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ちゃんぽん 【呑みはじめ】

鉄は熱いうちに打て。感想は早いうちに書け。普段はそう思ってるんですが、プライベートが忙しくて全然早くない。そして、オタクの語彙力がまるで戻ってこない!あまりに良すぎた「呑みはじめ」でした。
7月10日に千穐楽を迎えた、
ちゃんぽん 旗揚げ公演「呑みはじめ」
感想をつらつらと書いていこうと思います。
ネタバレです。ダメな人は回れ右。
大好きなかちょさん、加藤靖久さんが二人芝居をやる。結構狭いところでやる。相手役はこれまた大好きな垣雅之さん。行くしかない!本当は全通したかったんですが、義母の病院付き添いで叶わず。でも可能な限りいっぱい観た!
二人芝居3本立てでした。
「つかれた」佐河ゆい・shao
「モラトリアム四十路」井上ほたてひも・横尾下下
「午前8時、ちょうどに」加藤靖久・垣雅之
会場はGyoen Rosso スタジオサンモールお隣のBarです。お酒を呑みながら観て良い演劇。(飲む時以外はマスク着用、私語は控えて。感染症対策はしっかり。)
前説ははぶ談義にじゅうでお馴染み玉置村淳二さん、こと雅憐さん。前説のしめくくりはいつも「心地よい悪酔いをあなたに」
徹頭徹尾、酒が好き!!
当然です。ちゃんぽん結成の地は新宿ゴールデン街にある老舗「あるぱか」初代店長、青木照男さんから穂科さんに引き継がれ40年以上続く居心地良い酒場です。酒と演劇と本が好きなら一度は行こう「あるぱか」。大好きなので宣伝してしまった。
女帝担当、穂科エミさんの脚本は観たら1杯欲しくなる。そんな物語。

「つかれた」


佐河ゆいさん演じる元アイドル ニイナ。
鏡の前で上機嫌なshaoさん演じる伝説の地下アイドル 篠原ゆうこ(故人)。
今日はニイナのソロ歌手デビューライブイベント、ここはその楽屋。
「つかれてるねー」
「えっ…つかれてます?」
「うん、だいぶ」
疲れたのか、はたまた憑かれたのか。
「なんで見えちゃったんだ!アタシ!お願い!憑かないで!」
「また憑いてないよ?」
「それってこれから憑く気ってことですよね?!」
幽霊とはいえ女同士。話を聞いて理解してあげれば成仏するんじゃない?と話してみれば、そこはよくあるマウント合戦。怖い。心霊的な意味じゃなくて女は怖い。ニイナはゆうこを知っていた。人気絶頂で自死した地下アイドルとして。
「売れないと思ってたの!でも…うれたんだよねぇー!」
「あーはい(#`皿´)」
「彼氏とも別れちゃってー」
「ハァ?!彼氏?!!(゜〇゜;)」
「え?いないの?嘘でしょーー!…ホントにいないの?」
「あいあむあいどる!!!」
「へーー。まっすぐなんだね!」
「バカにしてます?」
「ううん、むしろ尊敬してる!」
いや、地下アイドルつっよ。
「でも、もうアタシ、アイドルじゃないんで…歌手、なんで(* ̄― ̄)。」
逆襲マウントしてみてもビクともしない、超ブラック事務所に所属する地下アイドルの鋼メンタル。
「そっかー。そーよねーアイドルなんて、なるもんじゃないよねーー!」
「(゜Д゜)」
コミカルに死因が実は自殺ではなく事故だったと語るゆうこ。事情を聞いても成仏する気配はない。さらに成仏するために、ステージで一緒に歌わせて!というゆうこにそれまでの怯えと建前をかなぐり捨てて断固拒否するニイナ。その態度に同じく本気で
「本当はステージが怖いくせに」
「知ってるよ。不安なんでしょ」
とニイナの不安を容赦なく暴くゆうこ。
図星を刺されてボロボロ泣きながらニイナはゆうこを責める。お互い本音でぶつかって初めてゆうこはニイナに本気で謝った。そして励ます。
「ごめんね。私何もしてないよね。いつでもそこから出て行けたでしょう?がんばってね。いってらっしゃい。」
行こうとして立ちすくみ、号泣するニイナ。
ゆうこの言うとおり、ニイナも確かにギリギリまで追い詰められていた。
慰めるでもなく自分は何故まだここにいるのだろう、何故成仏出来ないのだろうね?語りかけるゆうこ。人は忘れられたら本当に死ぬ。皆すぐ私を忘れたのになぜ私はここにいるのだろう。忘れられるのはこんなに怖い。ゆうこの本心だった。その言葉はニイナに届いた。ぐずりながら「目標にしてたアイドルは誰?」と問いかけるニイナ。
「…あやや。」
「…あやや?」
「うん」
「…私もなんだけど!」
「えっ…嘘でしょそんなことある!?」
二人はさっきまでの険悪さが嘘のように大好きなあややを語り合い、親友のようにハグする。
「あっ」
「…ごめん!冷たかったよね」
「…ちょっと、ね」
「嘘」
微笑みあって、ゆうこが言う。
「私のこと覚えててくれてありがとう。もう、忘れていいよ。」
ニイナはゆうこをステージに誘う。
「もう、つかれちゃった」
「まだつかれちゃダメでしょ」
「ゆうこちゃんがそれ言うかな…一人じゃ怖いの」
手を繋いで、二人はステージに立つ。歌い終えた時にはゆうこは居なかった。

