たのしい記 #2

 暑くも寒くもないから動かしていない空調を見ていると、宮殿を守るイギリスの近衛兵さんが浮かぶ。じっとしているが何かしら凄まじいパワーが滲み出る。働いてないのに働いているように見えるとは、とんだワーカホリックだ。彼らが本当に休めていて幸せならいいが。

 秋晴れが気持ちよかった。秋晴れ。発音が好い。まずこの言葉が決まって、それから日本語が築かれたような、そんな気分だ。


 名の挙がらないものがいる。どんな分野にも。
例は特に思いつかない、何せ名の挙がらないものだから。強いて言うなら、「好きな動物は?」の答えの、犬とか猫とかと同じくらいの大きさの逆ベクトルだ。
 名の挙がらないものの名が挙がらないのは、トガった能力や魅力がないから、或いは自己プロデュースが上手でないからだろう。
 私も名の挙がらないものである。何故か、には先の2つともに当てはまっているからだと答える。コミュニティに属せなかったので自分を売り込むタイミングも掴めず、気づいたらもう卒業か、と。将来が不安になっちまうぜ、と。

 でも、名の挙がらないものにはトガってないけど魅力はあると思う。それはぼんやり鈍としていて大きくてまあるい魅力だ。蜂のように刺されるより包まれるような幸福感が堪らないと思う。
 こうは言うけれども私にはそれが見当たらない。でもいずれ備わると信じている。そしていつかは名の挙がらないものの頂点に君臨したい。しかしその座に就いても決して崇められない、何せ名の挙がらないものだから。
 
 流れがもったりしたなあ。まあいいか。

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