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【連載】わたしの湯 vol.2 / スタッフ紹介

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「このインタビュー、次はやべちゃんにお願いしたいんだよね」と番台に話しに行くと、「いいよ、でも話すようなことなんてないよ?」と少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑ってて。断られるかなとも思ったから、よかった、とほっとした。こうやって自分よりはるかに年下の子がやることに対して寛容な姿は、本当に見習いたいな。

やべちゃんが畳むタオルはいつも角が揃ってて、見てるだけで“しゃん”する。「きちっと角と色が揃ってるとお客さんも気持ちいいでしょ?」と一緒に仕事に入ってる時に話してくれた。他人に強要はしないけど、こだわりを持って仕事をしてる、そんな彼女は一体どうして小杉湯の番台に座ることになったんだろうか。

企画:つっつー/インタビュアー:みほ/編集:ガースー
写真:Gota shinohara/編集協力:江口彩乃

小杉湯との出会い 気づいたら何十年も

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—やべちゃんてわたし(みほ)がお客さんとして通ってた時からいたよね。いつから小杉湯にいるの?
20年弱。58歳頃からかな?子どもが高校生の頃からしてる。自分の子どもたちと、佑介さん(小杉湯三代目)と次男くんがそれぞれ同級生なの。
(それで働かないかって)和子さんから「忙しい?」って電話がきたの。「暇ですよ〜」って言ったら「手伝って」って。 だから「いいですよー」って。夜19:30〜1時間。和子さんが都合悪い時間だけをお願いされたと思ってたけど、「来週もねー」って言われて。“アレ?”って思ったけど、そこから毎週になったの。笑 私は暇だから、「いいよ」って言って。それがきっかけです。

—気づいたら何十年も経ってたんだ?
そうそうそう。初めて番台をした時は420円!結婚するまでの独身のアパートはお風呂がなかったから銭湯には長らくお世話になってたけど、結婚してからは自分のお家にお風呂があったから、銭湯はしばらく来ることなかった。小杉湯に入るようになったのは働きはじめてから。昔は“生活の為の銭湯”だったけど、今は“癒しの銭湯” だからお風呂はなくてはならない!自分のお家より。
みなさんがお風呂入りに来るでしょ、そして帰るときに「はあ〜気持ちよかった」って言うから「ありがとう、また来てね」って言うと「はーい!」って言うのよ。特に男性は声にだすのよね。笑

—昔の番台に座ってる時と今の番台に座ってる時ってちょっと違う?お客さんの雰囲気が変わったりとか…
昔は地元の人が多かった。私は知らないけど、顔を覚えられてたから街を歩くと声をかけられたりしてたよ。“小杉湯さんの人だ”ってね。佑介くんの代から若い人たちが来るようになったの。

—それは嬉しい?それとも“あー変わっちゃったなー”って思う?
入りに来てくれる人は変わったけど嬉しいわよね。だって若い人もお風呂を気に入ってくれて、一度入ったら「小杉湯いいわよ」って言って口伝てにお友達を連れて来てくれるでしょ。お風呂屋さんとして活気があって、働いてる人だって生きがいを感じるでしょ。番台やってるの楽しいですよ。
私自身は変わらず14:45に家を出るって決めてる。ずーっとこのリズム。

仕事へのこだわり 細かい気配り

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—働いてて気をつけてることとかある?
迎える時に笑顔!送る時も笑顔!

—うわ〜!だからわたしも小杉湯に来ちゃったのかな。笑 やべちゃんの自然な笑顔に惹かれて。
私自身が人懐っこい方だから自然なのかな。初めてのお客さんも全然緊張しない。今まで色々な職業でお客さんの前に立ってたから。