ここには「女」の関係性が集約されている。初手、二手、三手、お愛想、同情、意地、本音ちら見せ、爆発、慈愛、ハイテンション、本音、友情。
女の間には色々あんのよ。可愛くふるまった直後にガラが悪くなるのも当たり前。身に覚えがありすぎる。あーやられたやられた。やったやった。あるある!のオンパレード。「俺の知ってる女はそんな二面性持ってない」とか思う人が居たとしたら、君は「その女」のどこを見てるんだと頬を4、5回叩いてやりたい。リップの色が変わっただけでも、髪を切っただけでも、同じに見える微笑みの僅かな差分にすら気づくのが女。気づいてから三手先を読んで振る舞うのも女。こんなに客観的に女の会話をエンタメに落とし込んだ舞台なんて観たことない。そんじょそこらの人には書けない。演出するだけでも難しいかもしれない。
それほどまでに「つかれた」は女の良いとこも悪いとこも全部エッセンスとして凝縮して詰め込まれた穂科さんならではの作品だと思いました。書いた穂科さんは本当に天才。6回観てもれなく6回泣きました。この話大好き。
キャラクターがいい。Shaoさんの「篠原ゆうこ」。
地下アイドルの革命っ子と呼ばれた伝説の地下アイドル(三十路)。人気絶頂で楽屋に立てこもり自殺した幽霊。ド派手オレンジのアレンジ制服みたいな衣装。帽子についたロゼッタみたいな飾りと胸元のどでかいリボンが如何にもで。
「絶対やっぱり猫が好き!来世はあなたのお膝の上で甘えたいニャン(=゚ω゚=)見た目は三十路!心はオトメ!しのゆうこと篠原ゆうこ、です♪きゃ💕」
「よくそのキャッチフレーズで売れましたね?!」
「奇跡起こした系ー?」
天才か?
我々世代に「やっぱり猫がすき」と言えばあの三姉妹の深夜ドラマを想起させますし。声のトーンも喋り方も、本音トークの声の低さと柄の悪さから可愛いアイドルへのギャップのスゴさ。更にニイナと仲良くなってからの優しいお姉ちゃん。正に変幻自在。Shaoさんすげぇーー!!
大好きなのはやはり「うるせぇな!」からの「チッ」×3ですね。笑う。マジで迫力がパねえ。
そこからの「ごめんね」は毎回涙腺爆破してくるのよ。優しくてやりきれなくてせつなくて。こんなに泣きたい状況なのにゆうこはにっこり微笑む。泣けないのもアイドル故の職業病か。Shaoさんほんとすごい。
佐河ゆいさん演じるニイナは、垣さんと並べて見たい!表情筋の煩さ(褒めてます)。なんと饒舌な顔なんだ!すっごい美女なのに!メイクが痛い系で口紅はみ出した状態から始まるのに、顔がインパクトの出オチだったはずなのに、その後の顔芸がスゴすぎて最初の衝撃がかき消される。強い。プラスもマイナスも僅かな感情の揺れが余すことなくこちらに届くのが素晴らしすぎる。
全然注目されなかったアイドル。歌唱力だけはあるからってソロデビューでなんとか売ろうとする事務所。グループのネームバリューを外され、一人でやっていかなきゃいけない初日に幽霊に監禁される。それも元超売れっ子地下アイドルの幽霊に。普通にヤだろ、それ。それなのになんだかんだと会話に付き合ってしまうのは元アイドル故の職業病なのか。普段も嫌々ながらも一生懸命ファンとか業界の人に笑顔で対応してるんだろうな。そんなニイナの一番好きなところは歌に対して本気なところ。「いいじゃん!それくらい」と言われてキレるニイナちゃん、本当に好きです。
そんな二人が最後に歌う歌も良かった。「足跡」ここはもう、ニイナの表情から目が離せない。不安から花が開いていくように少しずつ笑顔になっていく。恥ずかしそうに微笑んで隣のゆうこを見て更ににこって笑う表情がなんとも言えず可愛くて。2回目以降、展開がわかっていても泣けに泣けた。細かく積み上げた女同士のぶつかり合いの果ての友情。見事なエンディング。好き。ほんと好き。
女はこんなにも怖くてしんどくて可愛い。
二人を果てしなく、エンドレスで誉めたい。
「つかれた」最高でした。

