三十路インタビュー Markus: 平和教育担当

自分の実習には二人の担当者がいた。

合計3ヶ月の実習の中で一ヶ月半を区切りに別れていた。前半の担当者は前回のインタビューの回答者Maria、そして後半一ヶ月半は今回インタビューに答えてくれた彼。3歳の息子を持ち最近パートナーとも籍を入れたというゆげのたつ新婚ほやほやの同い年。

同い年ってなんだか嬉しいし、自分とのいい比較対象になります。

ということで前置きもこの変で。

彼の担当は争いや紛争などの平和教育。平和的かつ効果的な反対運動のためのトレーニングワークショップもこなすマルチプレーヤーです。

名前はマルクスさんです。

※このインタビューをさせてもらったのは私の実習先Friedenskreisという団体で、この団体については、、、https://note.com/kosokosolife/n/na89dbd23727d  

画像1


《簡単に自己紹介をお願いします》

マルクス・ヴッツラーです。2005年から2012年までライプチッヒ大学で心理学を学んだ。『暴力、抗争、争い』が主なテーマで、社会運動など平和的抵抗運動の実践を学んだ。心理学を学んだと言っても、心理相談とか、心理療法というよりも社会的な心理的なテーマになるかな。争いとか、紛争についてのコミュニケーション心理。

学生時代から社会運動に参加していた。それは、平和活動だったり環境問題だったり、反ナショナリストについて。平和活動についての最近の例だったら、ハレ・ライプチッヒの空港が軍に使われていて、軍による使用度が上がっているということで実際に望遠鏡を持って空港で観察したりしていた。表向きにはあまり語られてなかったのだけど実際はアメリカの軍用機を始め、ドイツの軍用機のターミナルになっていて一日1000機に登ることもあった。その情報を私は公にし、新聞に投稿したり、デモを企画したりした。

反対運動としてどうやってナショナリストのデモなどに対して平和的なカウンターデモができるかなどのトレーニングのためのワークショップを開いてたり、ゴアレーベン(Gorleben)という小さな町であった核廃棄物貯蔵施設に対する反対運動でもワークショップをした。内容としてはどうやって実際にその問題にプロテスト、ブロックをできるかどうかということ。警察との対応の仕方やチームにおける判断の仕方。

それが自分にとって教育に携わった最初の仕事で、その活動があって今の仕事に関わっているかな。自分が関わった抵抗運動では共通する前提がなかったので大変だったが興味深かった。抵抗運動の数が5人以下のときから1000人以上のときがあって、うん、そうだね。とても興味深かった。


※2011年、このゴアレーベンであった運動はドイツの市民運動の強さを物語っている。核廃棄物が運ばれてくる線路への座り込みを決行し、最終的には警察から『降伏宣言』を提出させることに。詳しくは→http://www.zenshin-s.org/zenshin-s/f-kiji/2012/09/255071.html


《あなたの仕事は》

『平和教育』担当ということで自分もワークショップをオーガナイズドする。『日常にある差別に対して勇気を!』というテーマでもワークショップをしている。ワークショップ以外は市民平和活動のネットワークの創設とその維持だね。ドイツ中部を中心にオーガナイズドしてて『力を合わせて平和教育をやっていこう』という目標のもとでつくられた。その活動の広報もやっている。

他にはハレにある学校とFriedenskreisの繋がりをもう一度強固にした。まず今まで学校とどんなワークショップをしてたのかを学校に伝え、これから自分達が学校に対してどんなワークショップが出来るかなど、『掃除みたいなこと』をしてもう一度学校とコンタクトを取ったかな。



《どうしてFriedenskreisで働き始めたの?》

まず2005年当時、ライプチッヒに住んでいたんだけど、ハレのFriedenskreisが中心となってこの地域の平和団体のネットワークを立ち上げるるいう企画をしていて、その時に知り合って今ここにいるかな。自分は2012年に大学を卒業して仕事を探していたんだけど、その時にFriedenskreisが人を探していた。その時自分はハンブルグにいて同じ様なことをしていて、ま、タイミングがあったということだね。


《あまり見ませんが、、どういった働き方を?》

ここで自分は一週間のうちに24時間働くという契約をしている。自分はハレ近郊のライプチッヒにパートナーと三歳の子どもと住んでいて、そのパートナーとどうやって子どもを育てようか考えた結論で、自分は家で働けるようにした。


《あなたの仕事に対する動機》

自分の人生、つまり自分が使用できる時間を通して何か意味のあることをしたい。そして少しでもお金を稼いで生き延びたい。笑 暴力を減らすことや政治に対するキャンペーンを行なうことはまさに自分ができる意味のあることだと思う。今やっていることの中では、つまらないミーティングや面倒なメールがあって意味のある日ばかりあるわけではないけど、結果的に自分がやっていることは意味のあるものだと思う。

自分は心理学を勉強したからテラピーをしたり、どこかの会社で助言をしたり良いお金を稼ごうと思えば稼げるのだけど、お金は自分は幸せにしないと思う。もちろんこれは自分は貧乏で苦しい生活したいというわけではないんだけどね。


