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「さいごの毛布」 近藤史恵 著を読んで

 表紙の絵の犬がとてもかわいくて、読むことにした一冊。

 様々な人間の事情で最後まで犬を飼えなくなった人が預ける犬の介護施設ブランケット。そこになかなか就職が決まらずにいた智美が住み込むで働くことになる。智美は家族との関係がうまくいかず、周囲からも浮きがち。

 そんな智美が、謎を秘めた元教師のオーナーや、美人の動物看護師、時々来る便利屋のオーナーの教え子たちと犬の世話を仕事にしていく物語だ。

 世話をする犬も、若い犬がいたり、それぞれに事情を抱えている。ブランケットの人たちも、人には言えないプライベートや過去を背負っている。

 でも犬の世話は待ったなし。忙しい日々の中で、少しずつ、智美は新しい生活に慣れていくけれど、段々、共に働く人たちの謎も分かっていって…。

 犬と暮らした事のある人ならば、きれいごとばかりではない犬との生活や関係がよくわかると思う。犬の願いは飼い主さんとずっと今と同じ暮らしを送りたいただそれだけなのに、人間んお諸事情で、ささやかな願いも叶わなくなる。

 ブランケットに来る犬たちはそれでも皆けなげに、生きている。

 色々な事件が起きるけれど、最後には当たり前のブランケットの日常が戻ってくる。そして智美も、少しだけ成長していくおわりかたもとてもよかった。