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川柳で若い世代にエールを送りたい 23/11/26

1.川柳の一言コメント

「探しています少し太った青い鳥」

 これは、メーテルリンク原作の「青い鳥」からイメージを膨らませた川柳です。貧しい木こりの子供のチルチルとミチルが、幸せの青い鳥を探して旅をする物語を、私は小学生の頃、絵本で読みました。

 幸せを願う気持ちは誰もが持っているでしょうが、人々が願う幸せの形は様々です。また、自分にとって何がどうなれば幸せと感じるのか、曖昧な場合も多いのではないでしょうか。

 不器用な私の場合、私に合った幸せを運んできてくれるのはきっと、飛ぶのが下手で多少不細工な、少し太った青い鳥だろうと思っています。

2.私の経験で思う事

 私が子供の頃、両親は夫婦喧嘩ばかりして、家の中は殺伐とした雰囲気でした。私は3人兄弟の真ん中で兄と妹が居ましたが、両親が喧嘩を始めると、先ず妹が泣きながら止めに入り、次に私が喧嘩を止めるように言いましたが、兄はあきらめ気味で、殆ど無視していました。

 子供が「止めて」と言って喧嘩を止めるような両親ではありませんでした。父は近所にも聞こえる大声で母に罵声を浴びせて、エキサイトしてくると暴力を振るいました。

 恐らく近所の誰かが連絡したのでしょう、自宅に警察官が来た事がありました。しかし、当時の警察官は家庭内のもめ事には立ち入りませんでした。「近所の方が心配していますから、喧嘩を止めて下さいね」と、一言注意して立ち去る程度でした。

 「どうしてうちは、近所の他の家のようになれないのだろう」と、子供の頃よく思いました。しかし、食べるのに困ることは無く、激しい夫婦喧嘩をしても、結局は母が耐え忍んで、離婚せずに子供を育ててくれたのです。

 あの頃が幸せだったとは、とても言えませんが、しかし、不幸だったのかと考えると、もっと不幸な子供も居ました。事故で父親を亡くした同級生や、きっと家庭の事情が私よりひどかったのでしょう。自殺した同級生も居ました。

 両親の夫婦喧嘩は私が高校三年生の時でもまだ続いていて、確か夏休みでした。母が妹を連れて市内のどこかにアパートを借りて逃げて行ったことがありました。

 私は、「いよいよ離婚かな」と覚悟して、父に話したことがありました。「兄は大阪に就職したし、俺も来年高校を卒業するし、妹は気になるけど、どうしても夫婦仲が良くならないなら、もう、子供の為に無理に結婚していなくても、もう離婚していいと思う」

 涙が出ました。その時、父をなだめに来てくれていた叔母は、「そんな悲しい事を言うな」と、涙を流し、「なんとかならないの?」と、それでも父の説得を続けてくれました。

 結局、夏休みが終わって学校が始まると、妹は小学校に行かねばならず、同じ市内とはいえ自宅に戻らないと不便なので、母が妹を連れて戻って来ることになりました。

 高校を卒業して銀行に就職し、銀行の独身寮で生活するようになると、ほっとしました。一人の生活が気楽で、新しい環境が刺激的で、新生活が楽しくて仕事の意欲も湧きました。思えば、あの頃は幸せでした。

 でも、就職して4,5年経つと、転勤があり、人事評価で差が出て来て、嫌でも激しい競争の中で仕事に追われるようになりました。私の周りの行員は優秀な人ばかりに感じて、仕事を続けるのを負担に感じ始めました。

 幸せな時期は長く続かず、私は仕事に悩むようになりました。でも、転職する勇気はありませんでした。銀行を辞めたら収入が無くなりホームレスになるしかないと考えていたので、悩みながら仕事を続けました。

 今は、夫婦共働きが普通ですが、その頃は、夫は仕事をして家計を支え、妻は家庭に入り家事と子育てをするというのが常識でした。ですから私は、「仕事の出来ない中途半端な男は結婚できない」と、考えていました。

 私は67歳の今までずっと、何かしらの悩みを抱えて生きてきました。人は誰でも多少の悩み事を持って毎日を送っているのでしょうが、私はやはり不器用というか、中途半端で決断力が無いと言うか、能力不足というか。

 一言で言うと、「何の取柄もない何処にでも居る男」になるのでしょうが、ずっと独身ですので女性を口説くのが下手という特性があります。また、何度も転職していますが、貯金が底をつくまでに新たな仕事に就いていて、ホームレスにならずに生きてゆく能力を持っています。

 今の自分が幸せかと聞かれたら、「不幸とは言えない」と答えるでしょう。戦争の無い日本に住んでいて、一応、衣食住の心配をしなくて過ごせています。大病もせず身体が動きますから。

 私は今も、私に合う「青い鳥」を探しているのだと思います。メーテルリンクの「青い鳥」は、自宅の籠の中に入っていました。しかし私は家庭を持っていません。自宅には私一人です。ペットも居ません。

 私は、自宅の青い鳥に代わる何かを見つけなければなりません。それが何かは、まだ分かりません。 

3.川柳からイメージした絵を描いてみた

 僭越ながら、私の描いた下手な絵を載せます。

探しています少し太った青い鳥

 この絵の男は、青い鳥をどうやって捕まえたらいいのでしょうか。手を伸ばして捕まえようとしたら青い鳥は飛んで逃げようとするでしょう。太ってうまく飛べないから、一度、男の顔に落ちてくるかもしれませんが、地上に落ちる前に空中で羽ばたくことは間違いありません。

 男は岩壁をよじ登っているのにザイルを使っていません。フリークライミングの達人なら大丈夫でしょうが、この男は墜落してしまいそうです。恐らく、この状況で目当ての青い鳥と出会ったとしても捕まえる事はできないでしょうね。

 鳥籠も持っていなくて準備不足です。無計画、行き当たりばったり、ぶっつけ本番なのです。同じ事が私の今までの人生で度々起きています。これからもきっと死ぬまで似たようなヘマを繰り返すと思います。私の性分です。

 まあ、「人生は一寸先は闇」とも言います。何が起きるか分かりません。常にぶっつけ本番で、その時々で判断を下して前に進むしかないのでしょう。

 その判断を誤らないように、過去の経験を生かすとか、人に相談するとかして決断するしかないと思います。今までもそうやって生きてきたつもりですが、その結果が「何の取柄もない何処にでも居る男」なのです。

 今の自分はちょっと残念ですけど、後悔はしていません。これでも懸命に生きてきましたし、私の実力なのでしょうから。まあ、まだ人生終わっていませんから、もう少し頑張ってみます。私の「青い鳥」を見つけるために。

 

 

 

 

 

 


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