参拝大戦争

神社に入ると、二礼二拍一礼に失敗したアメリカ人が爆発していた。
「生半可な覚悟で来るからだ」
裕太が厳しい目で呟いた。私が、流石に殺すのはやりすぎだよ、と言うと「甘い」と裕太は言った。
裕太の家はお寺だ。去年、外国人の一団に枯山水を荒らされてから、裕太は修羅と化していた。
ふと気が付けば、鳥居の前で礼をするのを忘れたカップルが、神主の44マグナム弾で銃撃された。
大晦日の神社は戦場だ。あちこちで参拝マナー違反者が死んでいく。
「今年も大勢の死人が出るな」
見事な二礼二拍一礼を決めた裕太は、お守りを買いに歩き出す。
裕太の参拝マナーは完璧だ。私も裕太の真似をして、この神社から生還するのに全神経を傾ける。
「なあ、遥。ここから出たらお前に言いたいことが…」
その時、裕太の足元が爆発した。裕太は油断して、白い石の敷かれたエリアに片足を突っ込んでいたのだ。
「裕太アアアアア!!!」
その時から、私の復讐が始まったのだ。

【続く】

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