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どこで探す?老人ホームの場所選び!7つの視点で整理してみた

こんにちは!小菅(@kosugehideki)です。
今回は「どこで探す?老人ホームの場所選び」をテーマに書きました。

親が入居する老人ホームを選ぶとき、「どこで探すか」が一つのポイントになります。親と同居/近居であれば「その周辺で探せばよい」という事になりますが、親が「海の見える老人ホームに住みたいと言っている」「生まれ故郷に帰りたいと言っている」というケースもあります。

本人の希望か。家族のアクセス重視か。予算の範囲内か。利便性や住環境か。何を優先させるかで場所選びも変わります。今回は、僕が実際に受けた相談をもとに、場所選びのメリット/デメリットをざっくり整理してみました。

これから家族の老人ホームを探す方の参考になれば幸いです。



①住み慣れた地域が一番か

古くからの友人、ご近所付き合い、かかりつけの先生、行きつけの店があるなど、慣れ親しんだ土地を離れるのは寂しい。老人ホームの入居者は地元の人が多いので、「住み慣れた地域のホーム」に入れてあげたいと思うのが人情だろう。

それに、環境が大きく変わることで、認知症の進行や心身に不調をもたらす「リロケーションダメージ」の懸念もある。予算が合致して、必要なケアが受けられて、家族も通いやすいのなら住み慣れた土地で探すのがベストな選択かもしれない。

家族の訪問もセットで考えよう

一方で、家族の状況も考慮したい。例えば、片道2時間の距離に住む一人暮らしの認知症の母の入居先を探すとしよう。いくら母親が、住み慣れた地域を離れたくないと言っても、面会に行く家族の負担も無視できない。

以前、「老人ホーム入居後の“家族の役割”を整理してみた!」という記事にも書いたが、入居後も家族にしかできない役割があり、一定の頻度で老人ホームへ訪問することになる。その都度、往復4時間かけて訪問するのは肉体的・時間的・金銭的にも負担になるだろう。

もしも入院したら家族対応も必要だし、緊急時に駆け付ける必要もあるかもしれない。ならば、子どもの住む地域の老人ホームへ呼び寄せる方が現実的と考えることもできる。

このように、どんな選択にも必ずメリット・デメリットが存在することを覚えておこう。

②予算重視なら郊外へ

老人ホームは不動産業の側面もあり、毎月の家賃は周辺の家賃相場に比例する。例えば東京都内の一等地ともなれば、家賃だけで月30万円という有料老人ホームも珍しくない。

人気が高くアクセスの良いエリアは地価が高い。逆に言えば、郊外へ向かうほど家賃を抑えることができる。例えば、東京都世田谷区に住む入居希望者のなかにも「世田谷の老人ホームは高すぎて予算が合わない」として、多摩川を渡り神奈川県川崎市で探すケースがよくある。
予算重視なら足を延ばして検討エリアを広げてみよう。片道30分のところを45分や60分まで徐々に広げると、予算内の物件が出て来ることもある。


③兄弟親戚が通いやすい中間地点

「家族みんなが行きやすい場所がいいよね!」という理由で場所を決める家族もいる。「ターミナル駅から〇〇分圏内」や「●●市から〇〇市の間がいい」という人もいれば、「三兄弟だから三人の中間地点がいい」といった具合だ。

これは一概には言えないが、入居した複数の家族の話を聞くと「最初はみんなよく通ったけれど、次第に足が遠のく人もいる」という話をよく聞く。親が老人ホームでの生活に落ち着いたら一安心するし、子ども達にもそれぞれ家庭がある。当初と変わらず同じ頻度で通うとは限らないだろう。

結局のところ、配偶者やキーパーソンが頻繁に訪問する傾向があるため、僕は中間地点と言う考え方はあまりおすすめしていない。


④生まれ故郷に帰りたい

「東京に働きに出てきて60年。晩年は故郷の宮城県に帰りたい」と郷愁にかられ、生まれ故郷の想いが募る人も少なくない。
老人ホームでは、入居者同士が昔話に花を咲かせることが多い。「子どものころは...」「女学校時代は...」「戦後の混乱期は...」といった感じで、同じ時代を同じ土地で過ごした者同士だと打ち解けやすいのだろう。

ただ、故郷へ戻るのは何年振りなのだろうか。数十年ぶりともなれば、住宅開発等でかつて過ごした面影はほとんど消え、懐かしさを感じる事は少ないかもしれない。また、要介護状態で入居すると外出機会は少なく、一日の大半を建物内で過ごすことになる(※)。何を優先するかにもよるが、わざわざ遠く離れた故郷に移り住むメリットは得られないのかもしれない。

加えて、家族や友人などの面会を考えると移動距離がネックとなり頻繁に通えないだろう。また、故郷の老人ホームでの人間関係が思い描いていたものと異なれば、家族や友人にも滅多に会えず寂しい思いをするのかもしれない。もちろん、本人の希望は最大限尊重したいが、家族の訪問のしやすさも考慮する必要がある。

(※)介護保険外サービス等を利用して実費で付き添いを依頼できる事もある。

⑤自然豊かな土地は理想的?

