2022年10月の記事一覧
#140字小説『未来の酒精中毒者』
「お母さん、なぜ大人はお酒を飲むの?」
「そうねえ、子供にはない嫌なことや深い悩みが大人にはあるんです」
「僕だって悩みくらいあるさ、だからね?お酒飲んでいいでしょ?」
「まだ20歳になるまではダメよ」
「えー、だったら20歳までは禁酒ね。解禁したらガブ飲みするんだ」
「またそんな事を言って」
#140字小説『泣き虫ピエロ』
階の違う清掃班のあいつが気になる。
いつ見ても私を殴ってくださいとでも云いたげな弱々しい気配を醸しだしてこっちまで迷惑しちゃう。
そう僕は困惑してるんだ。
こんなにも君のことを想っていることに。
お互いを結びつける言葉なんて何一つ持っちゃいないくせに節目がちな瞳が苛立ってやるせなくて。
#140字小説『星空のエピタフ』
死にたい僕は今日も地平の先まで輝く星々を探す。
きっとあのまばたきの一つ一つが死んだ人たちの魂のゆらめきなんだ。
何者にもなれず好きな人にも告白できないミジンコのような僕でもあんな綺麗な光を放てるんだろうか。
仰ぎ見る先人たちの魂はどこまでも澄んだ空を恍惚とたゆとっていて。