裏のおじさん

家の裏に住んでるおじさんはちょっと変わっている。

おじさんといっても親戚とかではなく、ただのご近所さん。

私が小学生の頃、隣の家の犬が吠えると必ずといってよいほど裏のおじさんが「うるせぇー!!!」と叫んでいたのを記憶している。

母の電話の声がうるさいと怒鳴り込んできたこともあるらしい。

そして家が暴走族のたまり場だった頃は、よく兄とも言い争っていたみたいだ。

家の柿の木の葉っぱが共有スペースに落ちて邪魔だと柿の木の枝を切られたこともあるし、とにかく神経質で何かと文句をつけてくる。

しばらく実家を離れていたので、おじさんのこともすっかり忘れていた。しかし、久しぶりに実家で生活すると、昔と1ミリのぶれもないおじさんの姿があった。

突然だがうちの母のくしゃみは特殊だ。

つま楊枝を鼻の中につっこみ、鼻をムズムズさせて大きなくしゃみをするのが気持ち良いらしいのだが、一般的な「ハックション」というくしゃみではなく、叫び声のようなくしゃみをするのだ。

しかもその声は2階で扉を閉めてテレビを見ていても1階から響き渡ってくるくらいうるさい。

そのため、母がくしゃみをする時は窓をきちんと閉めるとか気にしていたのだが、昨年の夏、ちょっとした事件がおきた。

網戸で寝ていた母が突然起き出し、夜の10時頃、爪楊枝を取り出して叫び声のようなくしゃみを連発したのだ。

こんな時間にヤバい!と焦った私は急いで窓を閉めたのだが時遅し、、、

案の定おじさんが「うるせぇー!!!何時だと思ってんだ!」と家の庭まで出てきて懐中電灯をぐるぐると回し、こちらを照らしてきたのだ。

耳の悪い母はおじさんの怒鳴り声も聞こえず、くしゃみを続けようとしていたので私は慌てて母の口を押さえた。

おじさんは75歳を過ぎてるようだが、もっと若い頃だったら、今よりひどいことをされてたかもしれない。

オー怖っ!

そして最近、空気が乾燥していることもあり、火事のニュースが多い。

そのせいか、夕方に「火の用心!」「火の用心!」、、、と「火の用心」を連呼する声が裏から聞こえてきた。

こっそり見てみるとおじさんが家の方に向かって「火の用心」を連呼していた。

恐らくおじさんも火事のニュースを見て心配になり、「おまえんち絶対火事とかおこすなよ!」と警告をしたかったのだろう。

しかも、その「火の用心」の警告は何日も続いた。

そんな回りくどいことをするなら直接「お互い火事には気をつけましょう!」とか言ってくれれば良いのにと思うが、

怖くて言えない。

家の母もかなりのモンスターだから人のこと言えないけど、世の中色んな人がいるなーとつくづく思う。

しかし、おじさんの「火の用心」のおかげで火の元をより気をつけるようになった。

おじさん、Thanks!




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