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「乳歯」

先日、歯医者で左上顎の臼歯を抜いた。
・・・「乳歯」だった。

以前からも歯医者から
指摘されてはいたが、
私の歯の何本かは
乳歯が抜け落ちぬままに
なっていたらしい。

幸いというか
困ったことにというか、
私の歯は至極頑丈にできていて
小学生の自分に
「手入れが良くて美しい歯」
ということで、
市から賞状が貰えた程である。

・・・副賞に木箱に入った
立派な顕微鏡セットまで貰い、
大喜びで色々なものを
プレパラートに挟んでは
覗き込み遊んだ記憶がある・・・

何かの拍子にポロっと乳歯が抜けたり
グラグラしていて気になる乳歯を
自分の指でグイっと引き抜いたりしたのは
当時の他の子供達と同じだったが、
なぜか三本以上、
乳歯を残したまま大人になってしまった。

おそらくは歯の頑丈さ故に
周りの歯が乳歯をしっかりと挟み込み
固定し続けていたからではないかと思う。


歯磨きをまめにしていた訳でもないのに
虫歯にも縁がなかった私の歯だが、
イタリア留学中に
おそらくはチーズの食べ過ぎで
遂に虫歯にかかってしまった。

それ以降は
「歯の頑丈な人」ではなく
「普通の人」として
数年に一度の割合で
虫歯に罹ったりして今に至るのだが、
不思議と乳歯だけは
虫歯に遭うこともなく
口の中に残り続けた。

昨年の春、
コロナ自粛が始まった頃に
左上の一番奥の臼歯を抜いたのだが、
その影響で歯全体の締まりが緩んだらしく
乳歯を固定していた左右の歯の圧力も
緩んでしまったらしい。

見た目は特に傷もない歯ではあったが、
やはり歯根が後退しており、
それでグラグラしたり
無理に物を噛むと痛みが出たりしたようだ。

・・・子供の自分に体験した
抜けかけている乳歯と同じ状況だった・・・


「ここは潔く抜いてブリッジにしましょう」
という医者の勧めに従って
先日抜いた私の乳歯。

60年近く健気に働いてくれた歯として
なかなかに感慨深いものがあった。

・・・さて、
抜いた乳歯の直下にも、
もうひとつ別の乳歯があるんだよな。

ここは上の歯以上に両側から
ガッチリと固定されており
もう何年も前から医者に
「歯根も無くなっているし
 時期にポロリと取れます」
と言われながらも
いまだに現役で頑張っていたりする。

本当はこの歯も抜いてしまい
上下でうまく噛み合わせられるように
ブリッジを作れば手間がないのだろうけど、
ここまで健気に頑張っているのを見ると
抜くに忍びなく、
なかなかに決心がつかないでいる。

ううむ、どうしようか・・・

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