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柊サナカ「天国からの宅急便」を読んで

 ある人が間もなくこの世を去ろうとする時に、自分がいなくなった後に、大切な人に贈りたいものがあったとき、一体どうしたらいいの?

 この小説はそうした希望にこたえる、天国からの宅急便屋さんの物語。
配達するのは、職務に忠実な若い女性。その配達人さんから、荷物を受け取る事になる人たちの短編小説をまとめた連作である。

 受け取った人は、知人の死を知り驚いたり、贈り物に驚いたり、又はよからぬ事を企てようとしようとしたり、またある人は受け取るのを必死で拒んだりする。

 各人動揺しながらも、皆、自分自身や、贈り物を受け取った家族、天国から贈り物をよこした、かつて良く見知った「あの人」との過去へと向き合っていくことになる。

 どの話も、贈り物によって、意外な事実を知らされたり、後悔したり。でも、皆、贈り物ときちんと向き合って、これからの日々を自分の足で生きていこうという、そんな救いが感じられる短編集だった。

 エピローグでは、配達人さんの所属する事務所が出て来る。全部が全部、贈り物を渡せる訳ではなくて、その時、配達人さんは一体どうするのか。職務に忠実な配達人さんは、全ての短編に登場していて、読み手を和ませてくれる。

 常に、顧客に寄り添って職務をまっとうする、若い配達人さんが、この小説の重たいテーマを少しコミカルにして、和ませてくれた気がする。