マイナーなのよビオリストは

車で1時間ほどのところにある香川県の楽器屋さんをのぞいてきた。

私はオーケストラでビオラを弾いているのだが、このビオラというのが恐ろしくマイナー楽器のため楽譜を買うにしても弦の替えを買うにしても田舎ではほとんどみかけない。だからと言ってなんでもインターネットというのも不安で、楽器屋があれば入ってみるのである。

一週間ほど前に行った別の楽器屋では松脂(まつやに)という弓の毛に塗るものを買った。いくつか持ってはいるのだがもっといい感じになるかもしれない、と期待し「ビオラ用」と書いてあればすぐ手に取ってしまう。使ってみたが「バイオリン、ビオラ、チェロ 、コントラバス用」という(つまりなんにでも使えるということ)これまで使っているものの方がいい音がする。が、正直なところ分からない。素人なので区別がつかないのである。これから寒くなるので冬用の松脂とまた比べてみようと思うが、違いがわかる女になれる気がしない。

私のビオラ の先生の本業はバイオリニストである。私は先生と自分の都合があった時に教えてもらうあいまい弟子で、毎回レッスンよりお茶の時間が長い。その先生からビオリスト(ビオラ奏者のこと)として近藤さんも発表会に出ませんか、と誘っていただいた。ビオリストなんてそんなたいそうな、と否定しつつニヤついてしまった。ビオリスト、だって。

ビオリストと呼ばれ、気を良くして出ることにしたものの、困った。私は大変なあがり症である。ソロで弾くのが本当にダメなのでオーケストラに入っているのである。(この理由はかなり問題だが、そうなのだ)先生のレッスンで毎回酸欠寸前なほどあがってしまう私。人前で一人で弾くなんてあがる要素しかないではないか。門下の本当のお弟子さんたちの前でへなちょこ弟子もどきが弾くなんて大丈夫なのだろうか。

もう一つ困ったのは曲がないことである。実はビオラはソロ曲がほとんどない。下支えの楽器だからだ。チェロ になるとその形も音も色気があるし、華がある。憧れる人も多いため、巷にソロの曲集がたくさんあるのだがビオラは本当に数が少ない。そもそもバイオリンとビオラは大きさ以外見た目が同じなので見分けがつかないという地味さ。そのためプロ以外で弾く人が少ない。(楽器屋のお兄さんに「僕、今までここで働いてビオラ やってる人にまだ2人しか会ったことないですね。二人目がお客様(私だ)です」と言われたのだ)

最後にもう一つ困ったのはピアノ伴奏者を探すことである。大抵知り合いに頼むのだが、先生のところは遠方なので声をかけづらい。あまりに困ったので、家族に弦楽伴奏してもらおうと思いついた。我が家には私以外にバイオリンが二人とチェロが一人いる。つまり弦楽四重奏で出るということである。伴奏者は家族でまかなえるし、一人で弾くプレッシャーもない。これはナイスアイディアだと思ったが嫌がるバイオリン息子がひとり。彼には千本桜のバイオリン譜を買って賄賂として渡し、問題クリアとなった。

これで多分整う。4人でやるならモーツアルト か、スターウォーズか。うーん、ベートーベンとかどうだろう。

まずは先生におうかがいを立てなくてはならない。

では、また。ごきげんよう。