《あなたにとってお金よりも大事なこと》

自分は環境問題や反ナショナリストの活動は特に社会の重要な問題だと思っていて、その問題について働きかけているということ。結果的に暴力や争いが少しでも減っていくことに貢献していることが自分にとって大事なのではと思う。

自分はもともと政治に興味はなかった。けど、そんなときに "イラク戦争や9.11" が起ったんだよね。それで政治というものに興味を持ち始めて大学でもそういう人達とコンタクトを取り始めて活動にも参加し始めたね。そういう反戦活動のバンドもしたりした。笑




《仕事を通して得た素敵な経験を教えてください》

自分は学校で先生や職員達にワークショップをしたことがあるんだ。テーマは『学校における暴力にどう対応していくか』ということ、その問題にどう仲介していくべきかということ。そのワークショップの参加者希望者はとても多かったんだ。

そして学校の先生達はそれぞれ一人でその問題と戦っていたと思うんだけど、そこに来ていた先生や職員さんは経験を語り始めて意見交換をして、みな満足していた。その時に思ったのは、自分がそういう場を提供できたことがとても参加者に意味あるものだと思ったんだ。

それは二日間のコースでかなりの仕事量だったんだけど、それでもその仕事が終わった後に、自分がやり遂げたことと作り上げたワークショップが意味あるものだと実感することができたんだ。


《心理学を学んだと最初に言いましたの卒業論文は何について?》

卒業論文は政治参加する人の動機について調べていた。最初に少し話したけど、ヴェットランド(Wendland)という北ドイツの集落のゴアレーベン(Gorleben)という所へ核のゴミが運ばれるということで反対運動があった。その運動にドイツ全土から1000人程が仕事を休み、さらに冬だというのに道に座り込んだ。その参加者の動機についてインターネットでアンケートをした。テーマは『社会問題に対する自分のモラル的判断がどう起るのか、。どうやってその考えや確信をを政治的な活動で貢献するのか』ということだった。大学中は『暴力』というテーマについてよく勉強した。暴力は最終的にまた新しい暴力や問題を生み出すということ、だね。


《心理学を学んだの?》

学校で将来のことを考えいて、自分は何がしたいのか全然分からなかったんだ。電気工学とか情報工学とか、教員になることも考えた。自分にとって学校での教育は簡単で成績も良かったんだ。でもそれは小さな学校という枠組みでしかないことに気づいた。自分は高校卒業時の大学入学資格テストを追えた後に、一年間ギャップイヤーで障害者施設で働いたんだ。それは全く違う世界だったんだけど、その時期をとおしてその考えに至った。

学校では与えられるものをやるだけで良かったんだけど社会に出ればそれは違った。それでその一年間の中でもう一度自分が何をしたいか考えた、政治学や情報学、、、、

そんな時にあるパーティーで心理学を学んでいる学生と友達になって、オープンキャンパスの日にある心理学の講義に参加したんだ。それは自分が考えていた心理学とは全く違くてとても興味だった。なにより心理学はとても様々な範囲のテーマがあることを知った。だからその時は『色んな可能性のある心理学』を学ぶと決意したんだ。

言い方を変えるなら当時は将来のことで具体的に選択するにはまだ怠けていたということかな。笑


《これからのプラン?》

これからも政治的な活動を続いていきたいし、教育にも携わっていきたい。あとライプチッヒはうるさいから静かなところに住みたいかな、野菜が育てられるくらい庭付きのアパートがいいな。


《あなたにとって幸せとは何ですか?》

お昼を買いに行く店にいる客の列が短い時 :)

真面目に言うと、、、自分でも驚くが、何かコントロールできなかったり、自分が自分自身を誘導できない時に幸せを感じる。また幸せであるからこそ、時に誰かにキスをしなければならないかな。







《終わりに変えて》

私も彼のワークショップに参加したことがある。何が差別なのか、そしてなぜ差別はいけないのか、どう対応すべきか具体的な方法も教えてもらった。ムキになって怒るよりも、相手に差別がどんな意味を持つのかを考えさせるというのもオモシロい所。差別に対する平和的な抵抗とでもいおうか。

今自分のいるハレでは今まで自分が感じてきた以上、日常に差別はある。それは自分がここの言葉や文化が分かればわかる程、見え方も変わる。もちろん日本にいた頃よりも差別に敏感なるのは自分が大多数ではなくなるからなのだが。

とどのつまり自分も日本人だからということを利用したり鼻高々になることは無い。一人の人間として他に寛容で、さらに興味深い人間であり得られるかというのが大事なところ。

差別をどう防ぐためには何が一番の薬かというと、自分とは違う文化から来た人や他の国の人と友達になることだと思う。どんな文化だって素敵なものはあるし、どんな人も自分と同じ人間だからね。

『常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクション』

そうアインシュタインも言った様に、自分も常に新しい考えや生き方に寛容で、常識を疑い偏見を持って人を判断しないことが一番なのではないだろうか。新しく出会う人をポジティブでもネガティブでもなく、一人の人間として接しそれを通してお互いの違いを尊重し楽しめる社会になってほしいと思います。そういうことを私は彼のワークショップで学んだ訳です。

と、いうことでなんとか実習先のインタビューマラソン19人走りきりました。



この三十路インタビューについて→https://note.mu/kosokosolife/n/n6d359d08e7e0

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?