的対応

1と2に焦点を当てた上で、「よい議事録」とはなにか:
  要件1:正しく、かつ、わかりやすく端的な文章で構成されており、
      関係者であれば、同じような意味で理解できる
      ドキュメントであること
  要件2:議事録の展開は会議終了後、遅くても1時間以内であること

どうすれば良い議事録を作成できるのか:
下記、守破離のステップをおすすめする。
  守:とにかく良い文章に多く触れ、たくさんレビューしてもらうこと
  破:なるべく短い時間で議事録を作成し切ること。
    そして、会議終了直前に議事録の内容を関係者と
    合意形成できるようになること
  離:レビューアーになること

以上です。
本記事では、具体的な議事録作成の方法論詳細は下記をお読みください。

2.なぜ議事録の記事を書くのか

議事録を軽視している人が多い

当たり前ですが、議事録は関係者の人に「読んでもらう」必要があります。
しかし、議事録が読まれず、認識がずれてしまい、議論のやり直し、
という事を何度か経験してきました。
これでは、頑張って議事録を作成しても、意味ありません。
もちろん、このようなデメリットを回避するために、
そもそも議事録を取らずとも、合意形成ができるようなツールや手法は
開発されています(プロジェクトマネジメントサポートツール等)。
とはいえ、今後も議事録は必要と思われますので、ぜひ議事録作成における意味や効果を知ってほしいと思っています。

議事録の効果を得られていない人が多い

仕事上の会話や議論を記録した文書が議事録です。
議事録を読み返すことにより、仕事のPDCAは回ります(人はすぐにわすれてしまう生き物なので、メモしないと正確なPDCAは回せないのです)。
しかし、その議事録の精度が低い、もしくは議事録自体を重要視していないために、議事録の効果を生かしていない(=PDCAを効率化ができていない)人が多くいます。
この記事を読むことで、議事録の有用性やポイントを理解し、日々の業務をより良くするヒントを得てほしいと思っています。

議事録作成は、初心者にとっては難しい

私の例ですが、議事録作成時間は以下のとおりでした。
・議事録作成時間
  初心者:3〜4時間
  5年目:0〜0.5時間
本当に時間がかかったものです。
主な原因は、会議の理解不足、書き方がお作法に沿っていない等です。
初心者のとき、何とか議事録をより効率的にできるようになりたいと思い、書籍を読み漁りましたが、中々参考になる書籍は見つけられません。
つまり、独学で議事録作成能力を身につけることが難しいのです。

まずは、よい議事録と何かを定義しよう

上記のように効果はありつつも、その効果を得られなかったり、
また作成すること自体が困難であるゆえに、議事録はないがしろにされている感覚があります。
正直、作成方法はいくらでもありますし、好きなようにすればいいのです。
ただ、何が良いのかがわからなければいけません。
しかし「よい議事録」を知らなければ作成はできません。
そこでまずは何が良いものなのかを知ってもらうために、本記事を記載しました。

3.議事録の目的

議事録の目的は主に以下の3つに分類できます。
これは、目的でもあり、議事録によって得られる効果でもあります。
今回は、主に1,2に焦点を当て、説明させていただきます。

  1. 関係者との合意形成:
    議事録を作成した際に、まず行うことは、会議参加者との議事録の内容合意です。議事録をそのまま見せることもありますし、議事録の内容を口頭で説明するだけの場合もあります。
    また、必要に応じて会議に参加していない人に会議内容を説明し、認識をあわせる(=合意形成)ために用いる場合もあります。

  2. PDCAを回すためのインプットとなる情報:
    仕事に失敗はつきものです。例えば「なぜこの意思決定をしたのか」
    「なぜこのアクションをとったのか」とのような原因分析をすることがありますが、その背景を手繰るために議事録を用いることがあります。
    議事録には、その会議における議論内容も記載されているためです。

  3. 法的対応:
    こちらはあまり詳しくないため割愛しますが、公的な場における議論の内容を議事録として記録しておくことが、法律で定められている場合があります。ビジネス上で関連しているうち、わかりやすいものは株主総会などです。

