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『スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』“極”普通に感想


劇場で見たきり、Netflixにラインナップされていたのでなんとなく再視聴。『スーサイド・スクワッド2』とかでもなく、『“極”悪党』なんてマイナーチェンジに留まっているタイトルも今見返すと、「1作目のアレはあんま、触れない方向で…」と制作・観客と示し合わさんとする涙ぐましい姿勢が感じられる。

公開当時から、前作に欠如していたノリノリ感とぶっ飛んだ描写が光る、楽しくてイケてる作品という印象だ。今見返しても退屈することなく、2時間見終わることができた。

のっけからはちゃめちゃにやって死んでいくスーサイド・スクワッドの面々は、アホらしいが同時に豪勢さも感じられ、別働隊として動いていたブラッド・スポートの部隊が“真打”として浜辺に上陸する序盤の導入も良い。
各メンバーの紹介も楽しく、それぞれキャラが立っていて魅力的だ。

魚人(?)であるナナウエの、一部の客層からの「カワイイ〜」な反応待ちなあざとさ(ちょっとヴェノムを思い出してイラッとした)や、ダウナー美少女に対するオタク目線の憧れがそのまま形に出過ぎているようなラットキャッチャー2の造形には若干、眉を顰めないでもないが…実際、各キャラの個性や魅力はバッチリとスクリーンに収められているのでケチをつけるのも野暮というものだ。

全体的に完成度が高く感じられるが、あくまで個人的には反政府軍の人たちを勘違いから面白おかしく虐殺してしまうシーンだけが明確に「嫌い」だ。
先述の通り、全体的なイケイケ感とbadassな“極”悪党どもの活躍を楽しむ映画であるので、モラルを望むべくもない作品であることは重々承知のうえ、苦言を呈させてもらえばこのシーンだけは必要性が不足しているうえ行為そのものはかなり悪質となっており、どぎついだけでバランス感覚に乏しい。
特に後半「“極”悪党どもが市民を助けることを選ぶ」という王道な展開になるにつれ、(でも、いい人たちっぽいやつらをヘラヘラと殺してたし…)というノイズに感じられて仕方がない。

繰り返しになるが、これは「人命を、重視してくださいよぉ!」という悲痛な叫びではなく、「悪党ども」を好きにさせる作劇上、どうしてもやるならばそれなりのエクスキューズを用意して、もっと巧みに視線を誘導して欲しかったものだ。
見返してみれば、前作では魔女の心臓みたいなやつを菜箸でつつきまくっていた極限アホのアマンダ・ウォラーが勘違いで指示した末の惨劇ということになってはいるが…
せめて先に手を出すのを反政府軍の人たちにするとか、仲間の死体を目にした女性リーダーキャラの存在感と批難を強くして(というより元々軽すぎで、行いに対して不十分である)クライマックスの形勢変化に一枚かませるくらいまでしないと、モヤモヤが晴れないままだ。
そして、そこまでして対照性をとらねばならないほどの悪質な行為がただのナンセンスギャグであるならば、いうまでもなくやる必要そのものがない。

「人命軽視ギャグ」…要は、人がナンセンスに死んじゃうよ!wというのは、解像度が高い実写作品でやる以上、一観客としては絶対に外してほしくないポイントである。
同様の人死には序盤の第一部隊の上陸や、別作品だと『デッドプール2』のパラシュート降下にも似たものがあるが、それらはナンセンスギャグとして成立するだけの気遣いを一応、見せているものだ。
例として後者では、自分からX・フォースに志願してきた「因果応報」なアホどもはともかく、善良な一般人っぽいピーターはおまけ的なエンドクレジットで生還するルートをわざわざ差し込むなどして、むしろ慎重すぎとさえ思えるバランス感を示しているものだ。

また、作劇上の不満でいえばハーレイ・クインがただ1人、目に見えて“保護”されているという批判も一部ではあるようだ。
たしかに前作キャラはさておき、地味ながらもかなりいい味を出していたポルカドットマンなどがアッサリと退場してしまうシビアな死生観の中、ハーレイ・クインだけはどんだけ好き勝手やってもまず、退場することはないだろう…という暗黙の了解のもとで作品を見ることは、感情のままに他人を殺しまくる彼女の姿も相まって、なんとなくの窮屈感とわずかなストレスを覚えないでもない。
まるでルパン3世のごとく銃弾はハーレイを避けるし、そもそも敵兵もまともに発泡せず彼女に近づいて、射殺されていく忖度様だ。

が、完璧なビジュアルをもってハーレイ・クインを実写映画に送り出したことが前作の唯一の功であったために、そのくらいのVIP待遇もむべなるかなといったところだろう。身代わりといってかは知らないが、キャプテン・ブーメランなんかの前作キャラは「ジャマ!」の一言で退場させられてるようですらある。

てか、ジョーカー以外の異性のパートナーをカジュアルに選べるエンパワメント的な描写と、それを地雷認定であっさり撃ち殺しちゃうハーレイのはちゃめちゃ加減描写の犠牲になった若き大統領が、あまりにも無駄に色男すぎて面白かった。
「僕たち私たちイカれてるのよ!」的な、物を壊しまくりながらのセックスシーンは陳腐でめっちゃダサかったけど。


総評としては、一部欠点があるもの全体としては完成度が高く、やはり面白かった。登場人物たちにも愛すべき点があり、ビジュアルも華やかで退屈知らずだ。
今後も、他に予定のない日に缶チューハイやポテトチップスのお供に、だらだらと見始めて見終わってしまう作品かもしれない。

てか、虐殺シーンが諸々どぎつすぎると言ったけれど本当は、ラットキャッチャー2みたいな感じの女子とマジで本当に付き合いたいけれど、「それだけはマジで絶対に無理」っていう真実が一番きつい。

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