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企業法務やるなら最初に揃えておきたい本10選

こんにちは、弁護士の岩崎です。

以前、こんなツイートをしたらそこそこ反響をいただいたので、一応noteにもまとめておきます。

オススメの本はめちゃめちゃたくさんあるのでこのnoteだけでは紹介しきれませんが、今回は、企業法務をやるならまず最初に押さえておきたい本を10冊紹介します。


その1&2:宮下先生の逆引きシリーズ

この逆引きシリーズ、「逆引きビジネス法務ハンドブック」は、企業法務をやるうえで重要なポイントが網羅的にカバーされているし、「M&A契約書式編」は、M&Aに付随する契約書について実務的な視点も踏まえて解説されています。

なので、本の内容自体も素晴らしいんですが、何より凄いのは、著者である宮下先生がYoutubeでこの逆引きシリーズの解説セミナーを無料で公開していることです。

これ、マジで凄いんで一回聞いてみてください。

逆引きシリーズを片手に宮下先生のセミナーを聞けば、それだけで企業法務をやるうえでの基礎体力を養えます。

四大などの企業法務系事務所に入る予定の修習生から、
「事務所に入る前に企業法務実務を学ぶには何やったらいいですかね?」
と聞かれたら、迷わず
「宮下先生の逆引きシリーズを買ってYoutubeのセミナーを聞くのがベストだと思います!」
とアドバイスしてます。

もし本当に修習中に宮下先生のセミナーを聞くことができれば、めっちゃできる新人になれること間違いなしです。

他の有料コンテンツ(もちろん僕のnoteも含みます)に手を出す前に、まず最初にこの本を買って、Youtubeでセミナーを聞いてください。

僕のように有料noteをやってる人にとっては、正直こんな優良コンテンツが無料で公開されたら商売あがったりですが、それでも、良いものは良いのです。騙されたと思ってどうぞ。

<追記>
民法改正や個人情報保護法の改正に対応した第2版が出ています。
それに伴ってYoutubeの解説も拡充されているので、ますますオススメです。

その3 新・労働法実務ハンドブック

企業法務をやるうえで、労働法に関する相談は避けては通れません。
ただ、意外と「労働法」という題名の分厚い基本書を読んでも実際の相談に答えるのは難しいものです。

・SNSで自社について不適切な投稿をした内定者の内定取り消しは可能か
・Eメールで退職届が提出されたが、 これを受理しなければならないか
・社員がインターネットに自社への風評や不満を載せている場合、 どのように対処すべきか
・勤務時間内のインターネットの私的利用に対し、懲戒処分はどの程度まで可能か

など、実際に質問される事項は、意外と基本書では取り上げられていないことも多いです。
この本は、このような超具体的な質問300個と、それに対する回答・解説が載っているので、企業法務実務家は一冊手元に置いておく良いと思います。正直、この本があれば大概の労働法の質問には対応できてしまうんじゃないかというレベルの良書です。

私が持っている本の中で、参照頻度No1です。


その4 株式会社法

私が紹介するまでもないと思いますが、実務家のシェア圧倒的No1、実務家であれば必ず手元においておきたい一冊です。

最近では、田中亘先生の会社法という良書も出ていますが、だからといって江頭会社法の重要性はまったく変わっていません。今でも圧倒的シェアNo1です。

会社法のリサーチをする場合は、まずこの本とコンメンタールを読んで当たりを付けます(そして、実務で出てくる会社法の論点の大半は、この本とコンメンタールで解決します)。

逆に、この本やコンメンタールに言及していないと、上司や先輩から
・江頭先生はなんて言ってるの?
・コンメンタールにはなんて書いてあるの?
と言われること間違いなしです。

そういうレベルの本です。


その5 「会社法」法令集

企業法務において、なんだかんだ一番参照頻度の高い法令は会社法ですが、会社法には、施行規則や計算規則など、さまざまな関連法令があって、そこまでみないと分からない事項(例えば、株主総会議事録に必要な記載事項は、施行規則72条を見ないと分かりません。)が多いので、関係法令がまとまっている本があると便利です。

この本の他にも、規則等が織り込まれている「織込版 会社法関係法令全条文」などの条文集もあるんですが、
・掲載法令が多い
・条文のあとについてるポイント解説がGood
・織り込まれているかどうかは実はあまり重要じゃない
という点で、僕は断然「会社法」法令集をオススメします。