4.よい議事録とは

よい議事録となにか。目的から紐解いて考えていきましょう。

【要件1】
正しく、かつ、わかりやすく端的な文章で構成されており、関係者であれば、同じような意味で理解できるドキュメントであること

合意形成とは、意見が双方一致することを指します。
互いに意見を表明し、互いにその意見が同じであることを認識し合う状態です。
一方、合意できない場合とは以下の2パターンがあります。
 1.相手の言っていることが理解できない
   1−1:そもそも文章として支離滅裂
       例:A=Bと発言した後、A≠Bという発言をされる場合など
   1−2:文章としては読めるが、いろんな意味に解釈ができて、
       発言者(もしくは筆者)の意見を正しく理解できない
       例:A=Bと発言したが、AやBにはいろんなAやBがあって、
         A=Bの意図が理解しきれない場合など
 2.相手の言っていることは理解できるが、賛成できない
       例:A=Bと発言したが、A=Bではないと思っている場合など

2については、健全な状態です。
議論し、賛成できるか否かを吟味していければいいのです。
問題は1の場合です。相手がそもそも何を言っているのか理解できなければ、賛成も反対もできません。
つまり、議事録は上記の「1.相手の言っていることが理解できない」ようなドキュメントになってはいけないのです。
文法が正しく、関係者であれば、同じような意味で理解できるドキュメントである必要があります

一方、ビジネスのスピードは年々早くなっており、一つ一つの合意形成に書けられる時間は短くなっています。よって、ビジネスでは、ただ合意すればいいのではなく、素早く合意しなければいけません。
たとえ、その内容が正しく、しっかり読めば誰でも同じ理解になる文章であったとしても、数百ページの文章であれば、誰も読まないでしょう。
よって、「わかりやすく端的な文章」であることも要件として必要になります。

【参考】ウィンストン・チャーチル元首相の言葉

実は、ウィンストン・チャーチルが首相に就いたときに、
政府各部の長に展開したメモが、参考になるので紹介します。
これは議事録に限らず、仕事上のメモ全般に該当するものでもあります。

われわれの職務を遂行するには大量の書類を読まねばならなぬ。
その書類のほとんどが長すぎる。時間が無駄だし、要点を見つけるのに手間がかかる。
同僚諸兄とその部下の方々に、報告書をもっと短くするようご配慮願いたい。
1.報告書は、要点をそれぞれ短い、端切れのいいパラグラフにまとめて書け。
2.複雑な要因の分析に基づく報告や、統計に基づく報告では、要因の分析や統計は付録とせよ。
3.正式の報告書ではなく見出しだけを並べたメモを用意し、必要に応じて口頭で補ったほうがいい場合が多い。
4.次のような言い方はやめよう:「次の諸点を心に留めておくことも重要である」「…を実行する可能性も考慮すべきである」。この種のもってまわった言い回しは埋草に過ぎない。省くか、一語で言い切れ。思い切って、短い、パッと意味のわかる言い方を使え。くだけすぎた言い方でも構わない。

私の言うように書いた報告書は一見、官庁用語をならべ立てた文書とくらべて荒っぽいかもしれない。しかし、時間はうんと節約できるし、真の要点だけを完結に述べる訓練は考えを明確にするにも役立つ。

レポートの組み立て方(著:木下是雄), P175

まさに、という内容ですね。
チャーチルが展開したこのメモ自体もわかりやすく、参考になります。

【要件2】
議事録の展開は会議終了後、遅くても1時間以内であること

前提として、エビングハウスの忘却曲線で知られているように、
人は忘れる生き物です。
そのため、合意したものを素早くメモに起こし、関係者に展開しなければ、議論した内容は忘れられてしまいます。
 「…の件だけど、…すべきだと思うんだけど、どう思う?」
 「その件は前回議論して、…となったはずです」
 「え、なんでそんなことになったんだ。もう一回議論しよう」
 (え…また議論するのか。前回も同じようなこと言っていて、
  また同じ結論になるんじゃないのか…)
こんなこと、ありませんか?
議論は、大切ですが、合意したものを再度議論し直すことは無駄です。
むしろ、合意したものを土台に、関係者が仕事を進めているのですから、
その仕事を止めることになってしまいます。
当時議論した結果を、再度見直したらまずかったから、再度議論しよう、
ならばよいのですが、
議論結果を忘れたから、再度議論しようなんてことは最悪です。

