【連載】わたしの湯 vol.6 / スタッフ紹介
※こちらの記事の最後に石原さん持ち込み企画『自作自演インタビュー』を掲載していますので、是非最後までご覧ください。
撮影で深夜清掃にお邪魔させてもらった夜、“水がちょっと飛ぶかもしれない、カメラが…” とさりげなくこちらに気を使ってくれる。そんな石原さんにわたしが初めて出会ったのは、小杉湯での飲み会。遅れて来た彼は、来たその瞬間から場の主導権をガッツリ握って笑いをかっさらっていった。それは“圧巻”という言葉がぴったり。彼はまわりを良く見ているからこそ気を使えたり、みんなを巻き込み笑いを作ることができるのだろう。
“みんなに自分のことを知って欲しい、みたいな気持ちが無い” 最初の断り文句はこれだった。“なんか背伸びしちゃってる、みたいなのが嫌” そうやってインタビューはサクッと断られたが、へこたれずに口説き落として、この記事を今こうして表に出せたことに、ホッとしている。本人が嫌ならやる必要は無いのかもしれない…と思いつつも、石原さんのこの話にすごく共感する人が確実にいるんだよな〜と思うと、やっぱりその人たちに、“ねぇねぇ、小杉湯にはこんな人がいるんだよ”って話したい。
企画・インタビュアー:つっつー/ 編集:江⼝彩乃 / 写真:Gota Shinohara
小杉湯と石原さん いざ上京?
—石原さんは小杉湯で働き始めて4年でしたっけ?
東京に上京してきて4年ちょっとくらい経つんで、小杉湯歴も恐らく4年目ですね。上京後に初めてやったバイトが小杉湯。
—なぜ小杉湯だったかって以前に、なぜ高円寺を住む場所として選んだのか、何か理由はありましたか?
愛知県から出てきたんですけど、東京のこと何も知らないじゃないですか。自分がよく聴いてた音楽に高円寺って単語が出てたんです。それで、一度高円寺に寄ってみたときに、すごく地元の雰囲気に近かったというか、馴染んだので。それからずっと高円寺です。
—そこからどうして小杉湯で働くことになったんですか?
高校卒業して僕はすぐ東京に来る予定だったんです。お笑い芸人になるっていうのは小学校の時から決めてました。地元の友達で面白い奴がいて、幼馴染と一緒に“お笑いやるぞ” “高校卒業したら東京に行こう!”って話していたんです。でも友達が「大学は出てほしい」って親に言われてしまい。友達に「大学卒業するまでの4年、待ってほしい」って言われたんですよ。で、僕何しようって。”お金はどっちみち必要だから4年働こう“ってことで、4年工場で働いて、そこで300万貯めて、“よし、東京行こう!”って思ったら、その友達が就職しちゃったんです。僕1人になっちゃって。でもお金だけはあるから“まあ、いいや”って1人で東京に出て来ました。上京当初はお金があるからちょっとのバイトでよかったんです。手頃なバイトがいいなって探してるときに、Twitterで“日払いのバイト”っていう小杉湯のツイートが流れて来て、”日払いだし週1でもいいって、ちょうどいい!”って始めたのがきっかけですね。
—それまで小杉湯に入ったことはなかったんですか?
なかったです。僕、年中シャワー派なんで。だから別にお風呂が好きだとか銭湯が好きだとかじゃなくて、単純に週1で日払いで働けるバイトっていいなって始めたのが小杉湯だった。
でも、結果小杉湯で働けてよかったですよ。友達もできましたしね。
—石原さんが仕事を始めた時にいたメンバーで、今でもいるのって大坪さんくらいですか?
そうです。あとは総替え。佑介さんぐらいですか。※佑介さん:小杉湯3代目
—それは居てくれないと。(笑)
今でこそスタッフだけど、みほさんも、もっと裏方の人だった。当時は名前はよく聞くけど見たことない人でしたね。
“仕事” やりがいは…
—深夜清掃ってお客さんと接する仕事ではないですが、やりがいを感じることはありますか?
