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イギリスあるある‐その5

さて、勢いよく筆が進んだイギリスあるある。
「なんでー?」と思ったことが、今ではいつのまにか当たり前になっていたことに改めて驚いた。
その多くにイギリスなりの理由があると学んだことにも驚いた。

この学びは、幸運にもイングランド人だけでなくウェールズ人、スコットランド人、アイルランド人という4つすべての国出身者が身近にいたおかげだと思う。
単身で転勤してきて時間をもてあます中、仕事の後や休日も多くの時間をともに過ごすようになった彼らが、私の素朴な疑問にしっかりこたえてくれた「教育」のたまものだろう。
特に、建物や浴室など施設に関する知識は、家を買って増築をするなかで、たくさんのアドバイスをもらい、日本の建築方法や法律、嗜好との違いもたくさん学んだ。

ということで、最後にいろいろ雑多なあるあるをカバーして終わりにしたい。

あの人なんで…?

フードを被ってるの?

引っ越してきてすぐのこと。
なんせ私がやってきたのは世紀の大雪とまでいわれた2009年の冬。
そんないつにも増して寒く雪の降りしきるロンドンにやってきた私が、ドキドキしたこと。それはすれ違う人がジャケットやパーカのフードを被っていることだった。
日本の感覚がまだ残っていた私は、顔を隠すようにフード被り、背中をすくめて手をポケットに入れて歩いている善良なご近所さんたちがみんなこのあと強盗にでもいくような気配をだして見えたのだ。
自分が滞在していたホテルの付近がえらく治安が悪い場所に思えて怖くなった。

こんな感じ。しかも背が高い若者だったりして、それがとても怖く思えた。
今じゃ自分もかぶってる。

傘をささないの?

フードがなぞに思えたのは、雪や雨が降っていたら、日本だったら当たり前のように傘をさすと思っているからだ。
ところが、小雨や霧雨は当然として、結構な降雨量であっても、傘を差さないひとがとても多い。
いろんな説はあるけれど、おそらくイギリスは「一日の中に四季がある」といわれるように天気が変わりやすく、一日中ザアザア雨ということが稀なので、傘をそのために持ち歩くのが面倒くさいのだと思う。
イギリス紳士としてかっこつけているからなんて説もあるけれど、どうかなあ。
ただ、イギリスで売られている傘は、屈強で巨大なゴルフ傘か、あるいは数回でダメになってしまうペロペロ(のくせに重くて大きい)折り畳み傘が多い。
なので、簡単に持ち歩けないからじゃないかと思う。

ちなみにイギリスの、特におじさまたちは、傘のことをブローリー(brolly アンブレラのブレのところから)と呼び、長靴のことはウェリントン(Wellington)と呼ぶ。
ナポレオン戦争の英雄ウェリントン公が乗馬のために脛をカバーできる長靴を使ったことからきているらしい。
レインブーツと呼ぶ人はほぼいない。

大きな音で鼻をかむの?

マナーに厳しいお国柄、というイメージだけれど、男性女性にかかわらず結構普通にティッシュやハンカチをだしてブーッと鼻をかむ。

私は女子校で育ったので、周囲の目を気にすることなく、机の右に箱ティッシュ、左にコンビニ袋をさげて花粉シーズンはがんがん鼻をかみ育った。
が、大学に上がった時、共学高出身の同級生が慎み深くわざわざトイレに行って鼻をかんでいて衝撃をうけた。
男性の目を意識して育つってがあるこういうことなのか、と。

だんだんと「コッソリ鼻かみチーム」へ入っていったのだが、ここイギリスで再び「思い切り鼻をかむ」ほうに回帰した気がする。
おかげで、日本に帰った時、周囲からジロリとみられてしまうことたびたびである。

ちなみに結構の数のイギリス紳士は、くしゃくしゃのハンカチをポケットから取り出して鼻をかみ、それをふたたびポケットにしまう。
ティッシュ(イギリスに限らず欧米のポケットティッシュはものすごく分厚く、畳んだものが数枚パックされている)をつかうひともいるけれど、どこからきたのかわからない紙製品(それ、さっきのカフェの紙ナプキンじゃ?)でかんだりするのもすごく普通。

そしてかんだ後に…

そのかんだあとのティッシュ。
私が大きな衝撃を受けたことの一つが、多くの人(若い女性も)それを長袖のセーターの袖口にいれることだ。
そう、袖口。そして、それをまた使う。結構何回か使う。

あれ、うっかり忘れて洗濯機にいったり、着替えの時に落ちてきてびっくりしないのかなあ…。

お出かけ時あるある

ロンドンの地下鉄は今年で160歳!

