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【第1回高専人会交流会】交流会レポート

「高専」コミュニティが、社会課題解決のキーファクターに。代表理事 渋谷修太の覚悟と本気

“高専”の同窓会組織『高専人会』は、株式会社フラーの代表取締役でもある渋谷修太が代表を務めます。

フラーといえば、2011年に創業して以来、アプリ分析サービス「App Ape(アップエイプ)」のヒットを皮切りに急成長をみせてきた注目のスタートアップ企業。上場や世界進出への準備も進める渋谷ですが、そんな忙しい「本業」の合間を塗ってまで力を入れるのが、この高専人会です。

なぜ、そこまでして高専卒業生のコミュニティづくりにこだわるのか。記念式典当日の様子を取材すると、ある大きな野望への、覚悟と本気が垣間見えてきました。

高専出身者はどこに?参加者を見つけるところからのスタート

「本当に来てくれるのか…」
式典当日、広い会場に並ぶたくさんの椅子を見てもなお、渋谷は不安げな様子でした。

開会前にひと足早く駆けつけてくれた先輩たち
(左から)さくらインターネット 代表取締役社長・田中邦裕氏、神山まるごと高専学校長・大蔵峰樹氏、渋谷 修太、株式会社jig.jp 代表取締役社長・福野泰介氏

昨年、渋谷が参加した高専関係者のパネルディスカッションで「三田会を超えるような全国的な高専同窓会組織を創りたい」と発言したことから始まった『高専人会』。
勢いでのスタートに、渋谷はさっそく壁にぶつかることになりました。

「高専で学んだことがある人は誰でも入会できる財団法人。それは、この世にない“初めてのもの”を作ることでしたし、そもそも誰が高専卒なんだっけ、どこにいるんだっけ、と。」

昨年5月に発足してから、卒業生への声掛けや、各団体との交渉など調整の日々が続きました。
契機となったのは理事メンバーが揃ったこと。

「理事メンバーが揃って。みんな本業もあるなか手伝ってくれて。感謝してもしきれない。」

理事たちの支えがなければ式典の開催に至らなかったと、渋谷は言います。

一般財団法人高専人会設立後、理事メンバーでの初会合

式典には約500人が参加、現役生からOBOG、教職員まで集う

ついに始まった式典。
渋谷は「本当に人が来てくれた」と感慨深げ。開会後のスピーチでは、来場者にこう語りかけました。

「全国で一度でも学んだことがある人を高専人と呼ぼうと。卒業していなくても良い。全員高専人だと考えて仲良くやっていきたいと思っています。」

「設立するにあたり、僕には夢があります。どうせなら日本で一番の同窓会組織にしたい。慶応の三田会はサンフランシスコに転勤になったら、先輩から家を探す家具を探すなど色々支援してもらえるそうです。高専卒業生は数で言えば約50万人、三田会を上回る可能性がある。世界中どこへ行っても高専人同士助け合える、そういうものを作っていきたいと思っています。その先に、皆が集まることで高専の価値を押し上げることにつながるのではないかと思っております」

おもむろにジャケットを脱ぎ…
高専人会が今後果たす役目について熱く語る渋谷

高専を取り巻く課題「高専人会が解決できるのでは」
「高専人会」が発足した理由の一つに「同窓会の高齢化」がありました。高専制度が創設されてから60年以上。古い同窓会名簿の内容が更新されておらず連絡が取れないといったことや、これまで学校単位で同窓会を組織してきたためエリアを跨いだネットワークも乏しいという実情も。

発足の理由はそれだけではありません。
大学と同等の専門知識を学べる高専ですが、1校あたりの人数は平均的な大学と比べると10分の1以下とかなり小規模。それゆえに大学では一般的な「起業時の支援」が至らないというケースも多々ありました。
部活動の遠征費や海外留学時の奨学金なども、同様の理由から「充分」とは言えない状況です。

