【創作】スタートライン
今回の創作は青豆ノノさんのこちらの作品のスピンオフになります。
※ノノさん勝手に申し訳ありません!
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卒業のタイミングで私たちは遠距離になる、そんなことは付き合う前から分かっていた。
「俺、卒業したら東京に行くつもりだけどそれでもいいの?」
良いか悪いかで言えばやっぱり良くないけど、そうじゃないと湊と付き合えないなら私に選択肢なんてなかった。
「加奈子、湊くんと付き合ってるの?湊くん卒業したら東京でしょ。知らないの?」
私を心配してるのか、それともざまぁと思ってるのか周りは私たちのことをあーだこーだと言ってくる。こっちは承知の上で付き合ってるんだから関係ない外野が適当なことをしゃべんなって正直思う。
「遠距離でも平気なんだ。やるぅ」
遠距離の何が「やる」のかよく分かんないけど、私はこのまま黙って遠距離になるつもりなんてなかった。卒業までに湊を心変わりさせる、東京なんてやめてこっちに残って私の側にいてもらおうと思っていた。
そしてそこからが私たちにとって本当のスタートだと思っていた。
私は湊に尽くした。尽くせるだけ尽くした。湊の望むことは何でもやったし、望む物は出来うる限りあげた。湊の親や兄弟そして周りの友人たちにも”従順で可愛い彼女”を演じ続けた。湊はもう私無しでは生きていけない、そう思ってた。それなのに。
「もちろん東京には行くよ。ずっと準備してきたからね。向こうに着いたらまた連絡するから」
東京への出発はもう数日後に迫っていた。何気なく聞いた私に湊は悪びれる様子もなくアッサリとそう言った。
ああ、この人はホント全然分かってないな。あなたは私がいないと何にもできないんだよ。そっか、当たり前のようにずっと側で尽くしてきたからきっと気付かないんだね。もう一緒にいくしかないか。
私は湊の言葉に何も言わず微笑みを返した。
東京行き当日、夜行バスの発車時刻数時間前に「やっぱり行かないで欲しい。もう一度だけ会って話がしたい」と湊にメッセージを送った。「もう今更止めにはできないよ」と言いながらも優しい湊は会ってくれた。
「加奈には本当に感謝してる。でも付き合う前に行ったよね、東京に行くけどいいかって。加奈も納得してると思ってた」
湊は時間をチラチラと確認しながらそう言った。夜行バスの発車時刻がどんどんと迫っているのが気になるのだろう。一緒に行く健たちに連絡をしているのか困った顔でスマホを操作している。
そうだよね、困っちゃうよね。こんなワガママ言ってごめんね。でも大丈夫だよ。ぜーんぶ私が解決してあげるから。私も一緒にいくから安心して。
横たわる湊の手元からスマホを拾う。湊の誕生日を入力するとスマホの画面が開けた。誕生日を暗証番号に設定しているあたり単純な湊らしいと思わず笑みがこぼれた。
【風林火山号で東京へ!】というグループメッセージを開いて湊が送ったメッセージを確認する。
湊のメッセージの後にはメンバーからいろんなスタンプが送られていた。その中に天使が空へ上っていくスタンプを見つけた。それを見てまた笑みがこぼれる。「東京行くのやっぱやめるわ」そうメッセージを送ろうとした時、ヴヴヴと携帯が揺れてグループ外のメッセージが届く。差出人には【華】と表示されていた。私はメッセージをタップした。
…ああ、コイツのせいだったのか。
ごめんね、湊。もうちょっと待っててね。全部終わったらすぐにそっちにいくからね。
私は手に持った湊のスマホで東京行きのルートを調べた。スマホの画面が赤く染まっていった。
おしまい
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青豆ノノさんありがとうございました。若干設定を変えていますがパラレルワールドってことで許してください(汗
全く夜行バスには乗っていませんが、一応こちらの企画に参加しているつもりです(汗
こちらの企画にも参加しています。
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