なぜ老人ホームに入るのか?多様化する利用目的を整理してみた
こんにちは!小菅(@kosugehideki)です。
初回の「自己紹介」からずいぶんと日が経ってしまいました。今年はマジメにnoteを更新します!
今回はタイトルにあるように、「老人ホームの利用目的と期間」について整理してみます。介護業界外の人からすると「老人ホームって入居したら最期までいる所だよね」というイメージがあるかと思います。確かにそういった人も多いのですが、近年は利用期間もその目的も多様化しています。その辺を整理してみました。老人ホームをもっと身近に、気軽に利用できる人が増えてくれればと思います。
※本記事では便宜上、老人ホームと介護施設を総称して「老人ホーム」と表記しています。
生活様式の変化と長寿化で自宅介護が困難に
昔は親から孫まで3世代の同居が当たり前でしたよね。僕自身、35年前の小学1年生頃までは、両親と祖父母の三世代で同居をしていました。
当時、近所には徒歩圏内に親戚がいて、ご近所付き合いも濃い時代。何かあれば力を貸すことも、助けてもらうこともありました。当時は専業主婦の家庭も多く、高齢者の平均寿命も短かったため、在宅介護がある程度成立していたわけです。
しかし人生100年時代と呼ばれる長寿高齢社会となり、核家族が中心の現代。親と離れて暮らす人も多く、頼れる兄弟も少ない。さらに共働きが当たり前の状況では、親の介護を子供がみるのはそもそも不可能な設計といえます。
親に介護が必要となれば、まずは介護サービスを利用しながら在宅で介護をするのが一般的でしょう。そして、徐々に身体状態や認知機能が低下して在宅介護の限界を感じたときに老人ホームへ入居という選択をします。
老人ホームは「仕方なく入る場所」という意識が強い
「高齢者の持ち家率は80%以上」というデータがあります。戦後の復興期~高度成長期を駆け抜けた現在の高齢者は「庭付きの戸建て」の所有率も高いのが特徴です。
持ち家でも賃貸でも、住み慣れた自宅で最期まで暮らしたいと考えるのが人情というもの。高齢者に限らず年齢を重ねると変化を嫌い、新たな環境に移ることに対して心理的な抵抗が生じます。
さらに「お金がなくて老人ホームなんて入れない」という人もいれば、「虐待の報道を見て不安になった」「老人ホームなんて姥捨て山だ」というネガティブイメージを持つ方もいるでしょう。しかし、様々な理由で自宅生活が叶わず「家族に迷惑を掛けたくないから仕方なく入る」そんな意識の要介護者も多いのではないでしょうか。
また、僕が老人ホームの入居相談をしていた当時、親を老人ホームに入れることの罪悪感に苛まれるご家族を沢山目にしたのも事実。親も子も「仕方なく入る」という意識は共通していたと思います。
短期・中期・長期とニーズに合わせた入居期間
老人ホームは「一度入ったら二度と出られない」と思っている本人・家族も少なくありません(実際はそんなこともないけど)。ただ、イマドキ老人ホームは利用期間と目的が多様化しています。
基本的には「終の棲家」として、長期入居する方が非常に多いのが実情ですが、他にも短期・中期という使い方があります。順を追って解説していきます。
長期入居
最も多いのが長期入居。要介護者が「終の棲家」として入居するケースが多く、例えば介護付き有料老人ホームだと平均入居期間が3年3ヶ月。特別養護老人ホームの場合は3年8ヶ月というデータがあります。
どんな方が長期入居するかというと、みなさんのご想像通り自宅介護が難しくなった方です。今まで家族が介護していたけれど、何らかの事情で継続できなくなった方が大半です。
よく「老人ホームは、寝たきりなど重度の状態になったら入る所」そんなイメージの方もいらっしゃると思います。しかし現実はそうでもなく、認知症の症状があらわれて普通の暮らしが困難な方が「もう自宅では難しいよね」と家族が判断して老人ホームに入居させる。このケースが増えています。
僕が在籍するLIFULL seniorの調査結果でも、「認知症の症状をきっかけに老人ホームに入居した」と回答した方は44.2%にのぼりました。
短期入居(ショートステイ)
いわゆる「ショートステイ」と呼ばれる介護サービスで、一泊から最大30泊まで連続利用が可能です。文字通り一時的に老人ホームに入居して、身体介護や生活支援を受ける介護サービスのことです。
利用シーンですが、例えば
・主介護者が体調を崩してしまった。
・出張するので短期間介護ができない。
・冠婚葬祭のため自宅を離れなければならない。
・旅行に行く間だけ親をお任せしたい。
・親を老人ホームに慣れさせるため。
このようなときにショートステイを利用する方が多くいます。また、ショートステイは介護者のレスパイト(休息)という意味合いもあり、「レスパイトケア」とも呼ばれています。介護は家族にとって精神的・肉体的に負担となるので、リフレッシュする方法の一つとしてショートステイが利用されています。
ショートステイを利用する場所は、主に特養(特別養護老人ホーム)と老健(介護老人保健施設)。ほかにショートステイ専用施設の大きく3種類あります。
主な利用期間は一泊から一週間程度ですが、介護保険法上は最大30日まで連続利用が可能です。それと、20泊や30泊の比較的長期間利用することを「ロングショート」や「ショートステイのロング」と呼んでいます。(なんだか矛盾した言葉ですね)
中期入居(ミドルステイ)
さて中期とはいったいどれくらいの期間かというと、おおむね1~6ヶ月程度のことで「ミドルステイ」と呼ばれています。ただしミドルステイに明確な定義はありません。老人ホームによっては「1年契約プラン」をミドルステイと呼称しているところもあります。
利用シーンは以下です
・主介護者が入院することになったため
・自宅をリフォームする間だけ入居したい
・長期入居を迷っている老人ホームのお試し入居として
・主介護者のレスパイトのため
・特養入居の順番待ちのため
提供しているのは主に民間の有料老人ホームです。ある程度、空室に余裕のある老人ホームで、長期入居者で居室が埋まったらこのプランは休止となります。また、有料老人ホームのミドルステイの大半は介護保険の対象外なので、大都市圏だと一か月30~40万円程度が相場となります。
「冬だけ沖縄の老人ホームで過ごしたい」という入居相談
過去に対応した相談者のなかに「10月から翌年4月までの半年間を沖縄で過ごしたい」という要望がありました。何か所か相談して、実際に半年間だけ沖縄の有料老人ホームに入居された方がいます。
まるでホテル感覚ですよね。でもそういう利用法もアリなのでは?と僕は思います。夏は北海道。冬は沖縄といった感じで全国を転々とする…。もちろんホテルと違い共同生活なので、他の入居者やスタッフと人間関係を築く苦労はあります。
そもそも、ある程度お元気でないと実現は不可能だと思いますが、「来年の沖縄に向けてまだまだ元気で居続けよう」というモチベーションで生活することは、本人の健康にも好影響ではないかと思います。
このように、老人ホームは長期だけでなく短期・中期で利用することも可能で、その利用目的も様々です。短期間だけ使うことができる老人ホームも沢山あるので、気軽に利用できることを覚えておいてほしいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます!
次回もよろしくお願いいたします。
(TOP画像:UnsplashのVlad Sargu)
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