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各国の医療制度モデル

なぜ各国の医療制度モデルを学ぶのか

新型コロナ感染症への対応(新型コロナ感染症対応病床数、給付金の配布、新型コロナワクチン接種やマスク配布の仕組み等)について、海外の事例が取り上げられ日本と比較されることがあるが、各国の医療制度やICT環境等の前提を知った上で比較する必要があると思ったため、調べてみた。前提を知った上で比較しないと、メディアの情報に踊らされるだけになってしまう気がする。

医療制度やICT環境って国ごとに違うのに案外知らない。日本の医療を知る上でも他国との比較の視点は有益かと考えた。第一弾は各国の医療制度モデル。

各国の医療制度モデルは3分類(国営モデル、社会保険モデル、民間保険モデル)が基本

各国の医療制度は医療財源(お金がどこから出ているか)から、国営モデル、社会保険モデル、民間保険モデルの大きく3つに分類される。

20210518_医療財源から見た各国の医療制度モデル

国営モデル(The Beveridge Model):
財源が国の税金で、医療機関の運営も国がやっちゃうよというモデル。医療サービスが税金で賄われるため、全国民が国の医療サービスを受けることができる。しかし、財源が税であるため医療費が制約される。つまり、医療機関、医療機器メーカー、製薬会社等のサービス提供者側からすると、質が良い医療サービス・薬・医療機器を提供しても、それに見合った報酬を得られない可能性があるところが課題。
 (例)英国、デンマーク、フィンランド、スウェーデン

社会保険モデル(The Bismarck Model):
財源は国民が加入する医療保険(基本的に全国民が医療保険に加入する)。財源が企業健保等の保険者負担になるので、医療コストを抑えられる。また、医療機関の運営は国営に限らず民間も行う。財政負担と運営コストを下げられる点がこのモデルのメリット。
 (例)ドイツ、オランダ、日本

社会保険モデルには、国の中に保険者が一つしかない国民健康保険モデル(National Health Insurance Model)が含まれる。ま〜、国に一つの保険となるとほぼ国が保険者を運営すると思うので、実質税金を財源として、医療機関の運営は民間にまかせるモデル。保険者にガバナンスを効かせられながら財政負担と運営コストを下げられる点がこのモデルのメリットなのだろうか。国営モデルと社会保険モデルのいいとこ取りのように思えるがここのメリットはもう少し調べないとわからないな。
 (例)韓国、台湾、カナダ、エストニア

民間保険モデル(Private Insurance Model):
財源は民間の医療保険。つまり基本的に患者は自己負担。患者は、お金があればどの医療機関にかかることもできるが、お金がないと民間保険に入ることもできず、病気になっても医療機関にかかれない状況になる。オバマケアはこの無保険者の課題に対して、無保険者を全員民間保険に加入させようとした改革だったけどそれについてはまた別の記事で書きます。
 (例)米国

その他(積立てモデル):
強制加入で医療費を積立てるシンガポールのような積立てモデルもある

三つの分類から見えてくること

医療制度を上記3つに分類するメリットはなんだろう。

医療制度を分類して見えてくるのは、新型コロナのような医療的な緊急事態時に、医療制度の観点から、医療機関に対して政府のコントロールを効かせやすい構成になっているかある程度わかることかもしれない。

国営でない民間の医療機関に対して、国が強制的に新型コロナ患者を受け入れさせるのは難しいと思うし、財源が国でなく医療保険となっている場合は国営モデルに比べて、医療について国民の民意を反映するプロセスは複雑になる。医療政策を決めるにあたり保険者の意向も無視することができないから。

医療機関に対する政府のガバナンスの状況は実際はどうなのだろうか。医療制度上だけでなくて、実際に各国で緊急事態時に政府の対応が機能したかどうかは各国個別の事例をみてみないとわからなそうだ。

【参考】
知野哲朗.医療制度の類型化と分析フレームワーク(full- fext)東京学芸大学紀要.人文社会科学系.II, 63:251-6.2012.東京学芸大学学術情報委員会. 

Global Pre-Meds, Health Care Systems: Differences Around the Globe(February 22, 2014)


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