— へー!何やってたの?
和裁を教えたり、お花屋さんでお花を売ったり、客商売をやってきたの。お客さんと会うことが多かった。

—そうなんだ!知らなかったな。
小杉湯はスタッフの入れ替わりが多いけど、やべちゃんは一番長いよね。普通の人より若い人と一緒に働いてるじゃん。どう?楽しい?
楽しいよー!もともと、私は結婚が遅かったから(息子の学校の付き合いでも)みんな若いお母さんたちなの。クラスで私が二番目に歳がいってた。
この前もお風呂で若い友達としゃべってて、後から別のお客さんに「やべちゃんの隣でたらい洗ってた人誰?」って聞かれたけど「友達よ」って言うと「えー!」って驚いてたね。それくらい若い人の友達が多いの。若い人と付き合ってたら若い人の感覚が入るでしょ。

—今日また爪新しくピンクにしたの?可愛いじゃん!
私がマニキュアやってる理由は番台にあるの。オババだと手がシワシワで汚いでしょ。お金のやり取りがあるからお客さんの目線は指にいくけど、その目線をシワシワじゃなくて爪に目が行くようにマニキュアをしてるの。

—お客さんのこともお仕事のことも考えてる!こういうの(マニキュア)はもともと好きだったの?
(笑って頷いて)…若い子とおなじ!

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—私より若いかもしれない…!知らなかったし私何も考えずに番台やってたな。
いやいやあなたたちは若くて綺麗な手だからいいのよ。私は歳いってるからさ、汚い手でお金渡されるの嫌でしょ?目線を操るのよ。これは私、自分で考えてやってるの。この爪は付け爪ですか?ってよく聞かれるの。

—え?自爪!?
そうそうそう。自爪。

—めっちゃ綺麗!本当に!?びっくり!

番台から見える景色 お金の勘定ができなくなる時まで…

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—番台で働いててさ、印象的なお客さんっている?
1人、男性のお客さんで、4月5月って来てないの。心配だな。お家で待機してるのかな。にこやかで品のいいおじさんなんだけど。上海から2月に帰国して、3月はきてたんだけど今来てないのよね。お父さんとか息子さんも連れて来てたんだけど。心配よ。

—名前は知らないけど顔はわかるから、来なくなったお客さんは心配しちゃうよね。
そうそう。どうしてるかなあって。昔のお客さんのこともね、覚えてるけど来なくなっちゃった人もいてね。心配しちゃうけど。元気だったらいいな。番台に座る人はお客さんの顔見てるよ。今日はちょっと元気がないとか、大丈夫かなとか分かるの。

—やべちゃんは何歳くらいまで番台やりたい?
お金の勘定ができなくなるまで。笑 

—やべちゃんボケることないよ!でもいいね、お金の勘定ができなくなる時がやめるときだなって。
それまで働かせてくれる?

—もちろんです!もちろんお願いしますよ。本当それくらいまで一緒に働きたいな。
やべちゃんは新しいこと好きじゃん?やってみたいこととかあるの?息子さんも結婚して、もう孫も生まれて前より自分に時間が使えるようになってくるわけで。
私は若い友達が海外旅行に行こうって誘ってくれるから、海外旅行に行きたくて。先が短いからね。笑 そういうお話が出た時は行くよ。今は行けないけどコロナが収束したら友達が案内してくれるグアムに行きたいな。

—コロナの収束までまだまだ長そうですが、頑張れそうですか?
頑張らなくちゃねー!みなさんも!

—インタビューしている時も普段のやべちゃんで嬉しい。これからも15時から18時、やべちゃんの笑顔を振りまいてください!お客さんへ何か一言ありますか?
「あー気持ちよかった」って言っていただけたら「また来てくださいねー!」って言いたいね。

—うちの花形ですね。大事なことたくさん教えてくれた。ありがとう。
何にもなくてすみません。笑 写真は可愛く撮ってね!

わたしの湯 知るって最高に面白いよ

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“やべちゃんにインタビューする”と知った小杉湯のスタッフはみな口を揃えて“やべちゃんが小杉湯で働き始めた理由、気になるな…”といっていたので笑えました。いつも何気ないことは話すけど、“あえて聞くのも”って聞かずにいること、多い気がします。そこを私は敢えて聞くよ。やっぱり知るってものすごい面白いよな。

今回の登場人物

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Photo gallery  by Gota Shinohara

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