「老後は緑の多い土地に住みたいと本人が言ってた」
「空気の澄んだ郊外の方が穏やかに暮らせそう」

たしかに、自然豊かな環境の方が穏やかな生活が送れそうなイメージはある。朝は鳥のさえずりと共に目を覚まし、カーテンを開ければ溢れんばかりの緑に囲まれ、朝食後は敷地内をのんびり散歩するのが日課 ー。こういう生活が理想的という人もいると思う。

ただ、当初はその生活を満喫しても、月日が経つごとに感動は薄れていく。温泉付きの老人ホームでよく聞く話だが、温泉が日常になるとありがたみも薄れていく。自然豊かな環境も人によっては退屈に感じるかもしれない。

それと、「自然豊かな土地=人里離れた場所」であることは否めない。近くに商店も少なく利便性は失われる。地域にもよるが公共交通機関がほとんどなく、クルマでしか訪問できない物件もある。その場合、家族や友人が訪ねるのも一苦労だ。

何をもって「自然豊か」と定義するかは人それぞれだが、都市からいきなり遠方へ移住するとギャップが大きい。ほどほどの郊外にして利便性も確保するなどバランスを考えたい。


⑥騒音が気になる

⑤に関連して、閑静な住宅地を希望する家族もいる。「幹線道路沿いだと騒音で眠れないのでは」という心配があるようだ。これは建物の構造や気密性にもよるので一概に言えないが、僕の経験上だと外部音はある程度遮断されるので、仮に幹線道路に面していても、そこまで気になる事はないと思う(爆音の車やバイクは別だけど)。

以前、航空基地の至近にある老人ホームに三時間ほど滞在したことがある。たしかに飛行機やヘリコプターの音は聞こえたが、「聞こえるな」くらいの感覚で、うるさいというレベル感ではなかった。念のため騒音について尋ねてみると、その地域では夜間の飛行訓練は20時台に終了するようで、騒音を理由に不眠を訴える入居者はいなかったそうだ。
ただ、音に関しては人それぞれ感じ方が違うので、ぜひ現地へ行って確認していただきたいと思う。

⑦利便性の良い立地

少数派だけど、自立度の高い高齢者本人が「元気なうちに老人ホームへ入居したい」という相談もある。友達とも会いやすく、ショッピングも楽しめるアクセスの良い立地が候補に上がる。実際、老人ホームの近隣に商業施設、カフェやコンビニがあると外出機会も増えるだろう。

また「最寄り駅から徒歩圏内にあるホームがいい」といった要望も多い。この場合、平坦な道ならまだしも、アップダウンがあると歩けない高齢者もいる。地図だけでは判断できないので、実際の周辺環境も併せて確認したいところだ。

また、駅は階段の昇降などもあり電車に乗るまでが一苦労。そのため、最寄り駅よりもバス停が近い方が便利な場合もある。バス一本で近所のショッピングモールへ行ける方が気軽に外出できるかもしれない。

それと、老人ホームによっては最寄り駅まで送迎車を出しているところもある。1時間に1本程度だが、家族が面会目的で送迎利用できるホームもある。「駅徒歩〇分圏内」だけで絞ると選択肢を狭めてしまうので、老人ホームの送迎対応なども確認してほしい。


結局のところ、入居する本人の意向だけでなく、家族の通いやすさも場所選びに大きく影響します。なぜその場所を選ぶのか。メリット・デメリットを天秤にかけ冷静に判断してほしいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます!
次回もよろしくお願いします。

(TOP photo By sweetlouise

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あわせてご覧いただけたら嬉しいです。

第三話:安い老人ホームを選ぶには?老人ホームの費用のしくみ
第二話:
同居だけが親孝行ですか?老人ホームと家族のカタチ
第一話:
「”いい老人ホーム”はありません」!?伝説の老人ホーム入居相談員あらわる

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