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2022 IRONMANコナ レースレポート

2022年10月8日、ハワイのアイアンマン世界選手権に参加してきました。
というアーカイブです。
ああ懐かしい。

1. お祭ムードの街

コナ空港を降りたらアスリートで溢れかえり、街中に移動すれば会場設営、道路や店の装飾、アスリート達の試走とアイアンマン一色。
緊張するような高揚するような、これからこの地でアイアンマンをするんだと街の雰囲気に入り込んでいく。

まず感じたのがそこら中に行き交う人々の屈強さが尋常でないこと。
腕も胴も脚も全て自分の1.5倍くらい太い。ゴリゴリである。
自分より太いのに自分より引き締まっている肉体。
そして彼らの持っているバイクも各メーカーの最上位機種。こちらもゴリゴリである。
こんな奴らと一緒にレースするなんて、、
湧いてくるのは勇気や恐怖ではなく笑いである。
まあアイアンマンは自分との闘いなのでとにかく比べないようにしよう、と言い聞かせる。

ところで参加者5000人の最高級バイクが1台100万円だとするとバイクの総額はなんと50億円。
なかなかにエキサイティングなイベントである。

噂のUPR(アンダーパンツラン)

2. 目標

ケアンズでは9時間30分が目標だったが、コナは厳しい条件が揃っているので10時間を目標とした。
スイムのウェットスーツ禁止、バイクのアップダウンと風、ランの暑さと不安要素だらけである。
大きく崩れなければ達成できるとは思うが、初コナは洗礼を浴びるともっぱらの噂だ。
無事ゴールできますように。

スイム 1:10
T1 0:05
バイク 5:15
T2 0:05
ラン 3:25
合計 10:00

3. スイム

立ち泳ぎができないのにフローティングスタートという辱め。
周りが普通に浮いている中、1人だけ息を吸っては沈み、また息を吸っては沈むアップアップ状態。
水中でスタートの笛の音も聞こえないままみんなが泳ぎ始めて自分もスタート。
まあそのレベルでもコナまで来れるということで。

コースは約1.9kmを行って帰ってくるとてもシンプルな1往復。
バトルに巻き込まれないように避けながら流れに乗る。
さすがに世界選手権となると変な方向に泳ぐ人はおらず、人の流れが綺麗で泳ぎやすい。
ヘッドアップも少なめに泳げそうだ。

まずは楽についていけるペースの人を探して乗っかる。
1.5km泳いだあたりで前の人のペースが落ちたので追い抜くと中切れしている。
そろそろ頑張るか、とひとつギアを上げて前の集団を追いかける。
再び快適な集団スイムに。

3kmくらいで後ろのウェーブの選手達がガンガン抜いてくる。
後ろのウェーブは15分差で、速い選手が50分アップだとすると、自分は1時間5-10分の間くらい?
それなりに順当に進んでいるようだ。

その後もほとんどの時間が誰かと一緒に泳いでいる状況で、思っていたより快適なスイムパートだった。
今の実力を考えたらウェットスーツ禁止のスイムパートとしては90点。
水も綺麗で魚がちらほら。
良いハワイ観光できた。

スイム 3.8km 1時間10分21秒(目標+21秒)

ノンウェットしんどい

4. バイク

トランジションで日焼け止めを塗りたくってバイク出発。
スイムに続きこちらも90km行って帰ってくるシンプルなコース。応援泣かせ。
10/6レースだった方々にとにかく抑えろと言われており、とにかく抑えて発進。
とんでもない勢いでパワフルアスリート達に抜かれる。
それでも抑える。パワーを出していいのは上り区間と最後の30kmだけ。

途中コナチャレメンバーの応援を受ける。
マッキーさんに至ってはフンドシ姿で応援している。
これはしっかり走らねば。

市街地を抜けてハイウェイに出てからは延々と続く緩やかなアップダウン。
そして前か横か後か必ず風が吹いている状況。
向かい風区間はスピードが出ずになかなかにしんどい。
それでもパワフルアスリート達はすごい速さで抜いていく。
速度差えげつないし全員自分より脚太いな、、
着いて行きたい気持ちを抑えてとにかくパワーを上げずに漕ぎ続ける。
しかし抑えてる割に疲労感がある。
さては今日の調子はイマイチだな?

折り返しまであと20kmまで来たところでプロ選手とすれ違う。
彼らも今同じコースを走っている。
トッププロと同じタイミングで同じコースを走れるなんて世にも珍しい経験だ。
コナってすごい。

帰りはそこそこの追い風基調になりスイスイ進む。
抜かれ続けて終盤でようやく抜き始めるシーンが出てくる。
潰れて力が入らないようなツラい思いをせずに済んだので抑えておいたのは正解だった。
結局調子は上がらなかったので序盤で頑張っていたら泣きべそだっただろう。
アドバイスくださった皆さまありがとうございました。

そういえば噂のHawi付近での横からの突風はなかったように思う。
楽なバイクではなかったが、今日の風は弱い方だったのかもしれない。
調子の割にまとめられたのでバイクパートとしては80点。

バイク 5時間16分47秒(目標+1分47秒)

