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食べておいき

近藤です。

桜の木が段々若葉色になってきましたね。息子曰く「桜餅みたいになってきた」。食いしん坊の私はその一言で桜餅を買い求めに走らなくては!なんて思ってしまうのです。

私は子どもの頃からお茶のお菓子に目がなくお稽古をしている祖母や叔母のそばでウロウロし、お弟子さんが「チカちゃんもひとつどうぞ」と懐紙に乗せてくれるのを待ってないふりをしながら待つことがよくありました。

父方の祖母と出かけると「まだ小さいのにお抹茶もお煎茶も飲めるのねえ」なんて言われるのでこれまたお菓子欲しさにどこへでもついて行き、あちらのお菓子屋さんで一服、こちらのお菓子屋さんで一服とお茶を頂くのが楽しみでした。

桜餅、うぐいす餅、カステラ、羊羹、薯蕷饅頭、利休饅頭、など和菓子が大好物で、出かけては「今日はお寺さんへいくからきんつばかなあ」などとワクワクし、お客さんがあったり、父のお使いがあったりすると和菓子屋さんでお菓子を買ってくるよう言われるのでこれまたワクワクしていたのでした。

けれども、生菓子ばかりが好きだったわけでもなく祖母の家の近所にあったお煎餅屋さんの前を通ると「チカちゃん、焼けてますよ」と呼び止められるので、お煎餅をいただくのもまた楽しくて、お煎餅をひっくり返す職人さんを見ながら渋いお茶をすすって帰ることもありました。

八百屋さんではお店のご主人が付けたお漬物をちょっと食べさせてもらったり、友だちと教会へふらっと遊びにいって牧師さんと天津甘栗を食べたり、入院先の病院の看護師さんにパンを食べさせてもらったり、顔なじみのお豆腐屋さんに出来立てだよ、と食べさせてもらったり。子どもの頃からとにかく「チカちゃん、食べておいき」と言われることの多い子でした。

大人になってもやっぱり「食べておいき」と言われるのは変わらず、また、それは日本でも外国でもいく先々でいろんな人からご馳走になっていましたが、コロナ禍でさすがに「食べておいき」はぐんと減りました。

代わりに「帰って食べてね」が増えた今日この頃。いただくものも油揚げ、高菜の糠漬け、お味噌、果物、お芋、あんぱん、羊羹など、ワクワクするものばかり。

先日は会議続きでヘトヘトになって帰ったら、正統派のあまーいどら焼きをいただいてうっとりしました。

いつまでもいつまでもおいしいものが降ってくる星の下に生まれた私。食べておいきの人生はまだまだ続いていくのです。

では、また。