多分、二種類いるんですよ。もっと私を見て!というタイプと。僕はできるだけ目立たずお金を稼ぎたい。スポットライトは当ててほしくない。だから今回のインタビューは矛盾してるんです。介護職とか医療現場とかなんて、もっとすごい頑張ってるじゃないですか。だから“深夜清掃でこんな頑張ってるんだよ”なんて、とても僕言えないです。だから全然スポットを当ててくれなくていい…っていうのはちょっと失礼ですけど、本当はもっとこう…粛々とやりたいというか。みんな頑張ってますから。別に私が一番頑張ってるとは思わないですね。だから、“やりがいは無い”って言ったらあれですけど、そもそもやりがいを求めてない。割り切ってるって言ったらなんか冷めた言い方ですけど。お金を稼ぐことは必要なことじゃないですか。その中でできるだけ楽しくあれたらいいなって感じですね。
小杉湯が綺麗になって、お客さんが気持ちよく入ってくれる。でも、お客さんの生の声みたいなのは僕らには直接届かない。僕は、別にそれで全然いいんですよね。だからそんなピックアップしてもらわなくて僕はいい、全然十分楽しんでやれてますんで。
—すいません、余計なことをお願いしてしまいました。
いやいや、つっつーさんの頼みなんで。
—ありがとうございます。石原さんって、飲み会では常にふざけている印象で、だからなのか言ってること全てが嘘みたいに感じてしまうんですよね。
あ、一回飲み込みますね。(笑)
—すごく面白いけど、この人の本音が見えないなって思ったんです。一方で、今でこそ出来なくなりましたが、コロナウイルス流行以前は、石原さんが深夜清掃の飲み会を企画したり、映画を観る会をやりましょうって声をかけたりしていたじゃないですか。あのエネルギーはどこから来るんだろうって思っていて。“仕事”と割り切っているタイプだと、そういうのも、面倒に感じるのではと思うのですが。
なるほど。まず、本音で喋ってないのが誤解だっていうのから解かなきゃいけない。なんて言うんでしょうね…僕は芸人なんで、面白いが“一番”なんですよ。お金持ちよりもイケメンよりも面白い人が“ピラミッドの頂点にいる”と思っているんです。だからどうしても、ボケたり、つっこんだりしていたら、自分の話をする順番が後回しになってしまう。嘘を付いたり、うわべでやってるってよりも、まずはこの場を楽しくしたいっていうのが先になっちゃう。単純に、小杉湯に誰か企画をやる人がいたら、全然その人に任せるんですけど、いないからやってるってだけです。お酒が好きなので、もっと単純に飲む機会がほしいっていう、それだけですね。
—逆に、働いてて大変だなってことってありますか?入って4年経って、体力的にきついとか。
うーん。小杉湯で、ですか?小杉湯はいいバイトですよ。ないかもしれない。(笑) 小杉湯で大変なことか。うーーん。全くないです。(笑) 仕事の負担に対して時給がぴったり見合ってる。これ以上望むのは贅沢だと思ってますね。すごく働きやすい。
毎回がルーティーンなので、キツさは感じてなかったですけど、10月の臨時休業で深夜清掃がない生活になった時に、“こんなに楽なんだ!”って気づきました。やっぱり眠いですね、3時半は。
芸人“なごみ子遊園地” 認められるとは…
—石原さんはなぜ、お笑い芸人になりたいって思ったんですか?
お父さんが面白かったからですね。自分はテレビっ子で、テレビを見てる時に“どうやったらあっちの世界に行けるんだろう”って考えたのが小学校の時。でも、そもそも、この世界に興味を持った理由は、やっぱりお父さんが面白かったからです。今は人力舎で4年活動させてもらってます。“あぶら煙幕”というコンビ名、“なごみ子遊園地”という変な芸名でやってますんで、もしよかったらTwitterとかフォローしてくださればと思います。
—将来の夢とかありますか?
お笑いを始めた理由が、自分が面白いってことを証明したいってことなんで、みんなに面白いって認められたらいいですね。今はまだ“御山の大将”なんで…世間にみとめられたいです。
—いいですね。お笑いで認められるって具体的にどんなことなんでしょう?
