【コぐるみ創作バトル!】デートの日はいつも雨降り〜後編〜
この創作は【コぐるみ創作バトル!】の作品になります。
※詳しくは下記をご覧ください。
■前編はコチラ
■着ぐるみのイラストはコチラ
さすが着ぐるみですよね、とても素敵なイラストだと思います。考えていた後編を一旦白紙にしてイラストから感じるインスピレーションを信じて後編を書きました!是非お読みください!!
ってことで後編です。
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私は雨天の里という雨を司る雨女が産まれ育つ村に生まれた。雨女は男の子を産むことはなく必ず女の子が産まれた。そのため里には女しかいなかった。里の女たちは20歳を過ぎると子を宿すために一旦里を離れる。その相手となる男を探すために町へと出ていくのだった。相手が見つかって懐妊した時点でまた里へと戻り出産に備える。そしてその相手とはそれきり連絡を絶つ、それが里の掟だった。それは私も例外ではなかった。20歳を過ぎた時、私は里を後にして町に出たのだった。
妊娠さえ出来れば相手の男は誰でも良いわけではなかった。雨女が子を宿すにはその相手に心を許さなければいけないと言われていた。つまり相手の男を好きになる必要があった。
私は出会った男たちを好きになろうと努力をした。しかし私が会った目の前の男たちは最低な奴らばかりだった。身体だけが目的の男。自分の思い通りにならないと平気で私を捨てる男。力任せで私を従えようとする男。どうすればそんな奴らを好きになれるのか甚だ疑問だった。子を宿して里に戻れるとは到底思えなかった。
そんな男たちと出会う度に私の心は荒れた。それと同時に天気も荒れた。
雨をコントロールできる雨女だが、感情の起伏によって雨を制御できなくなることを私はこの時初めて知った。
彼に出会ったのはそんな時だった。
男たちに絶望して大雨に打たれながら立ち尽くす私に彼が声をかけてきたのだ。
「あの、大丈夫ですか?」
大丈夫と私を心配する彼の全身はずぶ濡れだった。自分もびしょびしょにも関わらず私を気にかける姿が可笑しくて思わず吹き出してしまった。
それから彼とデートを重ねた。彼はこれまで私が出会った男たちとは違って優しかった。常に私を気にかけてくれた。私が笑うと本当に嬉しそうな顔を私に向けた。些細な事で拗ねたりしょんぼりする姿もいじらしかった。彼といると心がとても安らいだ。彼と会う日は感情のコントロールが難しくいつも雨を降らせてしまっていた。
私は彼のことが大好きだった。彼に会う度にその気持ちは大きく膨らんでいった。それと同時に彼と離れなければいけない里の掟を心底恨んだ。
「私ね、人間じゃなくて雨女なの」
5回目のデートの日、私は彼に全てを話そうと思った。彼なら全部受けとめてくれるような気がした。
彼は私からの唐突な告白に目を丸くしていた。何かを言うまいと口をパクパクさせるのだが言葉が続かないようだった。無理もない、こんな突拍子もないことを言われて動揺しない方がどうかしている。
彼はスーハ―と呼吸を整えると意を決して口を開いた。
「ええと、君は、雨女?で、だからデートの日はいつも雨が降っている、のかな?」
私の言葉を信じているのかは分からないが彼の顔からは困惑の色が見えた。
「つまり……君と会う日はこれからも雨降りってこと?」
不安げな目で私を見つめる。ピュアな彼のことだ、私の話を信じているのかもしれない。この先ずっと雨だと思って子犬のように怯えた表情する彼が本当に愛おしかった。
「……バカね、冗談よ。冗談」
私がそう言うと彼の表情がパアと明るくなった。それはまるで雨上がりようだった。
「もう!驚かさないでよ!」
口を尖らせて拗ねる彼。私はごめんごめんと笑って彼の傘を持つ手に自分の手を重ねた。
「来週の納涼まつりに行きたいって言ってたもんね。雨降りじゃ困っちゃうよね」
私は目の前に貼ってある【鉾美町納涼まつり】と書かれたポスターを指さして言った。この町で年に一度行われるお祭りに一緒に行きたいと以前から彼に誘われていた。
「晴れると良いなぁ」
優しく微笑みながらポスターを眺める彼と(雨天中止)という文字を私は交互に見つめた。「……うん、晴れると良いね」そう呟いて心の中で大きな溜息を吐いた。
「でもまぁ君と一緒なら、雨降りでも全然構わないけどね!」
そう言って彼は屈託のない笑顔を私に向けた。さっきより雨足が強くなる。私は彼をジッと見つめた。
彼を、その笑顔をこの先もずっと忘れないようにと、瞼に焼き付けたのだった。
◇
待ち合わせのコぐるみ公園で僕は彼女を待っていた。天気は雲一つない快晴だった。きっと納涼まつりは無事に開催される。だけど約束の時間を過ぎても彼女は現れなかった。もう何度も連絡をしているが彼女からの返事はない。
きっと彼女はここに来るつもりはないのだろう。なんとなくそんな気がしていた。
彼女は本当に雨女なのかもしれない。でも僕はそれでも良かった。彼女と一緒ならデートがいつも雨降りでも構いはしないのに。
約束の時間から1時間が過ぎた。手を繋いで祭りに向かう楽しげなカップルが僕の目の前を通り過ぎる。そのカップルに僕らの姿を重ねた。思わず緩んだ涙腺を慌てて締め直す。スマホの画面を見るが、彼女からの連絡はなかった。
どうやら今日は役目が無さそうな傘を手に掴み、立ち去ろうと歩き出したその時だった。
空からポツポツと雨が降り始めた。
僕は立ち止まり手に持っていた傘を挿した。
そして再びその場に留まると、雨の音に耳を傾けたのだった。
おしまい
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歩行者b様、いかがでしたでしょうか。
これがコぐるみの「デートの日はいつも雨降り」です。
ゴリゴリの恋愛小説になりましたが創作してるのは40代のおっさんたちです。
#一気に冷めるわ
少しでもキュンとしていただけたのなら嬉しいです。
また次回をお楽しみくださいねー!
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