そのため、議事録はなるべく早く展開しましょう。
以下の対応をおすすめします。

  1. 会議終了直前に、当該会議の決定事項、Todo(担当者、タスク、納期)は最低限会議内で確認してから、会議を終えること

  2. 会議終了後、1時間以内に議事録を展開すること

【補足】議事録に決まった形式はないが、必要な情報はある

「議事録は必ずWord」という人もいますが、私は何でもいいと思っています。メモ帳でもいいですし、PowerPointでも、Excelでも、構いません。
大切なのは上記の「良い議事録」の条件を満たしていることです。
そのため、例えば、講演資料のレビュー会、という会議では、
議事録は、講演資料のドラフト版に直接吹き出しなどで修正点を書き込むことでも構わないのです。
何なら、会議中に資料を投影しながら修正点を書き込めば、関係者はスムーズに合意形成できますので、非常に効率的です。そのような会議で、
わざわざ別のWordに「P.20 修正点 …を…に変更」などと書くのは、手間ですし、無駄です。むしろ、あとでそのWordのメモが正しいのか一つ一つ確認する工程が必要になってしまいます。

しかしながら、お作法として必要な情報はあります。
それは、決定事項とTodo、そしてその会議の日時と参加者です。
合意形成は、人と人の間で発生しますので、「誰と合意したのか」が重要になることが理由です。

5.よい議事録を作れるようになるための訓練

守破離に則ることをおすすめします。

1.守破離の「守」

まず、「よい議事録」、またはわかりやすく、正しい文法で記載されている文章をなるべくたくさん読むことが重要です。
上記を踏まえると、残念ながら、小説はおすすめできません。
また、ビジネス本でも、大変読みづらい文章(またはレベルが低い文章)が多くあります。おすすめな本は「ロングセラー」の文章です。
昔から読まれてる文章は、適切な文章構成になっていることが往々にして多いのです。
他にも、会社の規定や法律などは、誰が読んでも同じ理解がなされるような文章です。できれば、一度でいいので、規定や規則を作ると良いと思います。

加えて、「よい議事録」を作成できる人に、何度もレビューしてもらうことです。私も最初は、上司に4時間レビューしてもらっていました(当時の上司には頭が上がりません…笑)。
何度もレビューしてもらい、何度も修正することで、精度が上がっていきます。

そしてこの段階では、まず「スピード」よりも「質」と「量」です。
多くの議事録を作成し、その議事録に時間を書けてください。
会議終了後1時間以内に議事録を作成できず、悶々とすることもあると思いますが、最初は当日中(会議終了後24時間以内)であれば許されます。
しっかり質の高い文章を作ることに集中してください。

【参考】
よい文章には、ある程度ルールがあります。
文法やロジカルドキュメンテーションが該当するものです。
参考となる書籍を記載しておきますので、よければお読みください。

「レポートの組み立て方」は、厳密には議事録とは異なるのですが、
「文章を書く上で重要なこと」を学ぶ点としては、大いに役立ちます。
また、レポート自体も仕事上作ることが多いと思いますので、ぜひお読みください。

「論理トレーニング101題」では、「こんなに日本語ができなかったのか!?」と自分自身に驚いた本でもあります。細かい接続詞によって構成される
論理構成から文章全体の論理を学ぶことができます。
「101題」とあるように、この本は問題集でもあります。
そしてもちろん解説付きです。その解説は、まさに「良い」文章なのです。
ぜひお読みください。

