他力(ときどき自力も)で楽しむ読書#58

「ぼくと日本が震えた日」鈴木みそ(徳間書店)
 「ファミコン必勝本」「ファミ通」「コミックビーム」とずっと作品をリアルタイムで読み続けた作家のひとり。元々取材ルポはお手の物であるだけに、そんな作者があえて書いた「震災本」。手を出すかどうか迷っていたけれど、評価を見て買うことを決める。(売り上げが寄付になるのも決め手だった。)読んでみると、おなじみの作風でボケるところはボケつつも、自分や家族の被災当日の実体験(特に奥さんのエピソードは非常事態にも関わらず笑えてしまうのがまずい)から、どんどん核心へと迫っていくのはお見事。
 自分も当日帰宅が困難だったり、あやふやな情報にふりまわされたりしたのを思い出す。出版業界について書かれた『書籍流通編』はなかなか他の震災本では見られないので新鮮だった。
 面白いけれど、絶対に続編を望まない本。

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