「オーディション」考 05
オペラの配役オーディションにおいて
課題曲に指定されている曲は
本公演でのそれぞれの役のアリアであり
それだけに審査の比重も高い。
ここで応募者が気になるのは、
課題曲の演奏範囲や途中のカット、
カデンツの有無などではなかろうか。
アリアだけなのか、
レチタティーヴォも含めるのか、
後半のカヴァレッタも入るのか、
アリアとカヴァレッタの間はどうするのか、
カヴァレッタは楽譜どおり2回続けるのか、
慣習的な1回まわしで良いのか、
etc. etc...
もし、この演奏範囲やカットなどで
疑問に思うことがあれば、
「必ず事前に主催者に確認すること」
これが鉄則である。
オペラ公演においては、
アリアというのは単体の曲ではなく、
前奏、レチタやカヴァレッタ、
アリアとカヴァレッタの間のやり取りなど
それらの全てを含めた
「場面(シェーナ)」としての扱いになる。
コンサートやコンクールでカットされる部分が
オペラ公演やハイライトの場合では
ノーカットとなる場合も多いのだ。
キャストオーディションも当然、
オペラ公演を前提に行われるため
それぞれの団体・公演によって
カットが異なると考えた方が良い。
この範囲の確認を怠り
準備していない個所まで歌うことを
審査の場で初めて知った場合、
たとえその場で何とか取り繕えたとしても
心理的な圧迫もあり
とてものこと
実力を発揮できる状況ではなくなるだろう。
非常に勿体ない話である。
※ ※ ※ ※ ※
「不明な点は事前に確認すること」
これは、演奏範囲に限った話ではない。
参加条件やオーディションの時間帯、
審査に合格し公演に出演する際の
ギャランティや参加費、チケットノルマ、
稽古日程や他の仕事との両立についてなど、
おおよそ疑問に思えることは
エントリー前の時点で何でも質問して良いし
そうした細かな質問をすることが
主催者側の心証を悪くし
審査に悪影響するなどということは
まず無いと言っていい。
(むしろ真剣に出演を考えている人だと、
好意的に受け止められることの方が多いはず)
逆に、そうした質問を一切せぬまま
オーディションにエントリーした場合、
募集要項に記されている諸々の事柄は
全て理解・了承しているものとみなされる。
つまり、審査の現場において
「こんなはずではなかった」
という文句は通用しないし、
審査後の具体的な出演交渉において
審査前に提示されていた条件を
覆すようなことをすれば、
これは信用そのものに関わることになる。
疑問を抱えたまま
オーディションを受けるのは
後々のトラブルの元にもなりかねないのだ。
そうしたトラブルを回避し、
心置きなくオーディションに臨むためにも
不明な点があるならば、
それがどんなに小さなことであっても
事前に主催者に問い合わせることを
心がけて欲しい。
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