「モラトリアム四十路」


オジサン二人の可愛さよ。
20年同居した不惑の男二人の明と暗。
「ウェーイ」
「ウェーイ」
退職して一晩中ゲームしていたコウタ。夜勤明けでエビスビールを開ける上機嫌のシロウ。
シロウのノリに逆らわずに徹底的に付き合うコウタ。しかし、カーテン閉めて。ゲームマッチングしたから。とマイペースを貫くコウタ。普段はお湯を沸かして貰ったりゴミを捨てて貰ったりとコウタに雑用させてるシロウはなんだかんだコウタのマイペースに逆らえない。偉そうにする旦那とその実しっかり尻に敷いてる妻みたい。年配夫婦のようなこんな二人だから20年やってこれたんだろう。
シロウは舞台の稽古が始まるというが、自分以外皆若手。いつしかバイトの新人の親と同世代。母親はグルコサミンを送ってくる。コウタは同級生に孫が生まれたと話す。
「おじーちゃんじゃん」
「そだねー」
「「…おじーちゃんはないわー」」
おじーちゃんダメージを受ける二人。
「昔と同じ勢いでいかない方がいいよ」というコウタ。
「そんなんじゃダメだろ」というシロウ。
そして上機嫌のコウタはペヤング ギガマックスを食べよう!と主張する。お湯を沸かすコウタ。そこで気づく。夜勤明けのエビス様!ギガマックス!
「なになに?お祝いー?」
「決まったのよ!連ドラレギュラー!」
「やったな!シロウ!!」
喜びあう二人。
「そういえばシオリちゃんとはどーなったの?」
「別れたよ!」
「ちゃんと別れてないでしょ」
シロウは縛られたくないから、と彼女との同棲を断っていた。シロウは自分よりコウタのことを心配する。2年勤めてエリアマネージャーまで昇進しながら「飽きた」と辞めてしまうコウタに
「何者かになろうぜ」
と励ますシロウ。そこで初めて10回目のアパート更新はしないよ、というコウタ。婚活アプリで会った女性と結婚して実家の離れでカフェをやるという。彼女はパティシエ。コウタはバリスタの資格を持っている。コウタは飽き性だが器用でなんでもあっという間に習得する実はハイスペオジサンだった。
不満を言いつつペヤングを食べていたシロウに電話がかかってくる。目から消える光。連ドラが流れた。
まつざかとおりの兄貴の住んでるマンションの隣に住んでる夫婦の従兄弟の旦那役。
「いや、それエキストラだよね?」
「ちげーよ!役名があるんだよ!」
「としてもどうやってレギュラー出演させるつもりだったんだろうね?」
今や天国と地獄に別れた二人の道。
「出ていくの延ばさない?」
勢いよく首を横に振るコウタ。
ペヤングもぐもぐする二人。
「もたれるなぁ…」

