うちのエースをよろしく

こんにちは😃コッシーと申します。

愛知県で介護事業を運営している会社の介護事業部の統括責任者をしております。

まず最初に、今日の記事はめっちゃくちゃ長いですが、それだけ思い入れがあると思って暖かい目で読んでいただけたら幸いです。


さて、介護は一般的に女性スタッフが女性の利用者を、男性スタッフが男性の利用者を介護する、いわゆる『同性介護』が原則と言われています。

しかしスタッフの状況により同性介護が出来ない場合もあります。

そのためうちのデイサービスではご利用前に必ずその旨を確認いたします。

男性のご利用者はほとんどの方が女性スタッフの介護に関して問題なく了承してくださいますが、反対に女性のご利用者の多くは異性による介護を嫌がります。

特に入浴や排せつ介助などのデリケートな介護に関しては、女性スタッフしか受け付けないといった場合が少なくありません。

でもこれは当然の事でして、歳を重ねても羞恥心や自尊心を持つ事は非常に大切な部分であり、もちろん僕らもこういった考えを尊重し、女性のご利用者については出来るだけ女性スタッフが介助に入れるように配慮しております。

そんな中、うちの男性スタッフで唯一女性のご利用者の入浴や排せつ介助に入っても嫌がられない職員がいます。


彼の名前はU君。

U君だけは女性のご利用者もすんなり受け入れて、彼は男性も女性も関係なく入浴や排せつ介助を行います。

女性のご利用者に嫌がられないなんて、もしかして女性の気持ちが分かるの?と思われるかもしれませんが、正にその通りで、彼はいわゆるトランスジェンダーで、体は男性ですが、気持ちは女性であり、好きになる対象も男性らしいです。


※本日の記事ではその辺りの記述が出てきます。もしかしてトランスジェンダーの解釈が間違っているかもしれませんが、あくまでU君との関わりの中で僕なりに感じた事になりますので、決して否定などをしているわけではありません。もし気分を害したら本当に申し訳ありません。


U君と初めて会ったのは5年ほど前で、彼がうちの介護者のパート募集の採用面接の時でした。

何かに怯えたような弱々しい男性で、(まつ毛が長い男の子だなぁ…)と思ったのを覚えています。※のちに、つけまつ毛という事が判明しました。

彼の経歴を拝見すると、棒有名国立大学を出て、棒有名外資系会社に入社しており、そんなハイスペックな方がなぜ介護?なぜパート?ととても疑問に思いました。

その外資系の会社は1年前に辞めており、そこから彼の経歴は空白になっていました。

その事を問うと、彼の表情が曇るのが分かりました。

U君は、「先に言っておきますが」と前置きした上で、「僕はトランスジェンダーです。それでも大丈夫でしょうか。」と言いました。

当時は『トランスジェンダー』の意味が全く分からず「と、とらんすじぇんだあ・・・?」と彼に聞き返すと、僕の反応を予想してたかのように「簡単に言うとゲイです。」とさらりと言いました。

まさかの”ゲイ”というフレーズに少なからず動揺しましたが、偏見はダメだと強く思った僕は、「問題ないですよ」と答え、あまりその話題には触れず普通に面接を続けました。今考えるとそれも偏見だったなと少し反省しています。(普通に接しなきゃ!と思う事も偏見っていうことね)

彼が外資系会社を退職した理由を聞いて僕は驚愕しました。

彼はトランスジェンダーを理由に同僚や上司からひどいいじめを受けたとのことでした。

詳しい事は書けませんが、その内容は性的虐待や性犯罪と言えるほど壮絶なモノでした。

初めて会った僕にそんな話をしたのは、きっとそれだけ彼の心が病んでいたのだと思います。もしかすると誰かに聞いて欲しかったのかもしれません。

僕は涙を拭きながら話す彼に同情をしましたし、会ったこともないそのクソみたいな同僚や上司に強い憤りを感じました。今こうして書いているだけでも思い出して腹が立ってくるほどです。

U君は退職後そのショックから何もする気が起きず、しばらく自宅に引きこもっていたそうです。

しかし時が経ちこのままではいけないと思い、職を探しを始め、その際に介護の職場は女性が多いと耳にし、それでうちの求人に応募してきたとのことでした。

正直採用するかどうか迷いましたが、1歩踏み出そうとしている若者を応援したいという気持ちと、かなりハイスペックな経歴の方が介護をするとどうなるかという興味から彼を採用することにしました。