代表の渋谷は高専人会の設立で、こうした課題も解決できると考えています。

「高専は普通校でも大学でもないために、満たされていない課題があると思います。起業する時も『各大学はファンドがあるけど高専って?』となりますし。それでも実際、高専を卒業して活躍されている起業家はいるので、高専のエコシステムを作っていけたら』

プレゼンテーションを見守る渋谷の先輩達

また、日本が直面している「DX化」や「地方創生」という課題も高専が解決できる可能性を秘めていると言います。

「DXは高専生が解決できる、地方創生も。高専はキャンパスのほとんどが地方にある。DXを解決できる人材をどう活躍させるか。高専生自身がマイノリティだから自信がない。隠しているケース。それをブランド化していくことで、今隠している人がもっともっと自信を持ってもっと入りたい人が増えたらいいな。ブランド価値をあげていけたら」

卒業後の進路に“アナウンサー”や“寿司職人”も

高専の卒業後の進路は、技術者や起業家だけではありません。卒業生は様々な分野で活躍しています。
会の進行を務めたフリーアナウンサーの豊田麻衣氏は富山高専の卒業生。卒業後に地元のテレビ局でリポーターやスポーツキャスターとして活躍し、現在はフリーで活動しています。高専との関係を今も大事にしており、式典のために「富山から始発で」来たと言います。

豊田麻衣氏(富山高専)が「高専人です」と自己紹介すると会場から割れんばかりの拍手が

また、来場者に振る舞われたお寿司を握った谷口友一氏も、米子高専の卒業生です。「高専に何か恩返ししたいと思って来た」といい、持参した約200人分の太巻はすぐに完売しました。

会場裏手で仕込みをする寿司職人の谷口友一氏(米子高専)

進学したら「技術者の道に進まないといけない」と思われがちな高専。高専人会では、“技術者の道”を歩まなかった卒業生の存在も現役生に知ってもらいたいと考えています。渋谷はその理由をこう説明します。

「高専に進学したからって技術の道に進まないといけないわけではない。アナウンサーやお寿司屋さんにだってなれる。ダイバーシティがあるのが高専だと思っています。そうした様々な力を、全国約50万人のポテンシャルを結集すれば「日本に“高専”あり」と世界に高専を知ってもらうことができるはず。高専そのものの価値をあげることが会の目標です。」

交流会では、顔馴染みの高専OBなど関係者らと談笑した渋谷。

交流会スタートの乾杯は株式会社セブン銀行代表取締役社長 松橋正明氏(釧路高専)

「高専はすごい力があります。中学校卒業時点で高専に進もうと思う知的好奇心、これが高専の本質です。高専が“すごい好き”です。高専へ入学したおかけで素晴らしい仲間に出会って、会社を作って、ここまでやってこれました。社会に出てからも、高専卒の有名な先輩たちに助けてもらいました。そんな出会いを与えてくれた高専に恩返ししたかったんです。次世代の高専生のために還元したいと思っています。」

交流会も終盤となり、リラックスする渋谷
閉会式で壇上にあがった理事メンバー
次回の高専人会交流会開催が決まり、盛り上がる会場
イベント開催を指揮した理事の株式会社RyuLog代表取締役・平良美奈子(沖縄高専)

来年は沖縄で2回目の交流会を開催することが決まり、閉会後は、準備を手伝ってくれた学生や理事たちと互いに労った渋谷。
自身の会社を経営しながらの会の発足は多忙を極めたようで、思わずこんな本音も。

「会社も、高専人会も。本当疲れたわぁ〜。」

その表情は充足感でいっぱいの様子でした。

運営メンバーとの打ち上げ
来年の沖縄開催に向けて、メンバーの士気を高める渋谷

全国58校、50万人の高専人を繋げたい。そして、高専が秘めた可能性を引き出し、もっと社会に貢献できたら。そんな渋谷の夢を叶えるための第一歩を踏み出せた会でした。

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