その6 良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方

最近では、IT系企業だけじゃなく、どんな会社でも自社サイトやウェブサービスを持つのが当たり前になってきました。

そして、ウェブサービスを作る際には、
 ①利用規約
 ②プライバシーポリシー
 ③特定商取引法上の表示
いわゆる「3点セット」を作らなければならない(ことが多い)んですが、この本は、その「3点セット」を作るうえでの注意点やひな型まで提供してくれる良書です。

例えば、
『利用規約に「本サービスに起因してユーザーに生じた損害について、当社は一切責任を負いません。」みたいな条項が入ってたら、消費者契約法によって無効になっちゃう可能性があるよ。』
といった注意点を分かりやすく解説してくれれます。

意外とウェブサービス(利用規約)に特化した本は少ないので、企業法務やるならいつかこの本が必要になる時が来ると思います。


その7 著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本

労働法と同様、知的財産権に関する問題も企業法務をやっていると必ず生じます。

一方で、知財については分かりやすい定番の本がないという状況だったんですが、この本は、クリエイター向けの本ではあるものの、著作権が問題になる具体的な事例について解説されているので、実務家にとっても、最初の一冊として有用だと思います。

・街並みなどで無関係の人が映り込んだ写真は使えないの?
・東京スカイツリーなどの写真を利用する際は許可が必要?
・キャッチコピーには著作権がないから拝借しても良い?

など、まさに「実際に質問されそう」な事項について解説されています。


その8 契約書作成の実務と書式--企業実務家視点の雛形とその解説

企業法務の仕事で圧倒的に多いのは契約書のチェックや作成ですが、契約書の解説本で一番実務家から信頼されている本がこちらです。

多くの実務家に信頼されているだけあって、やっぱり解説が丁寧で、かゆいところに手が届く本になってます。
民法改正にも対応済みなので、契約書に関してとりあえず一冊欲しいという人は、この本を買っておけば間違いないです。

ただ、一冊で色々な契約類型を網羅するというこの本の特性上、(実務上一番よく使う)業務委託契約についてはやや記載が薄いので、業務委託契約については、TMI総合法律事務所の「業務委託契約契約書作成のポイント」とかも合わせて参照すると良いかもしれません。

また、契約書を作る際にはひな型があった方が便利なので、ひな形を手に入れたい人には、「ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方」という本もオススメです。割とシンプルで使い易いひな形をWordでダウンロードできます。


その9 「会社法」書式集

その8と同じ阿部・井窪・片山法律事務所の本ですが、こちらも素晴らしい本です。

実務をやっていると、取締役会議事録や株主総会議事録などの議事録類や、ちょっとした同意書、通知書など、様々な書類を作成する場面があります。

短くてすぐ作れそうに見える書類であっても、実は条文で記載事項が定められていたりして、意外と一から作ると時間がかかるものです。

この本は、
・株主総会(取締役会)の招集・開催
・株式譲渡
・新株発行
・新株予約権の発行
・M&A
など、類型ごとの手続きについて、必要な書式がまとまっていて大変大変重宝します。
*意外と、上場会社以外も使える株主総会招集通知とか、税制適格ストックオプションの発行要項とか、書式って出回ってないんですよ。

もちろん、各書式について法的な解説もついているんですが、簡潔なんだけど実務家的に気になることが書いてあって、まさに実務書という感じがします。


その10 新版 会社法実務スケジュール

会社が一定の行為をするためには、株主総会、取締役会、債権者保護手続きなど、様々な手続きが会社法で定められており、そのすべてを条文のみから導き出すのは至難のわざです。

というわけで、あらゆるリサーチよりも時に時間がかかるのが
「●●の手続きについてスケジュール引いといて」
というリクエストなんですが、そんな時にはこの本がオススメです(注:Amazonだとプレミアム価格になっているので書店で買ってください)。

・株主総会(取締役会)の開催
・自己株式の取得
・新株(新株予約権)の発行
・合併、株式交換

など、実務上頻出する各行為について、必要な手続きとスケジュールを教えてくれます。

「執筆めちゃくちゃ大変だっただろうな」と読んでいて分かるので、個人的に、執筆者にお礼を言いたい本ランキング第1位です。


<その他のオススメ書籍に関する記事>


良い本は広くオススメしたいので、公開noteにしましたが、それだとマガジンを購読してくださっている方に申し訳ないので、以下では、マガジン購読者限定で、上記に載せられなかったオススメ書籍についてスプレッドシートにまとめたものを共有します。

現状、
・契約書
・英文契約書
・M&A
・スタートアップ
の4類型、30冊程度について、オススメ度を一言コメント付きでまとめています。
今後も良い本がでたら随時更新していきます。

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