U君がトランスジェンダーという事は、彼とデイの責任者とも話し合ってデイサービスのスタッフ全員に事前に話をすることにしました。もちろん前の会社でされた事は伏せました。

デイサービスのリーダーは、「とにかく未経験なんだから、まず現場を知ってもらわないと。現場に男も女も関係ないからね」と言ってくれました。本当に頼もしい。


U君は僕の期待にしっかりと応えてくれ、本当に一生懸命働きすぐに仕事を覚えてくれました。

排せつ物の処理などにも嫌な顔一つせずやってくれ、うちのスタッフたちもそんなU君を認め仲間として受けいれてくれました。

彼の元来の優しい性格とその上品な立ち振る舞いは、すぐに利用者から大人気となりました。

U君に介護をしてもらいたいというご利用者もいるほどの人気で、彼は自分が誰かに必要とされていることにとても大きな喜びを感じていました。

もともと勤勉だったU君はこれを機にどんどん介護の世界にのめり込んでいき、そしてその成長は目を見張るものがありました。

入社後すぐに初任者研修講座(介護の資格の第1歩)を受講し、2年目に実務者研修を受け、そして4年目に介護福祉士の資格を取りました。

さらに昨年働きながら夜間学校に通い、なんと社会福祉士の資格まで取得しました。

U君は介護職を「天職」と言っていましたが、僕たちもそう思っており、入社5年目にして彼はうちのデイサービスのエースとなっていました。


そんなU君が退職を申し出たのは先月のことでした。

理由は『障害福祉の道へ進みたい』からでした。

社会福祉士の研修で障害施設を訪れた際に、精神的な障害を持つ子供たちと接したそうです。

その時に精神的な理由で悩んでいた自分ならその子たちに寄り添えるのではないか、またはその親御さんたちの支えになれるんじゃないかと、強く思ったそうです。

それを聞いて僕は本当に嬉しかったです。

5年前ここに来た時の弱々しい彼からは想像できないくらい前向きで、そして強くなったと思いました。

エースが抜けるのは非常に痛手ですが、U君を全力で応援したいと思いました。

唯一気がかりなのが、前の会社のトラウマです。

僕はU君に一言「大丈夫?」と声をかけました。

U君は「皆さんのおかげで大丈夫です」と笑顔で答えてくれました。

その笑顔は僕の心配を吹き飛ばしてくれました。うん、彼なら絶対に大丈夫だ。

次の日U君が退職することをみんなに報告しました。

全員が彼の退職を惜しみ、そして全員が彼の未来を応援しました。

本当に優しいスタッフばかりで僕の自慢です。みんな大好きです。


そんなU君が昨日7/28に最後の勤務を終えました。

U君の最後の挨拶では涙を流す利用者もいました。

U君は必死で涙を堪えており、最後の最後まで利用者に対して笑顔でした。本当にすごいヤツです。

U君はこれから有給消化となり、実際にうちの会社に8/15まで籍があります。

そして8/16からもう次の障がい者施設で勤務する事が決まっています。

介護施設と障がい施設は似て非なるもので、おそらく最初はその違いに戸惑い苦労すると思います。でもU君なら絶対に大丈夫です。すぐに乗り越えられます。そして自分の夢を叶えてくれると信じています。

でももし1人で悩み苦しみどうすればいいか分からない時はいつでも僕に声をかけてください。僕はU君の味方ですから。

そしてU君の次の職場の方々。

U君は非常に優秀です。その上とても優しい性格ですので、利用者に寄り添ってあげられると思います。

どうかどうかうちのエースをよろしくお願いいたします。きっと採用して良かったと思っていただけると思います。いつかそちらでもエースになってくれると思います。


最後に心配事が一つだけ。

実はU君の送別会を8月の中旬に行う予定です。

その送別会終わりにU君から2人で飲みに行きましょうと誘われました。

そこは喜んで、二つ返事OKをしたのですが、

昨日の帰り際にU君に思いっきりハグされまして、とても不思議な気持ちなりまして、二人っきりの飲み会を僕はどのような気持ちで臨むべきかを悩んでおります。

ある程度の覚悟をした方が良いのでしょうか・・・


(U君本当に頑張れ!!めちゃくちゃ応援してるぞ!!)


最後までお読みいただき本当にありがとうございました!!

現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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