いる。いるよ、こーゆー人。身に詰まされる年齢のハナシ。途中に話題に出てくるグルコサミンは、無職で昼間のテレビをつけたら呪いレベルでCM流れてくるし、昭和世代には未だに親や親族からの結婚プレッシャーもある。
「何者か」にならなきゃいけないと思い込まされた世代の切なさよ。ベクトルが違う方向でダメな人だった二人のうち、一人は年齢を自覚して腹をくくり、一人は未だに若さを保とうとする。もう体力的に無理なのだ、と自覚せざるを得なくなる世代の揺らぎはベクトルは逆だが思春期に似た揺らぎを生じさせる。
転換期、過渡期、そんな世代なのかもしれない。親は老いて自分も先が見えてくる。なんか笑いつつも彼らの上の世代としてはちょっと…いや、かなりわかるし痛い。
シロウの「まだまだイケるってー!」は多分本気で思ってる。俳優として体も鍛えて経験も積んできた。舞台にも連ドラにも(流れたとはいえ)声がかかるくらいには経験値もあるのでしょう。でもシロウは何者でもない。このままか、変わるか。いや本当にいつまで思春期やってるんだ。でも居るんだよな。こういう人。
コウタは今後、知り合った彼女とうまくいくのかしら?と考えて、いや、シロウとやっていけた人だから相手次第では案外上手くやるんじゃないか?とも思った。
仕事もできる。飽き性で頑固だけど優しいし、カフェのマスターはアリなのでは。その代わり、相手さんも相当マイペースじゃないと振り回されるだろうなぁ。
言動が可愛いの極み。穂科さんの演出だろうけど、二人とも絶妙に可愛い。PMC野郎ファンにはたまらなかったのではないだろうか。やわらかい扉とにじゅうでお二人は舞台と映像とで観ていたけど、本当に毎回別人でカテコの二人が素なの?別人すぎん?って毎度戸惑う。いい俳優さんなんだよなぁ。昔、黄金のコメディフェスティバルでおぼんろのさひがしさんが「多分PMC野郎が取ると思うよ」って言ってたのを思い出しました。初めてPMC野郎の名前を知ってから数年、まだ観たことはないけど観に行きたいなと思った。二人とも舞台では表情の細かいところまですごくて、おまけに息ぴったり。追いかけっこするとこのアドリブでは毎回笑ってました。わんわんからのアレでリチャード・ギアは脚本通りなんだろうか?エビスは本物なのだろうか?ペヤングは毎日どうしてたんだろうか?疑問は尽きない。

