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出来なくなること

施設見学を予約されて何の連絡も無いままドタキャンされた方が、先日急に電話をしてこられて「この前はすいませーん。今から見学に行っていいですか?」と言われたのですが、普通に「嫌です」と言ってしまいました。

こんにちは、すぐに正気に戻り慌てて取り繕ったコッシーです。
#結局見学したので安心してください


さて、高齢になると昨日まで簡単に出来ていたことが難しく感じたり、または出来なくなることがあります。
病気や怪我などが原因の場合もありますが、どうしても年齢を重ねると身体的機能の低下からいろんな面が衰えてきてしまいます。
そうした状況で将来のことを考えて不安になってしまう方もいらっしゃいます。

ある男性の入居者で洗濯や掃除などの身の回りのことをほとんどご自身でされている元気な方がみえました。
しかし、90歳を超えたあたりから少しずつですが出来ないことが増えていき、僕らがサポートすること場面も以前よりも多くなってきました。
ただ、サポートとは言ってもほんの少し手を貸す程度でまだまだご自身で出来ていました。

ある日、その方が1枚のメモを僕に手渡してきました。
メモには「風呂衣類脱着」や「ゴミの始末」など、その方が現在ご自分でされていることが箇条書きで書かれていました。

「今はなんとか自分で出来ていますが、もうまもなく自分で出来なくなると思います。その時はどうかよろしくお願いします」

とても不安そうな顔で僕に言われました。
おそらく先々の事を考えてしまい不安に思われたのだと思います。
少しずつですが自分で出来ていたことが出来なくなりつつあり、今出来ていることも出来なくなってしまうと思ったのかもしれません。

もちろんその時はこちらでサポートしますが、それでも自分で出来なくなる事に対する寂しさや悲しさは残ってしまう場合があります。
この方だって本当ならば、自分のことは自分でされたいのだと思います。しかし、先々に対する不安から不本意ながらもこうして前もってこちらに依頼をされたのでしょう。

この方の気持ちが痛いほどよく分かり、僕は何て言えば良いか分かりませんでした。
「任せといて!安心していいよ」と言うのも違う気がしますし、「いやいや○○さんなら大丈夫ですよ」と励ますのも無責任な気がします。

どうしたものかと思っていると、そのメモを横から見ていた他の入居者がその方に声をかけました。

「すごいですね!こんなにたくさん出来ることがあるなんて!私なんてお掃除もお洗濯もヘルパーさんにやってもらっているわ」

「え?すごいですか?」

まさか自分が褒められるとは思っていなかったのでしょう。驚きながらもその方は満更でもない様子でした。

「ええ、本当にすごいと思いますよ」

続くように僕がそう言うと、先ほどまでの不安な顔が嘘のように明るい表情になり、「もうしばらくは自分で頑張ってみますわ」と元気に戻っていきました。


先のことを考えると不安になることがあります。
特に高齢の方々はご自身の衰えを感じてより不安に思うことでしょう。
そんな時に今出来ていることに目を向けることで勇気をもらえる場合もあることを入居者に教えてもらいました。

今、目の前にあることを大切にしたいですね。


それではまた。
コッシー

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