あの鼓の音を聞いてはいけない。
夢野久作は見過ごせない、でも読んだことはない、そんな方へ、小説の一片を!
ご紹介するのは、夢野久作作「あやかしの鼓」(昭和26年発表)から。
嫁入り道具として鼓を贈られた女が、急死すると、間もなくその夫も亡くなります。女に鼓を贈ったのは、彼女と関りがあった鼓作りの男。その鼓作りが、「鼓を取り返し、打ち壊すように」と遺言し亡くなったことから、「あやかしの鼓」が噂されるようになります。
この因縁話を語るのは、鼓作りの曾孫にあたる若い男です。幼少時、父から、「あやかしの鼓」のこ