メタメッセージ
メタメッセージとは、直接的な本来の意味を超えて、別の意味を伝えることになっていることを言います。
次女はこの4月に7年生(中学1年生)になりました。小中一貫の9年間の義務教育学校なので、中学生となる正式な入学式はなく、PTA会長挨拶もありません。私は、以前、新中学生向けに入学式のPTA会長挨拶をしたことを思い出し、次女に渡しました。以下は4年前に私が話したものです。実はメタメッセージを込めました。分かりにくいと思うので、メタメッセージが何かは見つからないかもしれません。でも何かを感じてもらえたらと思います。
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新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
私から新入生の皆さんにお伝えしたいのは、二つです。
一つ目は、皆さんはとても良い中学校に、とても良いタイミングで入学されたということです。第三中学校には、熱心で愛情溢れる教職員の方々、そして皆さんをあたたかく見守ってくださる地域の方々がいます。先月、卒業式がありました。卒業生がみんな涙を浮かべて「三中は良かった」と口々に言っていたので、三中が良い学校であるのは間違いないでしょう。
また、皆さんが入学したのは、平成最後、三中の最後、そしてこの体育館でも最後を飾る入学式で、とても貴重なタイミングです。また、来年度から市内初となる義務教育学校で学ぶことができるのも貴重です。そして、今年入学した皆さんは、体育祭を三つの場所で体験できる予定です。一年生の今年は広い上柚木公園陸上競技場で、二年生になる来年は新しく整備される富士森公園陸上競技場で、そして三年生になる再来年は新しくできる学校の校庭で。そんな経験ができる中学生はほかにはいないことでしょう。将来、何十年も経ったあとに、自分の人生の物語の一ページとして同級生と語り合うことがあるかもしれません。
お伝えしたい二つ目。それは、とても良い中学校にとても良いタイミングで入学した皆さんに、悔いのない中学校生活を送ってもらいたい、ということです。
先月大リーグのイチロー選手が、二十八年間の選手生活を終えました。引退会見では、「後悔などあろうはずがない」と話していました。その理由は、「人と比較はできないが自分なりに頑張ったとはっきり言えるから」というものでした。結果ではなく、人と比べるのでもなく、今の自分を超えようと努力を重ねたことが、悔いのない選手生活につながったのだと思います。
皆さんも中学を卒業するときに、悔いの残らないよう、他人との比較であるとか結果の良し悪しだけにこだわるのではなく、ぜひ今の自分を超えることを目標に、チャレンジと努力を重ねてほしいと思います。
そして悔いのない中学校生活を送るためにもう一つ大事なこと。それは悔いの残らないように人と接する、ということです。
作家の村上春樹が書いた小説『ダンス・ダンス・ダンス』に、ユキという十三歳の女の子が登場します。十三歳は皆さんが中学一年でなる年齢です。彼女は、ある人のことを散々悪く言っていました。しかし、その人が事故で亡くなってしまうと途端に後悔します。「ひどいことを言っていた」と。
そんな彼女に主人公が言い放ちます。
「君には後悔する資格がない」。この小説を読んで三十年が経ちますが、この台詞は私の記憶に残り続けています。
「君には後悔する資格がない」
「後悔するくらいなら、君ははじめからきちんと公平に彼に接しておくべきだった。少なくとも公平になろうと努力すべきだった」
そしてこう言います。
「人は悔いの残らないように人と接するべきなんだ。公平に、できることなら誠実に。」
目の前にいる人はもしかしたら明日いなくなるかもしれません。そのときに後悔しないよう、相手と接することができているか。これは大人にとってもとても難しいことです。私自身、きちんとできているとは言い切れません。しかし、百パーセントできなくても、悔いの残らないよう誠実に人と接しようと努力することは意味があると思うのです。
新入生の皆さんが、充実して、そして悔いの残らない中学校生活をお送りできるよう願っています。
最後に保護者の皆様。本日は、お子様のご入学まことにおめでとうございます。来年度から第三中学校と第六小学校が九年間の義務教育学校になるのにあわせて、第三中と第六小のPTAも一体化します。これを良い機会と考えて、子供たちのためになる、さらに良いPTAにしていきたいと思います。保護者の皆様へご理解とご協力をお願いし、私からのお祝いの言葉といたします。
平成三十一年四月九日
八王子市立いずみの森小中学校第三中学校PTA会長 小杉浩文
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さて、私が込めたメタメッセージです。あえて、「将来、何十年も経ったあと」「二十八年間の選手生活」「この小説を読んで三十年が経ちます」といった言葉を散りばめました。直接言ってはいませんが、「長い目で自分の人生を捉えてほしい」という思いを込めています。伝わっていないかもしれません。でも何か感じ取ってくれたとしたら嬉しいです。
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