テレビですよね。親がメディアに疎いんですよ。そんな親が僕らのこと、テレビを通して認知してくれたらそれはもう間違いなく売れたってことなんで、それは目標ですね。
ジャスコでアイスを買ってもらうより魅力的なこと
—石原さんって、すごい映画好きでしたよね?きっかけとかあるんですか?
映画はすごい好きですね。お父さんの弟(叔父さん)がすごい映画好きだったからです。
すごく小さい頃から、毎週金曜日は家族みんなでおばあちゃん家に行くっていう習慣があるんですが。
—毎週行ってカレー食べるみたいな?
そうそう。そこで、おばあちゃん家に行ったあとに、きまってみんなでジャスコ(※ショッピングモール)に行くんです。ジャスコに行けばアイスだったり、自分の好きな物を買ってもらえる。でも、ジャスコに行かなければ、おばあちゃん家に残って叔父さんと映画を観れたんですよ。2時間待ってるなら映画観なよって流してくれて。弟たちはみんなジャスコに行ってましが、僕は映画を観る方が魅力的でした。
— へー!面白い!
そこで“ロッキー”っていう古い、ボクシングの映画をみて、こんな面白い映画あるんだ…って、小学校の時に感動して。映画って何万本もあるじゃないですか。“もし仮に観てないだけで、ロッキーより面白い映画があるなら観たい”って、今はもうシラミ潰しみたいな感じでずっと映画観てます。
—ちなみに、ロッキーより面白い映画はあったんですか?
いや、ないですよ!ロッキーはすごいから。
わたしの湯 悔しいです…
石原さんに“うわべだけだ”と断られそうになったとき“そんなことない!”って心では反論したものの、今この記事をまとめ終えて愕然としている。“この記事はうわべだけ”だ。すごく伝えたいことがいっぱいあるのに、まとめようとすればするほど面白いやりとりはカットになってしまう。4人兄弟の長男で、母に溺愛された話、可愛い犬を見ても全く心が動かない話、年中夏用布団で寝ている話、忠誠心が強く、アイドルが好きだった話。どれが聞きたいですか?わたしは全部話したいです。ミルク風呂の壁は狭いな。
つっつー
今回の登場人物 小杉湯のひとたち
※こちらの記事の最後に石原くん持ち込み企画『自作自演インタビュー』を掲載しています。ぜひ最後までご覧ください。
Photo gallery by Gota Shinohara
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※ここからは石原さん持ち込み企画『自作自演インタビュー』になります。
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—お疲れ様です。⾃作⾃演インタビューという事ですが。
はい、⾃分(⽯原)で質問して、⾃分(⽯原)で答えてます(笑)
—なんでこれをやろうと思ったんですか?
⼀応⼈⼒舎の芸⼈ですので、"⾯⽩いこと"をやりたいという単純な理由です。
—このインタビューをする上で、これは聞かないでほしいみたいな、NGな事ってあったりしますか?
元カノの話しはNGです。思い出しちゃうので
—引きずってるんですか?
NGと⾔ったばかりです。
—すみません。 ⽯原さんが芸⼈を⽬指すきっかけってなんだったんですか?
⼩さい頃からテレビっ⼦で、特にお笑いの番組が好きだったんです。
—なるほど。
ある時ふと、あそこに座ってる人達はなんなんだろう?自分もあそこに座りたい!って、雛壇を見て思ったのがきっかけです。
—雛壇に憧れて?珍しい気がします。
そうかもしれないです。あとは単純にお父さんが面白い人だったので。今思えば憧れてたのかもしれません。
—素敵ですね。 兄弟はいらっしゃいますか?