「午前8時、ちょうどに」


これについてはもう、全部好き。
終了!解散!になってて本当に語彙力が消失してました。アテ書きなの?ってくらい二人ともピッタリだった。
特に垣さん。ナチュラルボーンチンピラ。似合いすぎてて怖い。そして、リアル893かってくらい怖い。
かちょさん。Twitterでフォロワーさんが「弱かちょモード」って言ってたんですが、まさにそれ。A型の繊細なトコが自然に見えるのかなぁ。安藤さんピッタリでした。
一つ一つ書いていくと終わらないので、好きなとこ羅列。
・垣さんの衣装。ハイウエストボンタンにアロハ。オールバック。眉薄め。そして、びっくりするほど猫背。垣さんの猫背珍しくて毎回「ねこぜー!」って見てました。
・かちょさんの細フレーム丸メガネ。ヴィヴィアン・ウエストウッドのシャツに七分丈パンツ。なんていうか似合うしカッコいいし、完璧?
相変わらず、足が長い。手の指も長くてキレイ。
二人の見た目だけで小一時間は話題が尽きないオタクです。ホント、加藤さんがビジネスカジュアルのキレイカッコいい服着るとスタイル良すぎて幸せなんだよなぁ。もっと色んな服着て欲しいなあ。

脚本家・安藤の部屋。椅子には場違いなヤクザ。ヤクザは進捗を訪ねるがどうみても編集者には見えない。
深夜。漸く10行書きだした話のあらすじを伝えると「パクりっすね」と一刀両断。
「オマージュだ」「オマージュ」「オマージュ」
おもむろにヤクザは「売る」と「沈める」の説明を始める。
「右手と右足、左手と左足。口には雑巾を詰めた上に猿轡して。移動中はシャツとズボンの中にムカデを5匹ずつ入れてくすぐらせる」
(そこで安藤の脇を不意打ちして安藤がきゃっ!)
「海辺に着いたらハサミで服をすべて切り刻み全裸に。これでもかという屈強のマッチョメンズにありとあらゆる凌辱を加えられてから、本人に『売る』か『沈む』か決めて貰うッス」
いや、ヤクザくん非常に楽しそう。
売るのは内臓全般。沈むのは東京湾にコンクリートづめでドボン。鬼畜な私は希望など聞かずに内臓全般売ってから残骸をドボンでよくね?と思ったとかなんとか。
ここで毎回、安藤さんが可愛く「きゃっ」て飛び退くんですよ。フォロワーさんはそこがわざとらしく感じたらしいんですが、私はここで声を大にしていいたい。あれはああなるんだ!
……脇が弱い選手権の代表に選ばれた私だが(?)あのキモチは痛いほどわかる。キャっていっちゃうよ。わかるわかる。頼むから絶対触らんでくれエリアいず、脇。不用意に触られようもんなら叫ぶし、くすぐられたら絶対◯ろすマンになる。
まぁくすぐったいってことはムカデは絶対ヤバいってことだよなと思った上に、それはなかなかにエッチなのでは?とか考えてしまってすみませんすみません。
悪趣味だ!と言う安藤にヤクザは「うちのボス、超絶悪趣味のドSなんすよね」と笑う。
ひきつり笑いの安藤。午前8時のリミットまでに作品を書き上げれば、すぐに振込があるから利子は払える。しかしアイデアが浮かばない。締め切りを延ばしてくれるように頼むも、答えはNo、そればかりかこれでも特別扱いだという。それは安藤がボスの好みのタイプだから!?
ヤバい状況だということがここまででわかる。
ハードボイルド作品を書かなければいけないらしい。ワイルドターキーを煽って必死に考えても口に出したストーリーは悉く過去の作品にそっくり。またヤクザの吉田があれこれの作品を兎に角よく知っている。トイレに行くふりで逃げようとするも見透かされて釘を刺される。
「逃げてもいいっスよ。さっきの速攻実行するだけなんで。あ、オプション増えますけど」
すごすごと戻る安藤。
あずさ2号を口ずさむ吉田が可愛い×1億キティさん。バーボンから始まる物語はどうですか?って助け船を出すけど、そこから出てきた物語に「ゲッタウェイ」と即元ネタを突きつける。
映画は沢山みているらしい吉田。そこで安藤は上の句下の句に作品名を分けてシャッフル、吉田にこの映画のあらすじをプレゼンして!
という、日替わりヒャッホーなアドリブに入ります。やっぱ初日の「シン・アンパンマン」が神だったなぁ。まさかGの胴体と繋がるとは思わないじゃないですか。