ほとんどが溶岩の殺風景区間

5. ラン

7時頃スタートしてから約6時間半の午後1時30分。
ハワイの熱々の昼下がりである。
ここでも日焼け止めを塗りたくって出発。
スイムバイクとも微妙に目標をオーバーしているがランの調子からして10時間はちょうど良い目標だろう。
暑いが脚は動きそう。
ケアンズに続いて目標に対して誤差のないミラクル展開ができるかもしれない。

市街地で応援を受けながら順調なペースで走る。
しかし気になるのはエイドステーションの数が少ないこと。
レースが2日間に分かれたためボランティアの確保が難しくエイドステーションの数が当初予定より少なくなってしまったらしい。
2.3kmに1回の計算だが体感距離がずいぶん長い。
これはしっかり給水していかないと危ないだろう。
と思っていたところでエイドで取った水のコップがカラ!
いきなり水を逃してしまった、、
次はちゃんと飲もう。

しかしさすがに2500人が同時に走るとなると人数は多く、エイドは混雑している。
立ち止まらずに走りたいので水は取れたり取れなかったり、コップがカラだったりカラじゃなかったり。
今思えば完全に優先順位を間違えている。

バイクと同じハイウェイで緩やかなアップダウンの繰り返し。
地味な削られ方をするコースである。
ペースも補給食も順調に走っているが水が足りていない。
そして24km地点エナジーラボで遂にきた吐き気。
明らかな熱中症の症状。
脱水か体温上昇かだがどう考えても水不足。
ペースを落としても心拍は170を超えてしまう。

この気持ち悪さでは走り続けられないため、50歩歩いて50歩走る、を繰り返す。
さよならサブ10、、
せっかくハワイまで来たのだから完走は絶対。
1歩ずつ歩みを進めよう。

とにかく水をたくさん飲んで歩いて走って、とやっているうちに少しずつ回復の兆しが見える。
30kmを過ぎたあたりで夕方になり、気温も下がり始めて走りやすくなる。
そろそろちゃんと走るか、と長い長いラスト1時間の始まり。
心拍が上がらないゆっくりペースでコナの溶岩の殺風景をじっくり堪能する。

歩かずに走り切りたかったという悔しさと、コナまで来れて今走ってるという嬉しさを噛み締めて市街地に入る。
最後は賑やかな応援に囲まれて達成感と共にフィニッシュ。
ようやくここまで辿り着いた。

You are an IRONMAN!!

水分補給を軽視したのでランパートとしては40点。

ラン 42.2km 3時間50分16秒(目標+25分16秒)

なんとかコナアスリート

6. 結果

トランジション込みの記録は10時間25分46秒。
完走できたが歩いてしまったので60点。
この日の全体で2376人中988位、
同年代M30-34で346人中208位となった。
まあそんなもんか。

特に同年代のバイクの強さには目を見張るものがあり、5時間17分で254/346位だったのが驚いた。
あのコースで5時間切りが当たり前とは世界の壁はとんでもなく高い。
逆に歩いてしまったランが190/346位でいまいち納得いかない。
同じく脱水になった選手が多数ということか。

7. 思うところ

・アイアンマンの原点

アップダウンあり、風あり、暑さありのコナは決して記録が出るコースではない。
このコースを走って、敢えて過酷な環境で過酷な事をするのがアイアンマンの原点だというのを思い知った。
速さは大事だが過酷な経験をした事の方がもっと大事。
冷静にヤバい奴らである。

・闘えるようになるには

今回バイクで最も大きな差があることがはっきりと分かった。
バイクで差を縮めるには基本的には2つしか道はない。
ひとつはパワー向上、もうひとつは空気抵抗削減である。
空気抵抗についてはエアロポジションも維持しているし、及第点のグッズは揃えているので、改善幅はそこまで大きくはないだろう。
となるとパワーだ。
今回平均190W程度の残念なパワーだったのだが、同年代のアスリート達は200W中盤から後半くらいは出していただろう。
ちなみにコースレコードのプロSam Laidlow選手は平均310W出ていたらしい。
そのパワーを生み出す源は筋肉なので、その筋肉をつけなければならない。
そのためには増量が必要で、筋肉のつきにくい自分であればラグビー部のような食生活が必要になる。
そして体重が増えればランでは重りになるため、ランのレベルアップが必要だ。
バイクが格上でランは同じくらいの選手は総合力としては数段格上なのである。
その数段を超える跳躍ができるか。

・自分の記録について

今回の結果は10時間25分で、脱水を克服したら10時間までは狙えるだろう。
10時間でゴールした場合年代150位である。
なんというか208位も150位もあまり変わらない。
100位を切るには9時間40分が必要だし、入賞するには8時間50分、優勝には8時間40分が必要だ。
こんな人間離れしたアスリート達にどこまで闘いを挑むか。
目標の置き方に悩むところである。
分かりにくい例えだが、新卒で背伸びして入った会社で周りの能力が高すぎてキャリアパスに悩んでしまった事を思い出す。
世界で闘うのは楽しくてしんどい。

8. まとめ

細かいことは置いておいて、レースもハワイ旅行も楽しかったし、コナにチャレンジする日々がとても楽しかったです。
数か月たった現時点では、週20時間のトレーニング時間を他の興味に向けることにしています。
またチャレンジしたい気持ちが高まったらアイアンマンの世界に戻ってこようと思います。
支えてくださった皆さまには本当に感謝しています。
どうもありがとうございました。

コナチャレ 〜完〜

コナチャレ ~完~

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