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ドキドキ大作戦

「一駅間違えちゃった。ははは」か「バス乗るの久しぶり過ぎてボタン押すの忘れちゃったよ。ははは」と迷った結果、前者を昨日の言い訳として奥さんに伝えたところ肩パンされました。(多分どっちでも結果は一緒)

こんにちは、コッシーです。


さて、僕が小学校高学年の頃、日本中で『ビックリマンチョコ』が爆発的に流行りました。チョコというよりもそのおまけについているシールがとにかく大人気で、もはやチョコの方がおまけになるくらいシールが大流行しました。

僕は田舎の小さな町に住んでおりましたが、例に漏れず僕の町でもめちゃくちゃ流行りまして、ミーハーな僕も皆と同じくビックリマンを買っていました。

近所の駄菓子屋では1週間に1回、毎週土曜日にビックリマンが入荷され、その余りの人気ぶりに『1人3個まで』という特別ルールが設けられていました。それでもわざわざ遠くから買いに来る猛者どももおり、予約などが出来なかったため早く買いにいかないと売り切れてしまうほどの人気ぶりでした。

僕が小学生の頃、土曜日はまだ休みではなく午前中だけ授業がありました。集団下校になるため早く帰りたくても帰れず、家に着くや否やお昼ご飯を食べる前にダッシュで駄菓子屋に走りました。当時ビックリマンチョコは1個30円ほどでしたので100円でビックリマン3個とうまい棒1個を買うのが定番でした。うまい棒を食べながらドキドキしつつ開封していたのが思い出されます。

ビックリマンには『ヘッド』という通常のシールとは一味違うシールがごく稀に入っておりました。そのシールの風体がまた子供心を絶妙にくすぐります。ピッカピカに光っており、特別感が満載で、むしろそれを手に入れるために買っていたと言っても過言ではありません。

しかし1週間に3枚ずつしかシールは増えないため、なかなかヘッドを入手する事はできませんでした。


そんなある日のこと。

友達のM君の高校生のお兄さんがヘッドの一つでもある『シャーマンカーン』を持っているとのことで見せてもらいにM君の家へ遊びにいきました。

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シャーマンカーンはビックリマンの中ではかなり古いヘッドであり、僕がハマっていた頃にはもう入手が不可能な1枚であり、直に見るのは僕も初めてでした。

M君のお兄さんからキラキラのシャーマンカーンを見せてもらい感動に浸っっていた時、お兄さんから衝撃的な一言を僕らは聞きました。

「これ、ツレに五千円で売るんだぜ」

ご、五千円ですと!?!?

小学生にとって五千円は超大金です。五千円もあれば本当に何でも買えると思っていた頃です。シャーマンカーンすげー!ビックリマンやべー!と子供ながらにそのプレミアぶりに震えました。お兄さんからもっと高く売れる古いヘッドもあると聞いて、さらにびっくりしました。

僕もヘッドが欲しいとさらに強く思いましたが、しかし1週間に3枚の制限があるため入手するのはほぼ絶望的です。逆に言うとその制限があるからこそ1枚五千円で売れるのです。

お兄さんによく手に入れましたね、と聞いてみると、「俺は流行る前から買ってたから、まだ制限が無かったんだよね」と言われました。

M君のお兄さんの話は僕とM君にはとても衝撃的でした。いや話というか五千円が僕らにとってめちゃくちゃ魅力的でした。その日僕とM君はどうすれば五千円を手に出来るか真剣に話し合いました。

今からビックリマンを買ったところでヘッドを手に入れる可能性はめちゃくちゃ低いことは子供ながらに理解していました。ですがヘッドを手に入れないことには意味はありません。無い頭を振り絞って僕らは一生懸命考えました。M君は学年でも1,2を争うほどの秀才でしたが、僕は平凡中の平凡の小学生だったので、考える事に飽きてしまい途中からは夕飯のおかずが何かを考えていました。M君すまん。

から揚げかカレーが良いなぁなんて考えていたその時です、M君が「そうだ!」と大きな声を上げました。

「僕たちも『流行る前』に買えばいいんだよ!」

「は、流行る前に・・・?」

「そう!お兄ちゃんが言ってたでしょ!流行る前に買ってたから制限無く買えたって!」

「つまり…どういうこと?」

「つまり、ビックリマンとは違う何かを流行りだす前に買っておいて、流行ったタイミングで売ればいいんだよ!」

「よく分からないけど流行る前に買えばいいんだね!」

「そういうこと!」

M君の言ってる意味はよく分かりませんでしたが、学年屈指の秀才のM君が考えたアイデアです。妙案に決まっています。僕はM君に乗っかることにしました。


M君が選んだ商品は『ドキドキ学園』というチョコにシールが1枚入っているという、完全にビックリマンをパクッた商品でした。しかしビックリマンが社会現象になるほどの人気を得ておりましたので、その類似商品に目をつけるというのは悪くないチョイスです。さすがはM君です。

この作戦にM君は『ドキドキ大作戦』と名付けました。いやダサすぎるだろ。

その日から僕らはビックリマンを買うのをやめてドキドキ学園を買いまくりました。その頃ドキドキ学園は全く人気は無かったため特に1人○個という制限はなく何個でも買えました。優しい駄菓子屋のおばちゃんから「これビックリマンと違うで」と教えてくれたりしました。

おこずかいをもらえばドキドキ学園を買い、親の買い物に着いて行った時には何個か買ってもらっていました。なんならお年玉すらドキドキ学園につぎ込んでいました。

ドキドキ学園の魅力は何と言ってもキラキラシールの多さでした。ドキドキ学園を買えば買うほどビックリマンとは違いレアカードの入手率の高さに驚きました。集めまったレアカードの多さに僕らはこれがいくらになるかを計算し二人でほくそ笑んでいました。何を買うかまで考えていたほどでした。ドキドキ大作戦は着実に成功に向かっていました。


しかしドキドキ学園はビックリするほど流行りませんでした。


待てど暮らせどこれっぽちも流行りませんでした。その兆しすら少しも見えませんでした。やがて本家のビックリマンも廃り始め、僕もM君も次第に「あ、これは無いな」と思い始めどちらともなくドキドキ大作戦は終わりを迎えたのでした。僕らの手元に残ったのは何のお金にもならない大量のシールだけでした。いくら眺めても1ミリもドキドキせず、無駄にキラキラキラキラ光っていたのでした。ドキドキ大作戦は大失敗でした。


そんなM君とは今でも会って遊ぶ幼馴染の1人です。会った時には、たまにこのドキドキ大作戦の話をして「バカだったね(笑)」と大笑いしています。

ドキドキ大作戦は僕にお金を1円ももたらしてくれませんでしたが、かけがえのない友と酒の肴を与えてくれました。

それだけでこの作戦は成功と言えると思います。ドキドキ大作戦は大成功なのです。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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