論理的思考を、コンサルティングファームに広げた第一人者が書いた書籍であり、コンサルティングファームに属するものであれば、誰しも読む本でしょう。私も毎年読み直していまして、読み直すたびに学びがあります。
ボリュームがあり、読み応えがある本ですが、ぜひチャレンジしてください。
(正直、世の中に多くのロジカルシンキングやロジカルドキュメンテーションに関する書籍がありますが、あれらを読む必要はないと思っています。
この1冊で十分です。他の本は入門書として読むことをお薦めします)

2.守破離の「破」

「よい議事録」を作れるようになったら、その議事録を何度も作るようにしましょう。そして、今後は会議終了後1時間以内に作れるようになってください。
そして、会議終了後1時間以内に作れるようになったら、会議終了時には完成していることを目指しましょう。
そうすれば、レビューして貰う必要はなくなります。
なぜなら、会議終了直前に議事録の内容を関係者と確認できれば、
合意形成が完了し、議事録としての要件はほぼ達成されているためです。
まさに「守破離の破」です。
そして、この段階に達して始めて、余裕を持って、会議中に議事録を作成しながら、会議内で発言することができるようになります。
発言内容が良いものであれば、コンサルタントとして1人前になりつつある証拠です。

3.守破離の「離」

最後は、レビューアーになる、つまり、「守」の段階であなたが受けていたレビューを部下にしていく段階です。
レビューをすることにより、自身の中で「よい議事録」の要件が成長していくことを感じるはずです。レビューをすることによって自身も成長していくことができます。

【余談】感動した議事録

私が初めて感動した議事録は、2つ目のプロジェクトに入るときに参加した会議の議事録でした。
このプロジェクトはすでに始まっていて、私が途中参加するものでして、
すでにプロジェクトで働いている先輩が私にプロジェクトの概要や、プロジェクトに必要な準備などを説明するミーティングです。
その時、全く議事録の有用性や、作成経験がない、かつ、プライドだけが高かった私は、先輩の説明に対するメモが追いついていないのにも関わらず、終始わかったフリをしていました。
その会議が終わったあと、残っていたのはひどいメモ帳。
虚栄心と恐怖心が混在していた感情をよく覚えています。
その会議の後すぐ、先輩から一通のメールが届きました。
「先程のキャッチアップミーティングについて」というメールです。
内容は、説明いただいた内容のサマリと、
その場で合意したこととTodoが記載されていました。
私は非常に感動し、私がこのあと見当違いのタスクをしない様になったことに対する安堵で溢れ、「すげぇ…いや〜敵わないわ」と一人会議室でこぼしたことを今でも覚えています。
こんな議事録を作成できるようになりたい。
そう強く思い、頑張ってきたところ、今では会議終了時には議事録を
関係者に展開できるようになりましたし、レビューアを担当することも多くなりました。
しかし、今でも理想は当時のメールです。
これからも良い文章を、早くかけるように努力していきます。

6.まとめ

最後にまとめです。
まず、議事録の必要性について、最初に提起しました:
   議事録がないと合意形成が難しいし、PDCAもうまく回せない。
   さらに、そもそも議事録を作成することは初心者にとって難しい。

その次に、議事録の目的として、以下2つを定義しました:
   1.関係者との合意形成
   2.PDCAを回すためのインプットとなる情報
   3.法的対応

次に、上記の目的において、1と2に焦点を当てて「よい議事録とはなにか」を定義しました:
   要件1:正しく、かつ、わかりやすく端的な文章で構成されており、
       関係者であれば、同じような意味で理解できる
       ドキュメントであること
   要件2:議事録の展開は会議終了後、遅くても1時間以内であること

そして、最後にどうすれば良い議事録を作成できるのかを記載しました:
   守:とにかく良い文章に多く触れ、たくさんレビューしてもらうこと
   破:次はなるべく短い時間で議事録を作成し切ること。
     そして、会議終了直前に議事録の内容を関係者と
     合意形成できるようになること
   離:レビューアになること

以上となります。
本当は、より細かい日本語の書き方とか、パラグラフの設定の仕方とかも記載しようかと思いましたが、それは別途ロジカルシンキングやロジカルドキュメンテーションのテーマで記載しようと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
皆さんの、日々の仕事に役立てられれば幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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