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人間もどきなスライマーガール 2-2

「メインサーバーに侵入されたんだって?」
赤スーツの男が言った。
大きなマボカニー机を挟んで、暗殺者を静かに見ている。
暗殺者の黒いスーツの胸には、魔術師の杖を模したステッキ製薬の社員バッジ。
「はっ、会長。12件の機密情報を抜き取られました。ですが、犯人は既に突き止めてあります」
暗殺者は懐から一枚の写真を取り出し、赤スーツの男に差し出した。
ドーナツを食べながら中指を立てるコセン・ニンジャと、チキンを頬張るもどきの写真だ。
会長は考え込むように顎を撫でる。
「つまり、ここもバレたってことだよね」
暗殺者はびくりと身体を震わせる。
「は、はい。ですが私が命に代えてでも、奴らを…」
「そんなのより、もっといいのがあるじゃないか。ほら、最近仕入れたアレ」
「ですが、アレは試験段階です。まだ対人実験もしてません
「いいじゃないか。先に対生物兵器実験をしよう。量産化するか悩んでいたしね」
赤スーツの男は楽しげに言うと、机の上の内線電話を手に取った。

しばらくして、白衣の女性が滑車付きの檻を押しながら部屋に入ってきた。
赤縁のメガネをかけた冷たい印象の女性だ。檻に入っているのは、病人のように体中に細いチューブを何本も繋がれた男。
ガスマスクで顔を覆っているが、首から下はパンツ一枚の格好で、隆起した筋肉を外気に晒している。
「それで、彼が例の強姦魔かな?レイナ君?」
赤スーツの男が聞くと、レイナはメガネを指で押し上げた。
「上原ドーマ。24人の女学生を強姦及び殺害。先日、死刑判決が下された所を回収いたしました」
「ふぉおおおおお!!!ふおっ!ふおっ!」
強姦魔が応えるように野太い吐息を吐き出す。
「いいねえ!24人!いいじゃないか!24人!ビッグスコアだ!」
会長は両手を揉みながら、最新ゲーム機を初めて見た少年の声を上げる。
「で、ですが会長」
暗殺者が口を挟む。
「あまりに危険すぎます。こんな男は早急に処分すべきです」
「君ぃ。聞いてなかったのかい?24人だよ?」
「だから危険だと…」
「あと1人で25人!キリがいいじゃないか!キリが良いのは気分がいい!こんな中途半端な記録で満足されるより、僕らは最大限の成果を上げるための手助けをするべきだろう?このメジャーリーガーに対して!」
会長は鼻息を荒くしながら言いきると、見開いた目をレイナに対して向けた。
「やれ!」
「わかりました」
レイナが檻に取り付けられたボンベのスイッチを入れると、薬品がチューブをピンク色に染めながら強姦魔に流れ込んでいく。
「ふぉっ!ふぉっ!ふぉおおおおおおおおお!!!」
苦痛とも歓喜とも取れる叫び声をあげながら、その体内で別の生物が蠢いているかのように強姦魔の身体が膨張して波打つ。
その冒涜的な肉体改造を経て生まれつつある生物兵器に、会長はにっこりと笑いながら視線を投げかけていた。
純粋な、期待に満ちた視線を。

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