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企業法務やるなら持っておきたい定番の契約書解説本7選


みなさんこんにちは、弁護士の岩崎です。

(自己紹介)
いわゆる「四大」の一つである「森・濱田松本法律事務所」から「かなめ総合法律事務所」という事務所に移籍し、現在は主にスタートアップの支援をしています。
弁護士業のほかに、Lawyer's INFO やLL.M. INFOなどのウェブサイトも運営しています。
このnoteマガジンでは、弁護士のキャリアや契約書、オススメの法律書などについて発信しています。


今回のテーマは、「企業法務やるなら持っておきたい定番の契約書解説本7選」です。
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企業法務のメイン業務の一つは間違いなく契約書の作成・レビューですが、意外と契約書関係の定番本についてまとめられた記事は見かけないので、僕が実際に業務でよく使っている書籍をご紹介します。

ちなみに、以前に企業法務全般に関するオススメ書籍についてもまとめているので、良かったらこちらもご参照ください。

ちなみにのちなみに、以前弁護士ラジオでも同じテーマで話しているので、音声の方が良いという方はこちらからどうぞ


① 阿部・井窪・片山法律事務所「契約書作成の実務と書式(第2版)」


1冊目はこちら。
もはや僕がオススメするまでもないくらい定番の本ですが、とにかく実務家からの評価が高く、契約書を扱う弁護士ならほとんど持ってるんじゃないかという位の本です。
「契約書の本を1冊しか買えないとしたら、まずこの本だろうな」というくらいの定番本で、内容も素晴らしいので、大変オススメです。
会社法でいうところの江頭本のような立ち位置の本。まず最初の一冊として持っておきたい本という感じです。

大分マニアックですが、「この本のどこが素晴らしいか」について10分以上にわたって語ったこともあるので、興味がある方はこちらもどうぞ。


② 愛知県弁護士会「新民法改正対応『契約審査手続マニュアル』」

どんなジャンルでもそうですが、契約書の解説本 も1冊で済ませることは不可能です。
契約にはいろんな類型がありますし、そもそも、契約書に慣れるためには、たくさん事例を見て、「何が重要で何がそこまで重要じゃないのか」というイメージをつかむことが必要になります。
なので、1冊の解説本だけで契約書の全体像を掴むことはできません。

僕自身も、初めての類型の契約書をレビューするときには、何冊か解説本や雛形を見て、
「これはどの本にも載ってるから重要なポイントなんだな」とか、
「ここはこっちでは結構ちゃんと書かれてるけど、こっちの本では書かれてないから必須というわけでもなさそうだな」とか
といった形でイメージを掴んでいきます。

そういう意味で、阿部・井窪・片山の本以外の本を参照したくなったときには、この「契約審査手続きマニュアル」をよく使っています。

契約書の雛形も解説も割とシンプルで読みやすいところが気に入っています。

阿部・井窪・片山の本は、結構詳しくて、「ここまで書かなくてもいいんだけどな」みたいな時もあるので、そういう時は、「契約書審査手続きマニュアル」を見てシンプルな言い回しを参考にしたりしています。


③ TMI総合法律事務所「業務委託契約書作成のポイント」

こちらも本当におすすめできる本です。
阿部・井窪・片山の本は、非常に良い本なんですが、業務委託契約書のところだけちょっと記載が浅いんですよね。
業務委託契約をちゃんと解説しようと思ったらすごく長くなっちゃうのでやむを得ないんですけど、やっぱり業務委託契約については、それに絞った解説本を参照した方が良いと思います。

その点、この本は非常に詳しいので、僕が業務委託契約見るときは大体この本を参考にしてます。

この本の何が良いかというと、条項例がすごく豊富なんですよ。
他の本だと、いろんなパターンの業務委託契約書を扱っていて、それぞれの契約書自体はそんなに詳細じゃないというものも多いんですが、この本は、契約書の類型を絞って、その分一つの契約書をかなり詳細に解説しています。

実務家として一番欲しいのは「こういう時ってどういう記載をすればいいんだっけ?」に答えられる具体的な条項例なんですが、この本はまさに具体的な条項例が豊富に載っているので、手元に一冊あると大変重宝します。

ちなみに、民法改正についても結構紙面を割いて解説されているので、その点も参考になります。

④ 長瀬佑志ほか「現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方」

この本のメインターゲットは法務部員なので、弁護士業界ではそこまでメジャーじゃないかもしれませんが、個人的にはかなりオススメです。

何が良いかというと、各契約書の雛形がWordでダウンロードできるところです。

これまでのオススメ本はどれも大変分かり易くて良い本ですが、Wordをダウンロードすることはできないので、本の内容を使おうと思ったら自分で打ち込まないといけません。
その点、この本はすべての雛形をWordでダウンロードできるので非常に便利です。

雛形もシンプルで使いやすいものが多く、「これをベースにして自分なりの雛形を作る」といった使い方でもかなり重宝すると思います。


⑤ TMI総合法律事務所「契約類型別債権法改正に伴う契約書レビューの実務」

①~④までの本は、いずれも民法改正に対応していますが、やはりメインで扱っている訳ではないので、そこまで詳細な解説はありません。
というわけで、民法改正に特化した契約書解説本でいうと、この本がオススメです。

契約書の類型ごとに「債権法改正がどう影響するのか」を解説している本なんですが、今の時期だと、「先方から送られてきた契約書が債権法改正に対応していない!」みたいなこともよくあるので、そういう時に、「この類型の契約書だと債権法改正でどういう修正が必要になるんだっけ?」というのをチェックするのに重宝します。

⑥ TMI総合法律事務所「シチュエーション別 提携契約の実務」

企業法務では
「業務提携することになったので契約書作ってください!」
といった依頼はよくありますが、実は一口に「業務提携」といっても、その内容はケースバイケースで、提携の内容ごとに作るべき契約書も変わってきます。

この本は、
・販売提携
・技術提携
・生産提携
・資本提携
など、様々なパターンの提携契約の雛形が載っていて、解説も詳しいので、提携契約を作る際に最初に手に取る本としてオススメできます。


⑦ 西村あさひ法律事務所「秘密保持契約の実務」

これも皆さんご存知かもしれないですが、秘密保持契約、いわゆるNDAの解説本の定番です。NDA単体で1冊の本にするというかなり珍しい本です。

NDAは、実は一番レビューする機会が多い契約書ですが、じっくり検討している時間がない場合も多いので、意外となんとなくでコメントしてしまっている人も多いんじゃないでしょうか?

この本は、NDAに絞ってかなり詳細に解説しているので、一度この本でしっかり学んでおくと、以後NDAのレビューを自信を持って素早くできるようになると思うのでオススメです。


以後、マガジン購読者用のおまけです。

おまけ1:僕が購入したけどあまり使っていない本とその理由
おまけ2:契約書以外のオススメ書籍等について40冊分くらいまとめたスプレッドシートへのアクセス権限


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