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USELESS MEMORANDUM Christian Dior Monsieur④「日本編」

Christian Diorと日本の関わりは
1953年に遡ります。
切っ掛けは紡績メーカー鐘紡の絹織物に
Christian Dior本人が興味を持った事でした。

この年
鐘紡、大丸、文化服装学院がそれぞれ主催となり
立て続けにChristian Diorのファッションショーが日本で開催されます。

文化服装学院はフランスから
モデル7名を含む12名を招聘し
本場の製品(83点)を披露しますが
大丸は上田安子、鐘紡は田中千代
共にパリで服作りを学んだデザイナーに
型紙の買い付けを依頼し
自社で製作を行いました。
このショーは大きな評判となり
Diorと日本を結びつける転機となりました。

Christian Dior 1953AW Vivante collection

文化服装学院が行った
Christian Diorのショーでは
当時の鑑賞者の証言からVivante collectionが
披露されたと考えられます。

さて
鐘紡が切っ掛けで日本に興味を持った
Christian Diorですが
ビジネスパートナーに選ばれたのは大丸でした。

何故なら当時の日本は全体的に洋裁技術が未熟で
Christian Dior側が望む品質を具現化出来るのが
高級衣料を扱い、生地を選びながら製作する手法を採っていた百貨店が適切だと判断されたからです。

しかし
1964年、Christian Diorはついに鐘紡と
「ライセンス」契約を結びます。
この契約について後年
Christian Diorの社長Jacques Rouëtは
「台頭している既製服市場への対応は必至であり、百貨店一社(大丸)との 展開では限界があると感じていた」と述べています。
この契約はChristian Diorとしても一企業を主軸にライセンス事業を行う初めての試みでした。

そしてこのライセンス事業における
一社との密接なパートナーシップは
後のアメリカ市場での
Warnaco社との関係の雛形となりました。

この事業のフォーマットを要約すると
①一社(鐘紡)をメインライセンシーとして
製品を生産。
②上記の一社では賄えない製品は他企業に
サブライセンスを与え生産。
③フランス本社の主導で日本事務所を介し
本国製品を展開する輸入代理店制度。
となります。

そして1974年
日本でもChristian Dior Monsieurがスタートします。
1975年のオイルショック以降
国内の売上伸び率は鈍化していましたが
それでも
1979年にはカネボウディオールムッシュへの
増資を決定しています。

此処からは実際の服の話題。
2大主要市場だった
日本とアメリカですが
同じブランド名のライセンス品でありながら
素材やデザインにかなり違いを感じます。

ざっくりした違いを述べると
日本製は
重衣料やセーターに
カシミヤやシルク、モヘヤ、アルパカete
紡績メーカーの鐘紡らしく
実に多様な素材を使用し
高級感を意識し凝った意匠も見受けられます。
一方アメリカ製は化繊を採用した物も多く
(防皺のシャツやアクリルのセーターなど)
ベーシックで実用的なデザインが
如何にも合理性を重視した国らしいです。

ただ日本製Diorは
国民性なのか作りが堅実過ぎて
工業製品的な印象を受けてしまいます。
(完全に個人の感想です)
例えばブランドタグだけ見ても

フランス製
アメリカ製
日本製

…お分かり頂けるでしょうか。
これは別にこのブランドに限らずなのですが…
タグにしても
縁の刺繍のパターンが違う事以上に
無駄に力が入り過ぎているというか…
素材やデザインは頑張ってると思うんですが
そこ「だけ」に固執し過ぎて
大局を見逃しているというか
如何にも「日本の会社が作りました」感が
強いんですよね…

…好みの問題だと思いますが
私はヨーロッパ製やアメリカ製の方が惹かれます。
でもこの日本製は
作りも良いですよ!(フォロー)

前述のChristian Dior社長Jacques Rouëtも「鐘紡との取り組みは大成功」「鐘紡は我が社の姿勢を理解した良きパートナー」と公言し評価しています。(フォロー)

しかし
某カシミヤを着た狼もとい
フランス本社の意向で
1997年に鐘紡とDiorの
長きに渡る関係に終止符が打たれます。

当時日本でのChristian Diorの売上は380億円
全世界におけるDiorの権利使用料の
実に38%を占めていたそうです。
(『繊研新聞』 2014年5月26日3面)

その後鐘紡は2005年に倒産します。
多額の粉飾決算が原因との事なので
前述のDiorショックとは
異なる背景によるものだそうですよ。

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