見出し画像

パウロ・コエーリョ作、「ブリーダ」読了。

以前、「アルケミスト」を読んで面白かったので他の作品も読んでみたくなり一気に数冊買ったものの、なかなか読めなかった。「アルケミスト」からかなり時間が経って、そういう意味では「アルケミスト」を読んだ興奮みたいなものはもうなくて、フラットな感じで読めた。個人的な印象だけど、パウロ・コエーリョの文章には、ぐいぐい引っ張られるような、強引な力はない。ハリウッドの映画のような、巻き込まれる印象がない。直木賞の受賞作のようなエンタメ感もない。だけど、パウロ・コエーリョの文章には、静かに流れている力みたいなものを感じて、スーッと力みなく読み続けられる気がする。読みやすい。信じられないような展開もないし、どんでん返しもない。でも、読み続けてしまうという面白さがある。「アルケミスト」を読んだ時に、ここが気になって他の作品も数冊買ってみた。今回の「ブリーダ」もどこか同じ雰囲気を感じた。静かで心地よい感じ。複雑な伏線もないし、だからなるほどね!というような爽快感もない。魔術師と魔女が出てくるけれど、ファンタジーのような完璧な想像の世界でもなくて、主人公が女子大生だったり、バスやタクシーが出てきたり、どこか現実が入り混じっている設定も、それに役立っているのかも。
たぶん、パウロ・コエーリョが作る「大きな設定」が心地よいんだろうな。匙加減が好きなんだと思う。そして「アルケミスト」と同じく、「ブリーダ」も読み終わると、人生で大切なテーマについて、少しだけ考えさせられる気がする。それもヨーロッパの映画や、私小説のようなズシンと深い感じで入ってはこない。誰かと話しあいたくなるような感じでもなく、あくまで、「少しだけ考えたくなる」感じ。だからと言って「明日から頑張ろう」とか「このままじゃいけない」とかも思わない。このあたりが心地よい。パウロ・コエーリョ作品はまだ2作しか読んでいないけど、残りも楽しみ。肩の力を抜いた楽しめるので気に入っている。

よろしければサポートをお願いいたします!いただいたサポートはnoteをより良くするために使わせていただきます!