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息子の寝癖

今朝は休みの日だが息子が登校しなくてはならなかった。いつもよりは遅い時間に出発するのでゆったり構えていたのだが、髪の毛の寝癖がどうにもひどく、ちょっと水で撫でただけでは直らないほどだった。小学生の頃、先生方から「コナンくん」と呼ばれていた寝癖の再来である。

中学生の男の子というのはどんなにニキビが少なかろうが肌がツルツルだろうがなんとなく油っぽい感じがする。弟が中学生、高校生の頃はいるだけで男子臭がしていたものだった。

息子は色白でひょろっとしていてニキビも申し訳程度にある、そんな子である。ただ、髪の毛はちょっといただけない。ちゃんと洗っているのだろうけれどベタついている。美容師さんに髪を切ってもらう時も「髪の毛こんなんやったらわるいかなあ」と本人も気になっているようらしい。母心から一度ゴシゴシ洗ってやりたいと思うのだが、もう母親に頭を洗ってもらうような年頃ではないので本人もその申し出はかなりきっぱりと拒否する。ちゃんと洗うように、と何の役にも立たない小言を言うだけで私もなす術がないのである。

彼のきっぱりした拒否の態度は生まれ持ったものだろうと思う。離乳の遅い子だったが、ある日授乳しようとしたら、手で私の胸を全力で押し返し、口をギュッと真一文字にしていた。それ以降一切母乳を欲しがらなかった。おむつもある日を境に一切履かなくなった。学校も行かない、と言い出したら絶対に動かない。無理に連れて行こうとすると体の力を全部抜いて持ち上げられないような技まで繰り出した。とにかく一度拒否したものは断固拒否なのである。

彼が小学生の時、突然「お風呂は一人で入る」と宣言した。父親とも入らないという。着替えも見るなという。以来、鶴の恩返しの鶴よろしく誰も彼の洗面所とお風呂の様子を見たものはいない。人が入ってくるんじゃないかと思って鍵をかけたりする。洗面所へ入れないのは困るので、協議の末、鍵はかけない約束をさせた。困ったものである。

それにしてもコナンくん、中学生なので寝癖のまま学校へ行くのはよくないと思ったのだろう。私の「シャワーをジャッとかけてあげようか」という申し出を断らなかった。これはチャンスとばかりに「洗面所だと狭いからお風呂でかけてあげよう」と提案し、肌着を着たままの彼へ湯船へ向けて頭を突き出すよう告げ、髪の毛の跳ねた部分に湯をかけた。

そうしながら狡猾な母は「ここだけかけても変やけん、全部かけよう。ついでにシャンプーしてあげるわ」とさも親切げに言ってゴシゴシ洗ってやった。そして、服が濡れないようにタオルドライもしっかりしてやり、親切にドライヤーもかけてやり褒めちぎった。「サラサラヘアーでええ感じやねえ。シャンプーあんな感じにしたらこうなるんかなあ、なんなら朝シャンプーもええねえ」なんて提案も入れて。

母親としては子どもの中身を重視しているのはもちろんだが見た目だってちょっとは気になる。いい匂いでサラサラヘアーだとモテるんじゃないの、と妄想もする。が、息子は気にはしているかもしれないが母親の前でそんなことどうだっていい、という素振りしか見せない。いいのだ。私もお母さん、髪洗ってよ。なんて毎日言われたら困る。

義母と夫を見ていると思う。お母さんは小言を言うのが当たり前で息子はそんなもん聞いちゃいないのが当たり前なんだと。救いがあるとすれば聞いちゃいない息子である我が夫は義母にやさしい。義母の好きなものもよく覚えているし、マメではないが親を大事にする人だなあと思う。40年ぐらい経ったらうちの息子もああなっているだろうか。いや、私が義母のような人になっているかどうかで明暗が分かれるだろうな、心配だ。

では、また。ごきげんよう。