楽しくてクセになる

 またもや勝手に長期休業に入っていた。
 言い訳をさせていただくと、3月の末にジュニアオーケストラのコンサートがあってその準備にてんやわんやだったのである。

 子どものオーケストラだと侮ることなかれ。演奏者や司会の地元高校の放送部の面々まで加えると総勢100人近くの大所帯。遠くは香川県に北海道と群馬県、近くは地元高校の吹奏楽部や市民吹奏楽団の団員、松山からのエキストラなど。まあ本当に皆さんよく集まってくださった!と私は満面の笑みでスタッフと共に走っていたのである。

とこう書くと私が陣頭指揮をとってすばらしい働きをしていたように聞こえる。しかし私のやったことといえばいつも行くコーヒー屋さん「みんなのコーヒー」で楽器を運ぶためのハイエースを借りてきたこと、差し入れ大臣やお弁当手配大臣、楽器運搬庁長官などの任命したこと、そしてどこかで困ったことが起こったと言われた時に、芸人のやす子よろしく「はいー」と話を聞くぐらい。あとはあちこちで「不便はないかい?」「万事上手くいってるかい?」と聞きながらおしゃべりしていただけである。

 保護者が何かで運営を手伝うときというのは大体仕事ができる人に負荷がかかってしまうものである。それほど負荷のかかってない人もなにかしらの小さな不満があるとそのうちあふれてお互いギスギスしたり、出てこない人がいたりもする。全体像がみんなに見えないから言われたことしかやっちゃいけないような気がすることもしょっちゅうある。

そういうゴタゴタを今までいろんなところで経験してきたので、とにかく演者もスタッフも「おもしろくてクセになる」を目指してみた。
 
だがおもしろいを目指した私が一番おもしろくない失敗をしでかしたのは当日の朝のこと。高校の吹奏楽部の楽屋へ行くと子どものバイオリンケースだらけ。「あれまあ、高校生が遠慮して入れんやん」と楽器ケースの撤収をさせた。
ところが、である。「誰がこんなこと言うたん?」と聞くと他でもない私だったと言う。言葉が不十分でそんなことになり、「ごめんごめん。前言撤回ですう」と大柄な私が急に小さくなる場面もあったのだった。

 さて、今回は私が目指した「おもしろくてクセになる」演奏会になったんだろうか。そんなことを考えながら打ち上げのインド料理屋へ行った。成り行きで私が店員さんよろしくみんなの注文を取る羽目になって忙しかったものだから、あんまりその辺りを聞かずに終わってしまった。

 来年、二つ返事で来てくれるゲストや積極的に参加する保護者や子どもたちが多ければ「おもしろくてクセになった」、「楽しくてクセになった」ということになるだろう。乞うご期待、だな。

ではまた。ごきげんよう。