世界で初めての地下鉄、メトロポリタン線がパディントン駅とファリンドン駅の間に開通したのが1863年。
今でもベーカーストリート駅などはかなり古い施設が見てとれる。
東京の大江戸線などもそうだけれど、新しくなればなるほど、空いたスペースをもとめて深くなりがちなので、どのくらいの深さかで路線の年齢を推察したら面白いかもしれない。
ちなみに日本最古の地下鉄銀座線は1927年の開通で、メトロポリタン線より64歳も若いということになる。

そして、その年齢ゆえに、施設はあまり便利ではない。
狭いプラットフォームや階段を混雑させないようにとわざと長いルートで乗り換えを案内し誘導しているので、駅舎内の一方通行も非常に多い。
10年ほど前にホームではWiFiがつかえるようになった。
日本も、香港や韓国に遅れてようやく走行中もネットに繋げられることがあたりまえになったが、そこからさらに周回遅れだ。
なので、地図や目的地情報は地下に入る前にきちんと保存しておくことをお勧めする。

もちろんクーラーなんてありません

私がちいさなころ、日比谷線や目蒲線は扇風機だけだった。東横線乗るとクーラーつきの車両があると胸をときめかせたものだった。
ロンドンの地下鉄や鉄道も同じ。クーラーつきは新路線、新車両の話。
そして駅にはクーラーなんてない。

そもそもロンドンの気温は めったにマイナスにならず、30℃を越えることもまれ。いつも5℃~ 23°Cくらいの間だ。
グレーで寒く思われがちだが、実は年間を通して寒くも暑くもならない快適なところなのだ。
雨は降るものの空気は乾燥していることが多いので、気温が上がってもカラッとしていてクーラーが必要になることもめったにない。

ところが、その分、その「たまにしかない暑くて湿気の高い日」が来ようものならさあ大変。

まず、ロンドン版の朝ニュースでは「かならず水をもって公共交通機関に乗ってください」と警告される。
駅の改札や構内にも、暑いから無理せずにという看板がでる。

でも、その「暑い」って27℃くらいの気温なのだ。
東京だったら、「あら、今日はあまり気温があがらず快適ですね」とでもいいたくなる気温だろう。

去年の夏はありえない猛暑で、クーラーがあったらと思わせる日が続いた。イギリスの気候も転換期に来てるのかもしれない。

持ち帰りは安い?

さて、地下鉄を降りて、お茶でも飲もう。
そう思ってカフェに入ってきっと驚くのは持ち帰りと店内飲食で別の値段が描かれていることだろう。
これはボリスの時代に導入された付加価値税の考え方のせい。持ち帰りの食べ物には、店内飲食よりも低い税金がかけられるルールなのだ。しかも持ち帰りの食べ物でも、冷たいもの(サンドウィッチなど)はゼロ課税なのだ。

これが発表されたとき、「じゃあソーセージロールはどうなるんだ」という論議が巻き起こった。
ちなみにソーセージロールにはソーセージは入っていない。
ソーセージミートと呼ばれるひき肉にスパイスで味がついたもの(ソーセージの中味)をロール生地にくるんで焼いたパンだ。そして特に労働階級のお気に入りスナック。
しかし、これ、冷めた状態で食べるのが普通なのだ。
でも、当然焼き立てはホカホカ。
だから、「買った時間によって値段が変わるのか?」と大騒ぎになった。

お父さんお母さんは気を付けて

そして最後に、お出かけのときに一番気をつけないといけないこと。
それは、イギリスでは12歳未満のこどもを一人にし、危険にさらしたと判断された場合は育児放棄の罪に問われる可能性があるということ。
ひとりで歩いて学校や塾へいく、お留守番をひとりでする、おつかいに子供に小銭を持たせて肉屋にいかせるなんていう日本の感覚でつい行動すると問題になるかもしれない。

安全度や危機管理の考え方、また子供というものの捉え方など、私はここがいちばん日本とイギリスの違いが表れているところのような気がする。

【今回ピッピさんのイギリスをテーマにしユニオンジャックをあしらった愛らしいイラストに出会い、連続で使用させていただきました。ありがとうございました】


いただいたサポートは、ロンドンの保護猫活動に寄付させていただきます。ときどき我が家の猫にマグロを食べさせます。