弟が3人いて、そのてっぺんはらせてもらってます。
—じゃあお母さんは男4人、大変でしたね。
一回小学生の頃僕の帰りが遅くなった時、お母さんが誘拐を疑って交番に行ったらしいんです。
—はい。
警察の方に「息子さんの髪型は?」って聞かれて、お母さんてんぱって、「長めの短め」って言ったらしくて。
—どっちですか(笑)
警察の方も「どっちですか?」って。お母さん泣いてる横で、お父さん笑ってるみたいな。
—カオスですね(笑)
ただこれ夏の19時の話なんですよ。
—交番に行くには早いですね(笑)
そうなんです。
—石原さんはどんな学生だったんですか?
とにかく暗かったですね。面白くない奴と誰が口聞くかって、クラスの端っこで一人尖ってました(笑)
—えー。やっぱり芸人を目指すくらいだからクラスの人気者だったのかと。
真逆です(笑)ずっとiPodで外の世界を遮断してました。
—その時はずっと何を聴いてたんですか?
きゃりーぱみゅぱみゅです。
—(笑) カーストって言葉あるじゃないですか?じゃあ石原さんは三軍って事ですか?
いやいや、僕は三軍の人にパシリにされてた六軍です。
—六軍..(笑)
文化祭の時、みんなが青春を謳歌してる中、六軍のみんなとずっと倉庫で大富豪してました。
—それはすごいですね..(笑)
その六軍の中に、“無口だけど顔はかっこいい”みたいな奴がいたんです。そいつが途中、大富豪抜けたんですけど、後でどこ行ってたか聞いたら女の子に告白されたって。
—凄いじゃないですか。
六軍に"革命"が起きました。
—うまい(笑)
—なんか、UMA(未確認生物)が好きって聞いたんですが?
はい、大好きです。
—UFOとかネッシーとか、やっぱりいると思いますか?
いる/いないって言うより、あれはロマンですよね。
—ロマン?
ロマン。
—ロマン?
ロマン。
—ロマンがゲシュタルト崩壊するのでやめてください(笑)
レ点チェックしたくなりますね。
—ならないです(笑) 小杉湯の深夜清掃を始めて4年になるって聞いたんですが。
もうそんなになるんですね。
—深夜清掃をやってて、楽しい瞬間とかあるんですか?
退勤する時です。
—(笑)(笑)
—芸人としての事も少し聞きたいんですが。
どうぞ(目に迷いはない)
—どんなお笑いをやってるんですか?
どんな?ざっくりしてますね(笑)でも自分は「なんなんそれ?(笑)」ってのを見させられてる時間が1番好きですね。伝わりますか?
—ナメクジの歩幅程度には..
なんなんそれ?(笑)
—それで出来たネタとかあるんですか?
R-1グランプリというピン芸人の大会で、"天狗が監禁されてて、風船を10個膨らませたら出してやるって言われたけど、鼻が邪魔して1個も風船を膨らませない"ってのやったんですけど、ゲロ滑りでした。
—納得、というかなんというか(笑)
だから最近は、「これ面白いと思ってるの自分だけだろうな..」ってのはTwitterに呟いて終わらせるようにしてます(笑)
—なんか勿体ない気もしますが(笑)
"伊能忠敬、不老不死だったら世界地図完成してた"とか、"早すぎて逆にゆっくりに見える早着替え"とか、"潔癖症だから魔法のランプ擦れない人"とか、もし良かったらTwitter覗いてみて下さい(笑)
—なんて調べればいいですか?
コンビ名の"あぶら煙幕"か、個人名"なごみ子遊園地"で検索してもらえたら出ると思います。
—なごみ子遊園地?(笑)
はい。変な名前ですけど気に入ってます(笑)
ちなみにInstagramの方では、パジャマでねるね、パジャねるという名前で"それっぽエム"という、それっぽいポエムをやってますので、是非そちらも見てほしいです。
—それっぽエム?面白そうですね。
面白いです。
—せっかくなのでいくつか載せましょう!
—他にも沢山聞きたい所ですが、そろそろお時間という事で。今回はこの辺で、インタビューどうもありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございます。
—最後に何か一言あればお願いします。
今この瞬間も尾田栄一郎はONE PIECEを描いてます。それだけ分かってもらえれば。
—(笑)(笑)
読んでいただきありがとうございました!
—またどこかでー!
いつもありがとうございますー!
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