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無駄な事なんて何一つない

今日はお休みでしたが、家から仕事の電話を何件かかけたのですが、余所行きの声を奥さんに聞かれて、めちゃくちゃ恥ずかしくなりました。#ニヤニヤすんな

こんにちは、コッシーです。


さて、うちの施設には清掃や整備などを担っているIさんというスタッフがおります。Iさんは定年後にうちの会社に来られて早10年ほど経っており、うちの施設の整備に関しては責任者の僕よりも詳しい、とても頼れる方です。

ちなみに年2回のワックスがけはいつもIさんの主導の元行っております。


ある日Iさんが食堂の椅子をひっくり返して足の部分に何かを貼っています。何をしてるか聞いてみると、椅子の足に付いていた滑り止めが摩耗しているため何年かぶりに全部張り替えていると言います。

食堂の椅子は全部で35脚ありそれぞれ4つ足がついています。つまりそれを全部張り替えるとなると、35×4=140もの足を張り替えることになります。

「手伝おうか?」と僕が聞くと、「これは俺の仕事だから大丈夫大丈夫」と笑顔で応えていました。「分かった。じゃあ頼むね」そう言ってその場を後にしました。結局2時間くらいかかって全ての椅子の滑り止めを張り替えてくれました。


しかし、問題が起こります。

張り替える前の椅子は滑り止めが摩耗してはいたもののある程度の引っ掛かりは残っていました。かといって全然滑らないというわけではなく、高齢者の力でも椅子を引いたり押したりする事が出来ていました。

つまり簡単に言うとめちゃくちゃ良い具合で椅子が滑っていたんです。

しかし、これを新しく張り替えてしまったため、全く滑らなくなりました。これにより歩行が不安定な入居者は椅子を自力で滑らせることが出来なくなってしまいました。普通に歩行できる方達からも「座りにくくなった」と苦情が寄せられました。


今回、椅子の滑り止めの張り替えを僕は依頼したわけではなく、Iさんの判断で行いました。ただ施設の設備に関してはIさんの方が僕よりも遥かに詳しく独断で修繕等を行う事は過去にもありました。

もちろん多額の費用が掛かる場合は事前に僕に必ず聞いてくれますが、今回の椅子の滑り止めのような小規模な場合は事後報告することが多かったですので、僕としては今回のIさんの行動に関しては全く問題はなく責めるつもりはありませんでした。

ただ他のスタッフは違います。

Iさんが僕の許可なく勝手な行動をした結果、入居者に迷惑をかけていると、結局全て張り替える必要があり無駄な事をしたと、そんな風に言うスタッフもおりました。

確かにこのままでは入居者にとっても転倒のリスクがありますので、再度張り替える必要があります。そのためIさんが2時間かけて行って滑り止めの張り替えは無駄な働きのように見えますし、そう思われても仕方ない部分があります。

「勝手なことするから」「あんな椅子じゃ危ないよね」「全部貼り直しじゃん」「無駄な事して」

そんな声が聞こえてきましたが、僕はそのスタッフ達を注意しました。


今回のIさんの行動は、今後椅子の足に滑り止めを付けると逆に危ないということに気付かせてくれました。

また、全て張り替える前に例えば一組だけ張り替えて確認することを先に行った方が良いということにも気付かせてくれました。

そう考えるとIさんがやってくれた事は全く無駄な事ではなく、今後の施設運営に大いに役立ってくれています。

それでもまだIさんを責めるのであれば、Iさんではなく椅子に滑り止めが良いか悪いかを気付けなかった僕の責任です。責めるなら僕です。


そんな話をスタッフにしました。もちろんそのスタッフを怒ったり怒鳴りつけたりするのではなく、落ち着いて話をしました。

そのスタッフも施設のことを思って出た意見です。決してIさんを責めたいわけではありませんので、僕の言った事をきちんと分かってくれたように思いました。


Iさんには僕から話をしました。非難するつもりはなくてもIさんが一生懸命やった仕事の不具合を指摘することになります。場合によっては気分を害する可能性もあります。

まずは張り替えてくれた事へのお礼を言いました。ただそれに伴い不具合が出た事実を包み隠さず全て正直に話をしました。

全く滑らないと歩行が不安定な入居者が転倒するリスクがあること、他に入居者が座りにくそうにしていること、そして管理者としてはそれをそのままにはしておけないということ。全て話しました。

Iさんの表情から「しまった」という落胆の色が見られましたが、自分の仕事に対してプライドを持つIさんです。当然仕事に不具合が合った場合は言い訳をすることは絶対にありません。「申し訳なかった」と謝ってくれました。

Iさんには、決してIさんの責任ではないこととIさんのおかげでいろいろなことに気付けた事を話しました。

そして最後に、「張り替えをお願いできますか?」と聞くと「もちろんやります」と言ってくれ、すぐに滑り止めに替わるシートを買ってきてくれました。

とりあえず一つの椅子を張り替え具合を確認したところ、そのシートは滑りも引っ掛かりもちょうどよくぴったりでした。

「あとは俺がやっておくから。本当に悪かった」と言うIさんに、

「いや今日は手伝わせてよ」と言って一緒に全ての椅子を張り替えました。途中で僕が変な貼り方をして、やり直したりしたので結局二人でも2時間かかってしまいました。#足を張り替えるのではなく引っ張る男

それでも全部終わった時にはIさんと笑顔で握手を交わしました。


仕事はどうしても上手くいかない事や失敗する事が多々あります。その時に「時間の無駄だった」とか「やらなければ良かった」と思うのではなく、必ず失敗の中にも得られた何かがあります。

その何かをきちんと分析することが出来れば、仕事には無駄な事なんて何一つないと思います。

唯一あるとすれば、「無駄な事をした」と思ったり非難したりすることが無駄な事だと思います。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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