わちゃわちゃして「楽しかったッス」って言いながら時間を読み上げる吉田。このときから少しずつ安藤に感情移入というか心を開いていくのが表情でわかる。垣さんの表情筋、マジでどうなってるの?
時間はさらに経過。焦燥感にジリジリ焙られるような安藤と文庫本に集中できない様子の吉田。
安藤は吉田に「下っ端なの?」と問いかける。
「いや、上の方っスね」からの、「舐められるんじゃない?」からのばん!!!!
は、ホントに天才すぎて大好きなんですよ。
「ひぃっ」ってなっちゃう安藤さん可哀想可愛い。
極限まで追い詰められて固まって戻ってこれないのはわかる…。さぞかし怖かったんだろうし、ここで脅されたことで吉田が口にした「その後」が冗談じゃなく現実にやられるんだと体感したんじゃないかと思う。だからこそギリギリまで足掻いて足掻いてなんとかしようとするし、それでも緊張と恐怖で空回りして、というのが加藤さんの指を噛んだり頭をかきむしったりする動作からビシビシつたわってくる。
でも、真面目であればある程コミカルに見えるのもまた演劇マジック。ここで吉田を下に見ていた安藤の視点が完全に逆転して、別世界で成功している人物として認識しはじめる。若く頭が良く機転が効き、それなりに組織でも認められている。安藤が得られなかったものを持っている人物。呼びかけも敬称になるし、自分を省みて自信を完全に失ったように見えた。
吉田も話すうちに安藤と打ち解けてくるのごひしひしと伝わる。時計を読み上げる表情に陰りが見える。この時間が終わってほしくないような雰囲気。
暗転から明転すると吉田がストレッチをしており、安藤が固まった状態からゆっくりと画面を閉じる。
「午前8時に始める習慣を変えることで人生が変わるという学説がある。知ってる?」
問いかけた時には二人とも、もう絶対にリミットには間に合わないことがわかっている。
変えられるとしたらどんな人生をおくりたい?
という問いに
「今の生活から抜け出したい」
という吉田。夜の最初には「どうにもならない」と言い開き直っていた吉田が、ここで口に出したのはもう死が確定した安藤への手向けのように本心からの言葉だと思った。
笑いながら自分が親族から存在しないことになってると話し、望んで今の位置にいるわけではないことがわかる。そこから安藤に
「安藤さんは?」
って質問をして、
「やっぱり、ハードボイルドかなぁ…!」
って絞り出すような声を聞いてから、の!
吉田の表情ですよ。
安藤の恐怖で震えながら漏らす悔恨の言葉が絶望的なのに、吉田の表情が雲が晴れるように明るくなっていくの。最大の見所だと思います。
「安藤さん、見つかりました。俺がやりたいこと」
「あ、そう、よかったね」
「沈められ、なかったら?もし回避できるとしたら?!」
「何を言ってるの?!」
「一緒に逃げましょう!」
「は?!」
「俺、最高のバディになれると思うっスよ!」
メネ・ メネ・ テケル・ ウパルシン。預言者はかくのたまえり。
そこからの安藤の起死回生と未来への希望、からの怒涛のタイトル回収。
いや、快感でした。穂科さんが神。
初日が一番好きで。振りかえって目線合わせて二人が叫んだのが見事にピッタリで。ホント涙でた。
あれはキモチ良いですよ。最高ですよ。
いや、これ言い始めるとそれしか言わなくなるんですけどね。

3本の内容も役者も違う芝居がこんなにしっくり綺麗にまとまって【呑みはじめ】という一つの公演にまとまっていることが素晴らしくて、ちゃんぽんの皆様、スタッフの皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。
キャスから始まって、1週間での100%達成、セカンドゴール達成、本番始まってからの口コミでの連日満席、千穐楽カテコの女帝の新たなる伝説と、まさに祝祭の日々でした。こんなに幸せな期間はなかった。改めてお礼申し上げます。
本当に楽しかった。ありがとうございました。

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