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忘れられない記憶

今日の記事はもしかするとあんまり気持ちの良い記事ではないかもしれませんが、noteは素直な気持ちを綴る場所だと思っているのでこんな回もあります。

こんにちは、noteのnはNaturalのnだと思っているコッシーです。
#noteのnはnoteのnだよ


さて、お友達のくまさんがこのような記事を書かれていました。

くまさんが若かりし頃に出会ったある方とのやり取りから承認欲求について考察された非常に興味深い記事です。
そして先輩と食べたさくさくスコーンがとても美味しそうな記事です。
※詳しくは記事をお読みください。

この記事を拝見して、ある出来事を思い出したので本日はそのエピソードを書かせていただきたいと思います。


7,8年くらい前のことでした。
僕は定期受診のために女性の入居者をある病院まで送っていきました。
その病院は市内でも割と大きな病院でうちの入居者も何人も受診されていました。

受診された入居者はしっかりされている方で院内での付き添いは必要ありませんし、診察が終わればご自分の携帯電話からお迎えの連絡をくれる方でした。

「終わったら連絡くださいね」

そう入居者に伝えて僕は施設に戻りました。
ほどなくして施設に1本の電話がかかってきました。
その病院からでした。

「そちらの入居者の○○様の受診が終わりましたのでお迎えをお願いします」

普段はご自身の携帯から連絡をくれるので病院からの連絡に疑問を持ちながらもその方を迎えに行きました。

病院に着くとその方は玄関先で待っており、隣りには看護師さんらしき女性が立っていました。
僕が行くまで入居者の側にいてくれていたんだなとありがたい気持ちになりましたが、実際は全く違いました。
入居者の隣りにいたのはその病院の看護部長さんで、僕を見るなりすごい剣幕で怒ってきました。

「そちら様では患者さんのお迎えの連絡を病院からするように伝えているんですか!?申し訳ありませんが病院はそんなに暇ではございません。きちんと患者さん本人からご連絡をしていただかないと困ります!ちゃんと入居者さんを教育してくださいよ!」

どうやらその日入居者さんは携帯電話を忘れてしまったようで、病院の受付でこちらに電話してもらうようにお願いをしたとのことでした。

病院へ送迎する前に携帯電話を持っているかの確認を怠りましたし、仮に携帯電話を忘れた場合は公衆電話から連絡するように入居者へ伝えていませんでしたので、こちらに100%落ち度があると思います。

病院としてそういう方おひとりお一人に対応していたらキリがないと思いますし、本業に支障が出てしまうかもしれません。
病院側にご迷惑をかけたのは事実で看護部長さんがこちらに注意をされるのは最もだと思います。

ただ、それを入居者さんの目の前でして欲しくありませんでした。


看護部長さんからもの凄い剣幕で怒られて平謝る僕を入居者さんはハラハラしながら見ていました。
自分のせいで僕が怒られたと思い、その後しばらくとても落ち込んでおられました。

「○○さんのせいではありませんよ。僕らの確認不足ですから気にしないでください」

そう何度も伝えましたが簡単に気持ちが切り替えられる方ではありません。僕に会う度に「ご迷惑かけてごめんなさい」と頭を下げてこられました。
その姿を見ると本当に心苦しくなりました。


その病院には他の入居者も何人も通院しており、こちらの連絡先もご存知のはずでした。
わざわざ入居者の目の前でクレームを言うのではなく、あとで電話で連絡をくれれば良かったと思いました。
どうしても直接クレームを言いたいのなら、せめて入居者から離れた場所で言ってほしかったなと思いました。

病院が忙しい時に電話連絡をするように頼む入居者やその入居施設に対してめちゃくちゃ腹が立ったのかもしれませんが、その看護部長さんの態度に僕は強い憤りを感じました。

その後も何人かの入居者さんがその病院を受診されましたので、時折看護部長さんとすれ違ったりすることもありました。
お互い会釈する程度で特に話もしませんでしたし、向こうは全く気にもしていない様子でした。

それから何年か経ち、看護部長さんがその病院を辞めて別の病院に移られたと風の噂で聞きました。
看護部長さんの顔を見る度に苦い記憶が蘇っていた僕は安堵したことを覚えています。
看護部長さんが去りしばらくは何事もなく病院送迎をしていました。

そんなある日、病院を訪れた僕に衝撃的な光景が目に飛び込んできました。


その日も入居者さんをその病院に送っていった僕は受付まで入居者さんと一緒に行きました。
受付の側に立っている【案内係】の腕章をつけた看護師さんの顔を見て僕は驚きを隠せませんでした。

なんとあの看護部長だったのです。

後で聞いた話ではどうやら転職先で上手くいかず、再び戻ってこられたとのことでした。
さすがに出戻りで看護部長の任には就く事が出来ず外来の案内係に配属されたようでした。

僕の脳裏に苦い記憶が蘇ってきました。
なるべく接触せず立ち去ろうとしましたが運悪く元看護部長さんと目が合ってしまいました。

元看護部長さんは僕を見るなり笑顔になって近づいてきました。

「お久しぶりぶり!(本当にそう言ってた)またこの病院に戻ってきました!今後ともよろしくね~!!」

異様なほどのハイテンションで僕に話しかけてきました。
えらい剣幕で僕を怒った方と同一人物とは思えませんでした。

もしかすると出戻りということで院内で浮いていたのかもしれません。
「こんなはずじゃなかった」と思い悩んでいたのかもしれません。
そんな時に久しぶりに見る顔見知りに嬉しくなりテンションが上がったのかもしれません。

ミスター事なかれ主義の普段の僕なら話を合わせていたと思います。
しかしこの時の僕の脳裏にはあの時の悲しむ入居者さんの姿が映っていました。

「えっと、どちら様でしたっけ?」

僕は表情一つ変えずにそう言いました。
ぶりぶり言うほどのハイテンションに対してあまりにギャップのある氷のような冷たい返事にやり取りを聞いていた周りの患者さんがくすくすと笑っていました。
#ぶりぶりなんて言うから

元看護部長さんは苦虫を嚙み潰したような表情になり顔色はみるみる真っ赤に染められていきました。
「お知り合いですか?」と聞く入居者さんに「いや全然知らない人」と答えて僕らはその場を後にしました。

元看護部長さんの恥ずかしそうな顔を見て、数年前の苦い記憶が薄らぎました。
あの時悲しい顔をしていた入居者の顔を一生忘れることはないと思いますが、少しだけすっきりしました。


という話をくまさんの記事を読んで思い出しました。
やっぱり人には誠実に接したいとくまさんの記事とこのエピソードを思い出して改めて感じました。

そして自分は意外と執念深いということも再認識しました(笑)


くまさん、いつも素敵な記事をありがとうございます。

それではまた。
コッシー

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